第28話 廻る頼みごとのこと
文字数 557文字
不輝城に滞在しているあいだ、話し相手に事欠くということはない。旅人のもてなしは城主の責務であるからして、朝起きてから夜眠るまでなにくれとなく世話をやかれ、放っておいてくれるよう頼まないかぎり、太陽が拳ひとつ動くほどの間すら、誰からも話しかけられずに過ごすことは難しいくらいだという。
ただし、覚えていなければいけないことが一つある。見知らぬ者――老若男女、身分を問わず――から、「スイバの影を摘んできてほしい」と頼まれた時のために。
「スイバの影を摘んできてほしい」と言われたら、どこでも良いから角を三つ曲がり、最初に出会った人間に「緑のシカの角をこいでほしい」と頼まねばならない。頼まれたものは、また三つの角を曲がり、初めて会う者に「カグの塔から根の無い草を下ろしてほしい」と頼まねばならない。それを請けたなら、三つの階段を下った後で、行き合うた者に「星くたしの鳥のまなこを隠してほしい」と頼み、それを聞いた者は、誰にも姿を見られぬように地下室へ行き、黒い布を頭からかぶって、「この庭には何もない」と三度、唱えなければならない。
一人でも失敗したときには、関わった全員が翌朝までに、皮だけを残して消えてなくなる。それらの皮は、嘆きの司書が集めて延ばして本にして、中身のない美しい本にすることになっているそうだ。
ただし、覚えていなければいけないことが一つある。見知らぬ者――老若男女、身分を問わず――から、「スイバの影を摘んできてほしい」と頼まれた時のために。
「スイバの影を摘んできてほしい」と言われたら、どこでも良いから角を三つ曲がり、最初に出会った人間に「緑のシカの角をこいでほしい」と頼まねばならない。頼まれたものは、また三つの角を曲がり、初めて会う者に「カグの塔から根の無い草を下ろしてほしい」と頼まねばならない。それを請けたなら、三つの階段を下った後で、行き合うた者に「星くたしの鳥のまなこを隠してほしい」と頼み、それを聞いた者は、誰にも姿を見られぬように地下室へ行き、黒い布を頭からかぶって、「この庭には何もない」と三度、唱えなければならない。
一人でも失敗したときには、関わった全員が翌朝までに、皮だけを残して消えてなくなる。それらの皮は、嘆きの司書が集めて延ばして本にして、中身のない美しい本にすることになっているそうだ。
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