第19話 アイエリムの角杯のこと
文字数 469文字
黒龍ハルールアンの墓所は、いわずと知れた聖地である。
知られるかぎりこの世で最後にかの地への巡礼を許されたイッカの「幸薄きアイエリム」が、旅の出資者であり親友でもあったミスメシュ公のために、当地で狩ったという巻角大鹿(おそらくカムラのことであろう)の巨大な角を二つの杯にしたてた。
そのうちの一つは年月のうちに失われ、行方が知れなくなっていたが、どうもそれは、不輝城にあるのではないかと思われる。
このアイエリムの角杯は、その銀の縁を飾る刻文-ーこの友情の杯から飲む者は幸いなり、一方を満たせば他方もまた満ちたりぬ--のとおり、片方で汲んだものがふしぎともう片方にも流れこむと言われていた。
二人の友情が修復不可能なほど決裂し、ついにアイエリムがミスメシュ公の手にかかって、その血を杯にしぼりとられてからは、更なる血を求めぬように、深紅のグラム酒の、もっとも濃い原酒で満たしてあるのだそうだ。
そして不輝城には、まぼろしの飲めないグラム酒で満たされた角杯があり、御館様の食卓に供えられている、と語るものが、一人や二人ではないからである。
知られるかぎりこの世で最後にかの地への巡礼を許されたイッカの「幸薄きアイエリム」が、旅の出資者であり親友でもあったミスメシュ公のために、当地で狩ったという巻角大鹿(おそらくカムラのことであろう)の巨大な角を二つの杯にしたてた。
そのうちの一つは年月のうちに失われ、行方が知れなくなっていたが、どうもそれは、不輝城にあるのではないかと思われる。
このアイエリムの角杯は、その銀の縁を飾る刻文-ーこの友情の杯から飲む者は幸いなり、一方を満たせば他方もまた満ちたりぬ--のとおり、片方で汲んだものがふしぎともう片方にも流れこむと言われていた。
二人の友情が修復不可能なほど決裂し、ついにアイエリムがミスメシュ公の手にかかって、その血を杯にしぼりとられてからは、更なる血を求めぬように、深紅のグラム酒の、もっとも濃い原酒で満たしてあるのだそうだ。
そして不輝城には、まぼろしの飲めないグラム酒で満たされた角杯があり、御館様の食卓に供えられている、と語るものが、一人や二人ではないからである。
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