第20話 フランケン × 家庭科室? 2

文字数 5,426文字

「で、アリリちゃん。この部屋のどこか何か気になる事はあるかい」

「あっ! そうよね急いで見て回ろっと……あ? 水槽があるうw色々なお魚達が泳いでいるね♡じゃああれかしら? コホン……♪好きだと言わせて吉田沙代里さんー♪たいしたもんだよ鈴木良成君ー♪烏賊(いか)した君たち見習ってー僕も(かれい)に変身―するよーでででででででで♪秋刀魚、帆立、(にしん)♡キッスエビタコってっててーてー♪マグロイクーラアーナゴーシマアジいいいいいいいいい♪ででで、ででででさかなさかなさかなー魚ーに依存すーるとーおーおーおーおー♪あたまあたまあたまあー頭ーがー迅速に改善するうーうーうーうー♪さかなさかなさかなー魚ーを盲信するとぉおおおおーおーおーおー♪からだからだからだあーからだーにー良い影響を及ぼすぅーのさー♪」

「♪さぁあぁああああみいんなでぇさかなーをじっくり吟味しようーてーてーててーさかなはぼくぅらをおおおおおおでででででででででっ全裸待機してるぅーででででー♪」
おや? これは酷い……市田が割り込み続きを歌いだす。

「ちょwwwwおまwwwwww勝手に歌うなあ!! そこだけはあかんでぇ……そこは一番いいところであり私の物だろ! この歌泥棒!」

「盗んでないよお」
これはやられると悔しいな。カラオケに数人で行った場合、最も気を付けなくてはならない事であろう。
歌と言う物は、一番盛り上がるところを歌う為に行う作業だと私は思っている。そしていよいよサビになった時にそこだけ仲間の誰かにを取られてしまっては意味が無い。本来サビを歌って気持ちよくなっておうちに帰るのが目的だからな。ハッキリ言って途中のどうでもいい歌詞はど適当で良い。だが、嫌々それをを歌い上げ、積み上げて来たというのに、一番大切なサビだけ他人に取られてしまってはアリリの様に歌泥棒! と罵ってしまっても仕方がないな。皆さんも歌泥棒だけはしてはいけない。

「そこだけを楽しみに歌っていたのにいいいいいい」

「この歌は知っていたからつい……」

「だからって横から入り込んで盗んで良い物でもないでしょ? いつもは私が歌ったのを見る度に

「今ここでか……」

って否定する癖にいいいいい。しかしいつ歌ってもいい歌よね……DHA食べろ!!」

「ブル」

「怯えないでよw」

「だ、だってさ、いい歌よねーって感傷に浸った感じで油断させておいてから突然怒鳴るからだよ……アリリちゃんは情緒不安定すぎるよお……これが緊張と緩和ってやつだ。思わず震えちゃったよ」

「本当に臆病ね」

「それにアリリちゃんに言われなくてもDHAはしっかり摂ってるよ。でもアリリちゃんはあれを水槽と言っていたけど、あれの正式名称はいけすって言う物だよ?」

「そうか……なんか、いけ好かない話よね」

「ひい? ヒヒヒヒヒィw苦ヒィww」

「ごめん、でもそんな苦しいほど笑うのお?」

「ヒィヒィ……全く……その突然人を笑わせるところ。アリリちゃんの欠点でもあり、良いところでもあるんだ」

「ねえ、その定型文、全部屋で言ってない?」

「ま? 覚えてないよ……でもDHAは小説を書くに必要な成分だし……これが無ければ頭の回転も遅い。
さっきアリリちゃんが食べた物の中に、彼らの仲間がいるかもね。それにしてもアリリちゃんも全部屋で不思議な歌を歌っているよね?」

「そうね……えっ? 違うよ? うーんとねえ……そういえば妖精の間と本の間で歌うの忘れていたわ。大変! 今すぐ戻って歌わなきゃ!」
何故か全部屋内歌唱コンプを目標とした様だ。そうだな。どの部屋にも1つテーマソングがあれば盛り上がるに違いない。今までは無意識であれほどの歌を作れたのだ。これからは作ろうと意識している分、更なる名作が生まれそうである。頑張ってほしい。

「な? 今は仕事中でしょう? 後にして下さいよ……」

「そう? でも仕事と言っても強制でもないし、お給料とか報酬は発生しない仕事よね? それに100万円とお米もあげたのに仕事させてるって言う自覚ある?」

「で、ですがそれはフフンケンの謝罪の意味を込めた物でしょう? それとは別問題でしょう?」

「言われてみればそうね。うっかりしてたわ」

「ほんとそうですよ? まあそれが……」

「私の欠点でもあり、良いところでもあるんでしょ?」

「な? 盗まないでくださいよ……」

「歌泥棒のお返しよwでもさフンガーから100万受け取ってなかった? 返してあげなって」

「いえ、フフンケンは喋れません。私が管理しなくては……で、食事を食べたし、お風呂も入ったでしょう? それが報酬と言う事で頑張って下さい。もうすぐ夕食マーク2もお出ししますし」

「あ、せやった……ほなええねん。せやけどどの部屋でも歌っているねって言うたのは市田さんやでえ? コンプリートしたくなっちゃっうやんけ♡」

「いやいやそれは言葉の綾だよ。そして突然関西弁になるのだけは勘弁してくださいね? それにね、例えば前半は歌っていなかったけど後半歌ってるよね? とかじゃあなんか変だよね?」

「ああそういう事か。ならいいわ……この水槽……じゃなかったね……生け()って事か……そういえばそうよね。夕食マーク2でもここから数匹取り出され、料理される……少しずつ仲間が減っていくんだね……」

「ブル」

「いちいち怯えないでよw ほんと臆病ねw あんた本当にお化け屋敷の主人なの? 毎日妖服の間に行って免疫付けろ!」

「いやいやあそこは私でも嫌だよ……でね? 私も作家だ。イメージ出来てしまうんだよ? 自由に楽しく泳いでいたのに、突然大男の腕が伸びてきて、まな板の上に置かれて麻酔も何もなしに捌かれて……あっという間にバラバラだ……」

「ブル」

「ほら、アリリちゃんだってそれを言われてしまえば震えてしまうでしょ? 不憫だなあって思うよね? 清濁併吞なのさ、人が生きるって事は……弱い動物の命が消え、生かして貰っている……そう、清濁併吞……常にこの言葉を胸に生きて欲しいよお。因みにこの魚は、花の間の川に居た魚だ。それが育てばここに移されるんだよ」

「へえこの屋敷って室内で自給自足してるのね? で、それらをここに持ち寄って料理する……か……なんか毎日がキャンプみたいで楽しそうね。食料はあまり費用が掛かっていないのね?……あ? あれってなあに?」

「ああ、あれは花の間で収穫した物だよ。ネズニ君は農業を得意としていてね」

「ああレタスじゃない! さっきのメニューにもあったよね?」

「そうそう、この洋館は花の間以外にも館の裏にも庭に田んぼがあるんだよ。そこではお米を作っているんだよお」

「へえじゃあお米は別に要らなかったんだね?」

「いやいやすごく助かっているよ。流石にうちの庭では花咲米は作れないし……感謝感謝だね!」

「そう? ワンチャン返してもらえるかとちょっと期待したw他にはあ……大きい冷蔵庫かあ。中はどれどれ?」
ガチャ。
勝手に中を見るアリリ。

「肉が一杯入ってるう。牛に鶏に豚もあるう。でも私は特に新鮮な鶏肉が大好き!」

「この中のどれかがアリリちゃんの胃袋にも少し入るかもね」

「やったあ♡で、その傍には……あっ、キッチンがある! 上には調理器具一式がある! これは切れそうな包丁ね! これで……! え? まな板が……まな板が!!」
まな板に絵が描いてある。

「ああこれか。これはフフンケンのリクエストで注文した物だよ」

「これどう見ても……」

「おうよ! これは私の顔が書いてあるまな板だよ。私を敬愛している証拠なんだろうね」

「そ、そう?(顔が包丁の傷でズタズタじゃない……)ブル」

「どうしたんだい? さっきから私の真似をするのだけは止めてほしいな。ブルは私の物だから」
誇らしげに語る市田。

「好きでやったんじゃないのよ……そしてあんただけの物ではないわ。人間が怖くなった時に震えるのは生理現象!」

「そう? でも、口に出しブルと言うのは私が人類初と自負しているが……」(しかし、人がやるのを見ると如何にそれが惨めな行為かって事が分かるなあ。男として情けない……少し控えなくてはいけないね……せめて一時間で一回までと抑えるられるように頑張ってみるか)
完全に止めようと言う気持ちは無いらしいな。

「私、これを見てリキュバスさんの部屋以来で背筋が凍ったんだけど……」

「臆病者だなあ」

「誰でも怖いと思うけど……こんなにされて何も感じないの?」(あれえ? この人ってもしかして? うーん……そんな訳ない……よね……)

「使い込んでくれている証拠でしょ? フフンケンは物持ちが良いね! だから純粋に嬉しいよ?」

「何で料理を作っているの?」

「な? 当然このお化け屋敷に来てくれたお客さんに振舞うためだよ?」

「ま? そういえば入り口でもそんなこと言っていたような? でもそんなこと必要?」

「必要さ」

「そう……それにしてもこの屋敷のメンバーさどうして変な名前なの? フフンケンとかさ」

「ま? 気付かないの?」

「気付かないわよ! 私の名前もアリサなのにアリリって言うしさ」

「じゃあ話を変えて、私の名前は分かるかい?」

「え? 市田さんでしょ? さっき聞いたばかりだし流石に覚えてるよ」(突然何で?)

「市田理内だ。この謎はフルネームで考えないと解けないよ? そこをよく考えれば見えて来るんじゃないかなあ?」

「焦らさないで教えてよ!!」

「ちょっと考えればわかる事さ……」

「何よ……挑発的ねえ……分かったわ。この謎を自らの手で解き明かして見せる! すでにあの世に旅立って行ったオヤジの名にかけて!」
実はアリリの父はまだ死んではいない。だがアリリは父親の事をよく思っていない。理由は自身の低身長は彼からの遺伝だと確信しているのだ。確かにどちらかと言うと父親に似ている。だが同時に鋭い観察眼や理路整然とした推理も出来る頭脳を遺伝していると言いう事実もある。でもそれを分かっていても絶対に口外しない。不公平な気もするが、父親を決して褒めたくないのだろう。だがこれはどうなのだろう? かなりの頻度で父が死んでいると言う嘘を他人に報告している。こういう事を言い続けると、いつしか本当に現実する危険性もある。あまり言い過ぎない方が良いのでは?

「ま? その若さでお父さんを……よん冥福をお祈り申し上げます」

「大丈夫……過ぎた事だし。(ん? よん冥福?)そういえば死んだで思い出したけど、この屋敷の脅かし役? 会った順番にネズニ男=ネズミ男、ニイラ男=ミイラ男、ドフキュラ=ドラキュラ、リキュバス=サキュバス、オオカニ男=オオカミ男、メデューリ=メデューサ、フフンケン=フランケンだよね?」

「な? それがどうしたの?」(記憶力良いなあ。これが若さか……すごいよ……)

「お化け屋敷にしてはちょっと相応しくないメンツかなあなんて。だってお化け屋敷って言ったら王道はゾンビでしょ? それがいないのは何故?」

「ああそれね? それは先程の質問のヒントにもなっちゃうけどいいのかい?」

「おうよ!」

「出来ないんだ……」

「出来ない? 何で? 出来るじゃない? ほら! ボロボロの衣装を作ってさ、人を少し腐らせて、その辺に転がってるただの布切れと、かわのこしまきと、あなあきのくつをいい感じに装備させれば完成じゃない?」
何故腐らせる必要がある? 健常者に変装させればよいであろう! 無茶を言うでないアリリ!

「違うんだ。もっと根本的な問題さ」

「何ー? もどかしいーーー」

「そこを自分で見つけるのが楽しいんだろ?」

「うう」

「よし、特大のヒントだ!」 

「そこまで言いたいのなら聞いてあげるわ」

「な? じゃあ言わないよ?」

「そういうクズ発言ばっかしてると寝込みに誰かから目玉をへし折られちゃうわよ?」

「ブル。じゃあ言うよ……ここでのルールだとゾンビならどんなに頑張っても【ゾンじ】止まりなんだ。で、それだと絶対にダメなんだ」

「ゾンじ? なにそれ?」

(ゾン)じませんが?」


何と言うドヤ顔であろうか……確かに少し上手かったが……

「確かに今のは上手いけど、今だけは冗談は言わないで? 今私の知的探求心は最大になっている。この時だけはいくらお笑い好きの私でもそれを聞く余裕はないの!」

「ま?」

「ここのルールで行くとカタカナのゾンビがゾンジになるって事?」

「ちょっと違うね。【ゾン】はカタカナで、【じ】はひらがなとなるよお」

「え? ……ひらがなとカタカナが混ざっているってこと? これも関係あるの?」

「おうよ!」

「分からなーい! 悔しいいい……」

「さあそろそろ食事にしよう。アリリちゃんも少し疲れただろうし。そんな状態じゃ何も閃かないってw」

「悔しいいいい」

「そうだ! 悔しがっている場合じゃないですよ? 最後の部屋はどうでした?」

「25」

「了解です。でもどうせ数字を言うだけで、これが一体どういう数字なのかは教えてくれないんですよね?」

「これからその数字の意味をここで教えてあげるわ」

「ま? 本当ですか? お、お願いします」

「この数字は、今までの見てきたこの屋敷のおかしかった所の数ね。合計で丁度200だった……かな? そう、この屋敷を、最高のお化け屋敷に変える為の200の問題点って所ね。覚悟は良いかしら?」

「ま? に……にひゃ?」
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ついに今まで出てきた数字の真実が……しかし、本当に200もあると言うのでしょうか? 
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