第24話 窮鼠、猫に噛まれる!?

文字数 10,250文字

まさかの挑戦者

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前回から更に3話遡り、この屋敷にはざっと200個位改善すべき点がある。と、アリリは言い放った。
誰もがまさかそんなに沢山もある筈がない。と、思っていたが、彼女は構わず口を開く。
そこから紡ぎ出される言葉一つ一つは、まるで今、それぞれの住人達の部屋にアリリがテレポーテーションして、その状況を事細かに見て語っているかの如く的確で淀み無く、そして一定のリズムを絶やす事なく綴られた。それは皆の心の正鵠(せいこく)を射ぬき、住人と、私の度肝を抜いたと言う事実も否定出来ない。
そして、時の経つのも忘れ聞き入っている内に、いつの間にやら200の指摘は、終了、していた。いや、終了してしまった。
そう、もっとそのつっこみの連続攻撃を聞いていたいよお~。と、思える程巧みで見事。一つの【言葉の曲芸】でも見ている程に完成されている程に楽しかったと言う気持ちになったんだあ。
そう、時の経つのも忘れ楽しんでしまったのだ。語りの仕事中にだ……不覚ではある。だけどもとっても面白いと思いました。
誰もが気付かぬこの屋敷のおかしい部分を、初見で彼女は見抜き、住人は震撼する。その、ほぼ初対面の住人達の心の乱れを、一番近い所。そう、特等席で見れたこの感動。人は真のエンターティメントに触れるとこうなれるのだ。と、自身の体で体感出来てしまったのだ。間違いなく彼女は真のお化け屋敷アドヴァイザーだ! 感動をありがとうアリリ! 長い語り人生の中で最高の驚きと感動だった……と、そんな感動も束の間、花の間の住人のネズニ男に何か物言いがあるとの事だ。その眼には鋭い光が宿っている様に見える。一体何の用なのだ?

「な? どうしたんだ? ネズニ男君?」

「……ん?」
ネズニ男が、先の偉業の余韻を浸り、物思いにふけていたアリリの思考を遮る。どういう訳か、どこかアリリの事を呆れた顔で見ている様に見えるが? フム、何故だ? あれだけの偉業を成し遂げた直後のアリリさんに対してとっても失礼ではないか?

「ネズニ君! アリリ最高峰のお師匠様にくれぐれも粗相のない様にお願したいニイ」

「そ、そうだドフ」

「怒らせたら大変リキ!!!!!!」

「ソウダフガフガフフ!」

「ああ、みんな……表面上の200と言う数字と、無駄に大量な言葉で委縮し、コイツに逆らえなくなってしまっている……言葉って、怖いねえw」
ネズニが語尾や敬語を言い忘れ笑っている。成程。アリリ様の偉業を目の当たりにし、おかしくなってしまった様だな。納得である。

「何だ? 今の失礼で耳障りな雑音は? まあ良い。まあ粗方【指摘】出来たと思うけど、見落としがあったら言ってね♡」

「な? 一つも無いですよお……と言うか……そんなにあったのですか? 驚いたよお」

「見落とし? ……フッ下らない……」

「な? どうしたのネズニ君? 語尾も途中から言っていないし……」
語尾は別にいいのだが、言葉使いが今までとは違う。どうしたのだ?

「ん? またあの声? 耳障りな……しかもまさか今、鼻で笑ったのか? この私の200指摘に? しかもお前は……」(こいつ、花の間の主のネズニ? まだいたのね……畜生風情がこの私に何の用があるというのか? まさか今の言葉を受け、見落としの指摘を? まさかな……フム、だが興味深い)
語気の荒くなるアリリ。

「ああ、これは面白くて笑った訳ではないんだ」

「ではなんだ?」

「と、いうか……かなりいい加減な指摘で……失笑したのだ。アリリちゃん? いや、アリリで十分!! 貴様。人を馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
ほう? こやつもあの200にも及ぶつっこみを目の当たりにしている筈なのだが、それに動揺する事は一切なく明鏡止水の境地に至った者の如く落ち着き払った声で話しておる。しかもアリリさんの事を呼び捨てなんかしちゃって! これは……まずい事になりそうだ。 

「まさかこの私を呼び捨てとは……お前……お前えええ! 本気で言っているのか? 齧歯類めが!」 

「齧歯類? 人類だ……小娘が。ふざけるのはそこまでにしておけ」

                    <О> <О>

語尾を付けず静かに、そして力強く言い放ち、鋭い眼力でアリリを睨む……すると……?

「ブル」

「ブル」
まさかのネズニの豹変ぶりに怯んでしまうアリリと市田。

「僕の本気が伝わってくれたみたいだな。いい傾向だ。まあ色々長々と、確か……200個と大きく出ていたな。でも、どう考えても200には足りていない。
今まで黙って聞いていたが、お前は勢いと大きい声で押し切っている感があった。ほとんど出鱈目のつっこみを皆に押し付ける事で、理内さんを困らせただけ。何を思ってそんな愚行に出たのかは分からぬ。だが、そんな事をしてはいけないぞアリリ! お前はあの時、

「この数字は、今までの見てきたこの屋敷のおかしかった所の数ね。合計で丁度200だった……かな? そう、この屋敷を、最高のお化け屋敷に変える為の200の問題点って所ね。覚悟は良いかしら?」

と言っていた。覚えているな?」

「そうだっけ?」

「3話前のこの部屋を見回った後に言っていたセリフだ。何だったら戻って読み返してみるか?」
ほほう、一言一句間違わず言っている。まるでコピー&ペーストしたみたいに……

「そんな事私が出来る訳ないでしょ! それを出来るのは読者さんだけなんだよ!」

「確かにな……まあよい」

「ネズニ君……語尾……」

「だが現実はどうだ……あ な ぼ こ だ ら け だ!」

「そ ん な は ず な い!」

「猿真似は止めろ。ではこれからきちっと言わせていただくでピカチュウ元気で元気でチュウ!!」
なんとこの男、あのアリリさんにケンカを売っているのか? 確かに200もの指摘を終え脳が衰弱している今なら。だがそれでも勝算があると言えるのだろうか? 私の脳内では10秒後に泣いて逃げていく彼の姿が容易に想像出来る。故に今の内に逃げておく事を強く勧める。この方は強いぞ?

「ほう……まだその汚らしい呼び捨てを止められない止まらない……か……しかもこんな薄汚い前歯男があの偉大なピカチュウなんだと妄言を言い張る始末……許せる事ではない。貴公……? 何か不満があるようだな。ウム、そこまで言うなら今回だけは発言を許可しよう。全て出し切って見よ。そしてその愚行を皆の前で晒し、注目を浴び、顔真っ赤で後悔する事となるだろう……当然その覚悟は出来ているのだろう?」

「お前。ここまで大風呂敷を広げている僕がおめおめと引き下がると本当に思っているのか? 何も準備していないように見えると?」

「あ、あのそろそろ語尾を……」

「そうだったそうだった忘れていた。僕としたことがエキサイトしていた。申し訳ない。アリリ。逆にその自信満々の顔が動揺で歪んでしまわないか心配だ。止めるなら今の内ピカ? 10秒だけ待つでチュウ」

「あ?」
うぬ! 物凄い形相に変わるアリリ。まるで悪魔である。それ程にネズニにコケにされている現状が不愉快なのだろうな。まあ既に役目を終えたアリリの中で良く思っていないキャラが再び捲土重来をする姿は、見ていて気持ちの良い物ではないが……

「ブル……ーチーズが食べ……たいよお。あの時の様に……ブル」
そうか。行ってこい。あの時の味が忘れられなかったのだろう。出来る限り早くした方が良いぞ。今のアリリの顔はこの鋼のメンタルを所持する私でも危うく尿道が緩む寸前であった。
市田。まだ未熟なそなたがずっとここに居ればその内心臓麻痺で死ぬぞ? 急げ。そして、このやり取りが終わるまでの間だけは戻って来ない方が良い。しかし彼も何度もやっている内に誤魔化し方が上手になった気がする。先程のブルボソの件より遥かに自然である。
そう、ブルーチーズはかなりの臭いなのだ。確かに味は良いだろうがあの臭いの事を思い出し震えたと思わせる事もこの場合可能なのである。成程。この男も何度も誤魔化している内に、

【コツ】

を掴んだのだろうな。中々成長した物だ。ぬ? 気のせいか? まあ良い。

「ほう、自分が悪い事をしていると言う自覚が全く無い澄んだ目でピカ。ある意味純粋で、清々しいまでありまチュウ。これは逃げないと言う事で間違いないピカ?」

「たりめーだ!」
 
「フッw言葉使いが幼児退行しているでチュウ? まあいいピカ、ではいきまチュウ。あのつっこみの内、おかしい所を指摘させて欲しいピカ! そして指摘する度にそのセリフの最後尾に、200から減点した数字を記載させて頂くでチュウ。そして数字の後は、1行開けさせていただきまピカ。そうしないと読みにくいと思いまチュウ」

「なんですって? 勝手に小説の表記方法を捻じ曲げる様なルールを作るんじゃない! セリフの後に数字を付けるなんてどう考えても非常識だろう?」 

「先に君がやった事を踏襲したまででピカ? 既に一度このルールを受け入れて下さっている読者さんにも戸惑いは無い筈でチュウ」

「ちょっと! 読者さんなんて凄い言葉を使って脅かすのは止めてよ! それだと絶対確実に文句言えなくなっちゃうし……逆らえる訳が無いんだから! で、しかもそれって何回も何回も減点するつもりじゃない? そんな物はない。一つもな」

「いや、ありまチュウ。沢山ピカ。それを君は幼いが故に気付いていないでチュウ。そして相当の見栄っ張りで、浅はかな部分を、年長者の僕が一つ一つ丁寧に教えてやろうと言うのでピカ」

「黙れ黙れ黙れええ! しかし……今から貴様がやろうとしている事は、

【完成されたつっこみに、間違ったつっこみを入れる】

と、言う事だぞ? 既に間違った物を正す為に行った正しい行為に、素人のお前がつっこむという事は……元の木阿弥ではないか? 愚か者めがあ!」

「自分が犯した罪を知らぬまま、身長が短いまま一生を終える可哀相すぎるアリリ」

「成程ね、そこまで言うなら聞いてやろう。よし、言ってみろ! そしてお顔真っ赤になあれ! この下等齧歯類めがあああああ!!」

「くどい! 人類だ! そして……お顔真っ赤になあるのは……貴様だ!!!!!」

「あ、あのネズニ君……また語尾無し状態が出てるよお……そろそろやってもらわないと……ブル」

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  Alisa VS Sigelu Mizuti

「おっとまた忘れていた。これから気を付けよう。……まず、アリリは僕の部屋でキツネのコンキチ君を呼んだけど、脱兎の如く……いや、脱狐の如く一瞬で逃げられたでチュウ。
良いお化け屋敷判断師は、自然と動物に好かれちまうもんですが、君にはその資格がなかったようでピカwだから君の様な三流お化け屋敷判断師風情には判定してほしいとは思わないでチュウ。チェンジでお願いピカwそしてどういう訳か本能に従い、正しい判断を下したコンキチ君を逆恨みし、恨みの言葉を放ち、挙句の果てにきつねうどんにしてしまえと言っていたでチュウ? でも、どう料理してもキツネはきつねうどんにならないでピカ! 油揚げを入れたうどんの事だから無関係でチュウ。それにもしそんな事をしたら屋敷からコンキチ君を奪った事による窃盗罪と、料理した時点で殺コン罪になるピカ! そうならなくてよかったでチュウ! そういえばコンキチ君は2話でファイガフォックス子さんと付き合っていたけど、彼女の身体的理由から失恋したばかりなんだピカ。アリリも生物学上雌。コンキチ君の心がまだ整っていない現状、雌から離れたいと言う気持ちがあっても何も不自然ではないんでチュウ。そのコンキチ君のメンタルをアリリが読み取れず、ずけずけと近づいたのが悪いんだピカ。もう少し男心を勉強しろでチュウ」 200→199 

「な? 200から199になったよお? ウヒヒヒイイイイww」
何故か大喜びする市田。

「ぬ▽、あ☆□? な? 何だぁ? この不可解な現象はぁ!! 誠実に積み上げた正しい数字が減る訳ないだろ! 在り得ぬぅぅぅぅ……( ;∀;)取り消せ! 今すぐにいぃ!」
ビキビキ!

「ダメだピカ。覚悟は出来てる筈でチュウ。黙って聞いてろピカ。たった一つ減っただけで大騒ぎしすぎだチュウ。祭りは始まったばかりなんだピカ。
で、飯匙倩(ハブ)の漢字について突っ込んでいたでチュウ。でもそのつっこみは確かに的確ではあったピカ。けど、そんな物はこの屋敷の経営に関するアドバイスにはならないでチュウ! 因みに倩は、音読みでセンやセイで、訓読みでは

①うつくしい。口もとが愛らしい。「倩倩」
②むこ。
③やと(雇)う。やとい人。
④つらつら。つくづく

等の意味があるピカ! お望み通り教えてあげたでチュウ」199→198 

「くっ!! まただ、また減った……よ、よさぬか……この化け物め……!」

「それに僕の

【状態】

に関してのつっこみが幾つか混ざっていたピカ。そう、屋敷の指摘をしていた流れから突然断ち切り、僕に対する駄目出しに変更していたチュウ! 心が痛かったピカ……それも一回ではないでチュウ。確かに僕、お風呂はあまり得意ではないから控えめにしていて、ほんのちょっと臭っているかもしれないピカ。
ですがそれだったら僕が臭いと言えば終わりの筈だチュウ。つっこみが思い付かなかったり詰まった時だけわざわざ流れを断ち切って思い出したかの様に僕の体を利用したんでピカ。必要に応じて僕の体を使う……アリリはなんて身勝手で不潔なのでチュウ! 変態幼女だピカ! しかも、最後の200個目では魂が臭いという意味不明な事を言って数を水増ししたんだチュウ! 卑怯だピカ! 人間の屑でチュウ。人の心を持たない邪悪なちび丸()ちゃんでピカ。
僕、200個目のつっこみの魂が臭いって言われた時、全人格を否定された感じがしたでチュウ。その怒りで今、君に前歯(キバ)を向けているでチュウ!! まだまだこんな物じゃないでピカ! 覚悟するでチュウ!」

「ググッ」(確かに奴の発言は……正しい……こんなに見落としていたか……? この、私が? でも確かに気持ちが高揚していて、つっこんでいる時も意識がはっきりとはしていなかったかも?)

「僕は他人より少しだけ臭いかもしれないでチュウ。それは認めるピカ。まあ改善する予定はないチュウ。臭いも個性。それでも良い筈。
それを少しでも引き延ばそうと、僕の体の一部分一部分を細かく分けて、つっこむ事で足りない分を水増ししていないでピカ? ここは分散手法を使用せず一纏めにし、

【花の間の主のネズニ男が臭い】

と言えば一個で済む筈でチュウ! 確か12個周期で臭いに関するつっこみを言っていたピカ! 君は12個置きにネズ二男を(くた)す機械と化していたでチュウ。
確か……右耳の裏198→197 

左耳の裏197→196
 
右足の裏196→195 

左手の中指と薬指の間195→194 

髪の毛194→193 

口193→192 

右手の薬指と小指の間192→191 

左の脇の下191→190 

右の脇の下190→189 

そしてトイレの状況を実況した事について189→188 

僕の辺りに漂う臭い、そして肛門188→187

前歯の裏187→186 

声186→185 

気配185→184

僕オリジナルのハイセンスなローブについても184→183 

骨183→182 

魂182→181

と、なる……」

「おい! 何て事を……減らし過ぎじゃないかよ!!」

「凄いニイ。アリリ最高峰のお師匠様もそうだけど、ネズニ君も記憶力が良いニイ」

「ああ、僕は5話から23話までのおかしい所を心のメモ帳

【メモ中元気でチュウ】

に記して置いてあるんだ。コンセントレートによりそれを見ながら話す事も出来る」

「スゴイカニ」

「アリリちゃんはタンスの記ータン。そしてネズニ君はメモ中元気でチュウドフ……私も心の中に記憶力を増強出来る何かを設置したいドフ……」

「フガフガフフ! ネズニ、スゴイ」

「驚いたリキ」

「ちょっとまってよ! その悪臭はお客が減る原因になるでしょ?」

「お前。話を聞いていたのか? 1つの部位で1つっこみとしている所がおかしいと言っている筈だ。まとめて言えばいい。論点をすり替えるな!」

「うう」

「ちょっとネズニ君! ご、語尾をその……」

「おっと失礼失礼。どうでも良い事なのですぐに忘れるwでは続き行くぞ? 200個中17回も僕の部分部分の臭いや、僕のやる事成す事を事細かにつっこんで、つっこみの数を水増ししていたんだピカ! これは大きくルールを違反しているでチュウ! ちょっと考えればサルでも一纏めに出来る筈ピカ! だから実際は現時点でたったの184個しかつっこめていないって事になっているチュウ! これは200にしたいと言う気持ちが強すぎて、どうにかその数にしたい! と言う下心が見事に理性を押し退けたんだピカ! そして、今まで誰も気付かれずに済んでいた僕の体臭の秘密を大衆の前で大声で言ったでチュウ これは名誉棄損だピカ!」

「こいつ!! 生意気な!!」

「それに始めの方で明るすぎる事を指摘していたでチュウ。でも、リキュバスさんの部屋では暗すぎると指摘していたでピカ。矛盾しているでチュウ181→180

ここをつっこむのはどう考えても筋違いで、お化け屋敷が薄暗いのは当然の事でチュウ。むしろそうでなくてはいけないピカ。
でも君は、この屋敷がお化け屋敷として相応しくない部分を突っ込む仕事を任された筈なのに、お化け屋敷として正しい部分まで突っ込んでいまチュウ。そう、自分に降りかかった数々の不幸を嘆き、本質を見失って筋違いのつっこみを、

【たった200個しかない】

縛りの中で混入させて水増ししている。その時点でお化け屋敷鑑定士として相応しくないと思ったピカ」

「たった200だとお?」

「実際はそこにすら届いていないでチュウw 情けないピカ……お前は数さえ到達しさえすれば、どんなゴミの様なつっこみでも1つとしてカウントするのかチュウ? それではつっこみの素人でピカ。確かボケ人間コンテストの優勝者との事だったチュウ。
始めは信じていたでピカ。でも、仮にもお笑いにも精通している達人が、さっき程度の酷いつっこみしか出来ない事を知った瞬間、お前と言う存在を信じられなくなったチュウ。それからは所々にほつれが見えて来たでピカ。

【お前は、本当に、実力で】

あのボケ人間コンテストの優勝が出来たのでチュウ? 不正を疑わずにはいられないピカ。
お前は、これでいいや、この程度で200個しっかりつっこみましたドヤアァwなんてみんなの前で発表してしまったんでチュウ。恥晒しもいいところ……ちゃんちゃらおかしいでピカwそこまでして、始めから出来もしないあの見切り発車とも言える程大きな目標である

【200個のつっこみ】

に挑戦っていう妄想を実現させたかったんでチュウ? 憐れなチビでピカ……夢は夢。実力に伴わないのに大きな目標を立てるべきではないでチュウ。出来ないなら出来ないと言って土下座すればいいだけでピカ……そんな簡単な事も出来ない憐れでチュウw」
ぬう、こやつ賢い!! このネズミはネズミ界の全由一か名探偵ユナソかぁ? 凄まじい観察眼である。ただのお化け屋敷のお化け役ではないようだ……

「ち、小さいは余計だ!」

「見たままを言っただけでチュウ。そして結果的に200には到底足りなくなって水増しすると言う最低な行為をしたんでピカ」

「バレちゃったのね? 中々鋭いわね」(このネズミ、畜生の癖にかなりの知能ね。しかもこの高身長な私を憐れなチビと言うなんて……しかも二回も! そんな事って……目が腐っているのね……憐れな齧歯類……)

「そうでピカ。僕は閉所、暗所、高所、先端恐怖症でチュウ。だから何事も注意深く観察しているんでピカ」

「閉所、暗所、高所、先端恐怖症? 障害が多いわね。それでも必死にしがみ付いて生きるのって辛くない?」 

「だから何事も注意深く観察しているんでチュウ」

「同じ事を二回も……そうだ! 死ねば楽じゃない? その長い前歯で舌を噛み切れば? ねえ、死のうよ! 怖くないからさ」

「いやでピカ! 生きて生きて生き抜いて、沢山のネズニ男ジュニア達を増やし育てるんでチュウ」

「いらんわ」

「いるピカ! それに話を脱線させてまチュウ。卑怯でピカ! 全然200個じゃないでチュウ! それにまだまだあるんでピカ」

「とりあえず消えろ。臭い。今すぐ消えろ」

「ちゅうーん」
激しい罵倒に頭を下げるネズニ男。流石に消えろは言い過ぎではないか? あまりそういう事を連呼していると自分に返ってくるかもしれないのだぞ? 控えなくてはいけない。

「アリリちゃん? 今のはいけないと思うよ? まだネズニ君は言おうとしているよ?」

「もういいんじゃない?」

「逃げたいならいいんだけどさ……このままじゃみんな逃げたと感じてしまうよお?」

「くっ……仕方ない……続けろネズニ……!」

「次に、自分のミスで怪我をしたアリリに貴重なMPを使って治療してくれたニイラ男さんに対して【血ドロボー】181→180

とか【アンデッド】呼ばわりしていた……180→179

これは流石に言い過ぎだチュウ! それに生まれ持った好奇心旺盛な理由で付いて来た僕に対しても花の間で籠っていろって暴言も吐いたピカ」179→178

「へえ、他には?」(22も減った。でもまだ喋ろうとしてるよこいつ……)
 
「まだまだあるでチュウ! 泉の斧の件でピカ! あの時アリリは鉄の斧をわざとらしく泉に落として金の斧か銀の斧どっちかと聞かれたら、半笑いで金の斧と答えていたでチュウ。それも即答……醜かった……しかもそれをあろう事か僕がやったと言う事に捏造したピカ! 明らかに君がやった事でチュウ」178→177

「私じゃないし……や、止めろ……! や め ろ よ……!」
ゴゥッ!
ぬ? これは嫌な予感が……

「みんなも見ていたピカ。観念しろでチュウ!」

「で、でも鉄の斧に見えて実はあれ、ちょっとネズニの灰色のフケがこびりついていて、鉄の斧に見えただけなんだよ! でも私は金の斧と言う事は持った瞬間に分かった。理由は簡単。質量が鉄のそれとは違ってかなり重かった。金の比重は19で鉄は7.9。鉄の2,5倍の質量を有しているの。私は大抵のMMORPGでの主人公の初期装備は確実に鉄の斧だから、馴染みの斧よりも少し重いんじゃないか? っていう微妙な違いから全てを把握し、金の斧だ! と判断したのね? でも迷ったのよ? 近い質量のプラチナの斧かも知れないと思った。だけど、選択肢にプラチナの斧が無かったから消去法で金の斧と決定した訳。それを落としたんだから真実を言うしかないでしょ?」

「浅い知識をひけらかしてまで嘘を突くな! その斧は返すピカ! 金の斧ドロボー!」

「確かにこの斧はあの泉の精霊(バカ)から騙し取った物よ。でも、私の巧みな話術で勝ち取った戦利品なの。だから返す必要はないわ」

「盗人猛々しいでチュウ。泉の精霊に嘘を突いて手に入れた物は没収される定め! そして、あれはニイラ男さんの部屋の小道具でピカ。でも純金なのは間違いないでチュウ。だから返さなければ大きな損失を受ける事になるピカ! この泥棒猫め! さっさと返してあげるでチュウ」

「私が泥棒猫……か? 人類だ」 

「いいや違う。大嘘突きの泥棒猫だピカ。反省するでチュウ」

「そうか……自分は齧歯類である事は否定し、この私を泥棒猫と断定……と。成程。分かった。じゃあ仕方ねえな。特別貴様に教えてやる……猫はなあ……」
ガッ
ゴオオオオオオオオオオオオ……グウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ぬ? 何だこれは? そして、そう言いつつ突然アリリが手提げカバンに入った何かを取り出す。

「な? アリリちゃん?」
斧だ。先程ネズニ男が指摘していた泉の精霊から獲得した斧。それを握りしめる。そして、彼に振り下ろす為に高く振り上げた?
その斧は、純金製の筈。だが、アリリの気持ちに呼応し、今までとは別物の様に軽くなる。まるで羽のように……幼い少女でも簡単に持てる様変化する。だが、まさか……な……脅す為に振り上げただけであろう……ぬ? これは!!!!!! 迂闊であった。もう、

【装備】

してしまった……ネズニ! ……早く……逃げるのだ!!!!! 急げ!!!!!! さもなくば……死ぬ。


つっこみを取り消される度に蓄積されていたネズニに向けられた負のオーラ。そして、泥棒猫と指摘された瞬間、それがアリリの心に、小さな猫のオーラとして浮かび上がる。


そのオーラは、次第に増し……


強く、禍々しく、成長。

「え? ま、待ってピカ」


ネズニの言葉など構わず、更なる恐怖に変貌。止まらない。


更に強く。膨れ、上がり、顕現。彼女の背に浮かび上がる。

「猫はなあ、お前の様なちいせえ鼠なんかよりもなぁ……強・え・ん・だ……よ!!」
ザン!



「あ……」
斧は容易くネズニ男の左肩に突き立った。そして……黄色いローブがオレンジ色に染まり、それは次第に広がっていく……



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まさかの結末
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