第33話  あれぇ!?

文字数 5,289文字

ガチャ 

「あっ虎ちゃん?」

「さっきの人ーリ? もう検視が終わったーリ?」

「そうよ。この子。とっても優秀なんだよ」
そうであろうか?

「……あのねえ、褒めてもらったのは嬉しいけども、年上の極上の美人お姉さんを捕まえて、子って言い方はないガル。私は鑑識の美薬虎音ガル」

「これはご丁寧にどうもーリ……ん? ガル? この人は【天然】ーリ?」
天然? 何を言っているのだ?

「そうよ! 滅多にいない純天然物よwでもここの住人達は【全員養殖】っぽいよねーww」
アリリも何か分かっているようだ。

「グフフw ご名答ーリ! 流石に鋭いーリ」

「良く知っているガル! 私は養殖マグロよりは天然マグロを好むガル。で、自分で捌いて調理しているガル」
ネコ科の名前を有しているだけの事はあるな。お魚大好き【虎】音ちゃん。

「そんな話してないよw」
ぬ? では何の話をしていたのだ?

「そうガル? まあいいガル。今日はこの報告さえ終わればサバの刺身定食が待っているガル♡」

「そんなの聞いていないよwwwでも今から夕食?」 

「さっきも言ったけどずっと署にいたんだガル。昼も食べてないガル」

「そうか……お疲れ。で検視もう終わったの?」

「ええ。誰も仲間がいない中での孤独の検視だからとっても大変だったガル。フフフフフガル」

「よく頑張ったねいい子いい子」(何で笑ってるの?)

「ちょっとアリリ! 子ども扱いするなガル!」

「で、どうだったの? 検視の結果は?」

「完全に息はなかったガル」

「そう、だよね……」
アリリよ……今回こそは脈の事を聞かなくてはいけないぞ? 虎音はいつも取っていない。毎回ここ調べていればよかったーとなるのだ。ホテルの時もボケ人間コンテストの時も脈を取っていたらその時点で事件は早く解決できたかもしれぬのだしな。
今回もそのケースは十二分にあり得る。このタイミングを逃せばまた話が長引いて♡しまうかもしれなくなり、大変な事になりかねない♡故に今すぐに聞かなくてはいけない! さあ、脈をしっかり取ったかどうかについての事を今すぐ聞くのだ!! そうすれば話を短く( ;∀;)する事が出来るのだから! (T_T)

「今日は一応現場保存して帰るガル。早くお刺身定食を食べて寝たいガル。今も眠くて仕事にならないガル。警察官だって人間ガル。寝なきゃ死ぬガル……確かに殺人事件を解決する為、私の仕事は必要かもしれないガル。でもやりすぎで私が過労死してしまっては話にならないガルゥ」
フラフラ

「そうか……そういえば今日の午後2時位からずっと仕事してたもんね。労働者なんて物はなるべく生かさず殺さずで長持ちさせないとダメだもんねえ。時には飴を与え仕事に対するモチベを上げて、時には厳しくして世間の厳しさを……」

「酷い言い草ガル。意識がもうまずいガル。帰るガル」

「了解、で、刑事さんもそろそろ来るんでしょ?」
ぬう、こんなにお願いしても全くやってくれない……意思疎通が出来ないこの状況……もどかしい物である。

「あっ、忘れてたガル。まだ連絡していないガル。今から呼ぶガル」

「もう、うっかりさんねえ。死人が出たんだからね? このまま帰ったら駄目よ? 早くしてよね?」

「そうガルね。でもあの時間は警察署には偶然私しか残っていなかったし、緊急で呼ばれてはこういうミスも仕方がないガル」

「誰も居ない事ってあるんだ」

「いや? 当番制で今日は本来非番ガルよ? で、非番以外はちゃんと必ず夜でも働いている警官は居るガル。
夜勤と言うやつガル。でも……警察官も人間ガル。今日に限って当直の人間がみんな夏バテと熱中症で具合が悪くなって医務室で休んでいたガル」

「えー全員が? 確かに最近異様に熱いもんね。エアコンないと夜中でも蒸し暑いし……でも、誰も居ないこんな時に事件が起きたら町はパニックじゃない?」

「だからこの情報は絶対漏れてはいけないガル。アリリちゃんも内緒にしてガル?」

「うん。まあこの暑さで何か事を起こそうってバカも居ないと思うしね。多分大丈夫だよ。じゃあ今から警察署に連絡出来ないよね?」

「そうガル。だから、竜牙刑事の携帯に直接連絡して呼ぶガル!」

「そっか、この時間じゃ家に戻っているものね……」

「まあ私の知り合いでもある彼を呼ぶ事にしたんだガル!」

「刑事と鑑識って腐れ縁があるもんねえ」

「そうガル。毎回同じ現場で仕事するガル。で、もし、竜牙刑事が家族と団欒をしていようが、う〇こをしていようがこの電話一本でそれをキャンセルする事が出来るガルw」
虎音よ……大人の女性なのだからもう少し上品な例えをしてくれないか?

「う〇こはキャンセル出来ないよ?」
だからさあ……

「まあ物は例えガル。どんな事があってもこの電話は最優先ガル。決して私に逆らう事は出来ないガルw」

「ああ、でも虎ちゃんにもその権利があるんだ?」

「それは当然ガル……竜牙刑事と……これガル!」 
ピッ 

「……竜牙刑事ガル? 〇〇〇の五鳴館に今すぐ来るガル。死体があるガル。じゃあ急ぐガル」
ピッ

「そうか……こうやって呼んでいるんだね。滅多に見られない光景よねwそういえば、ママも夕方位に電話が掛かって来て、その直後どこかに行っちゃったもんなあ……こんな感じで煽られて焦って走って言ったんだなあ。こんなにも可愛い一人娘を都会に置き去りにしてさあ」

「そうだったガル……でもアリリちゃんのママも多分非常招集でもあったのかもしれないガルね。大きな事件が起こった時には休みだろうが呼んでもいいと言う決まりがあるガル……ん? そう言えばここで会ったが三回目。で、慣れてしまったけど、アリリちゃんがこんな時間にこんな所にいるのはおかしいガル」

「理由あって強引にここに連れられてきたの。なのでここに今日は泊まる事になったんだけど、死体と一晩共にすると思うとちょっと憂鬱」

「今から家には帰らないガル?」 

「もう関わっちゃったし、見過ごせない。明日起きたら全力で犯人捜しするつもりよ!! このまま帰ったら寝覚めが悪いわ」

「そうガル……アリリちゃんは主人公気質ガル……私もその気合に憧れるガル……」

「よしてよ……普通の事してるだけよ……照れくさいじゃない……」

「じゃあ事件解決したら警察が責任を持ってアリリちゃんのおうちに送り届けるガル」

「そう? 助かるわw一応お金は渡されていてたんだけど、足りるかも分からないし、どこ行きの切符を買えばいいかも分からない状況だし……それでも一応駅に行こうとした直後に大雨が降ってきてね。そしたら、フンガーが突然私を傘代わりにして半ば強制的に連れてこられちゃったんだ」

「フンガーって誰ガル?」 

「フランケンみたいな男の子よ。背も私みたいに高くて2メートル以上あるんだ」
誰一人納得出来ない事を言うアリリ。

「へえ、その子に拉致されて巻き込まれた訳ガル? 不運な子ガル。その拉致された結果で2日で3回も事件に遭っているガルw」

「そうなんだよねーこんな事今までなかったのに……そういえば七瀬さんとか早乙女さんがこの宝石から何か嫌な気が漂ってるとか言ってたけどぉここまでくると本当なのかも知れない……でもこれは私の宝物なの。だから何か上手い事言って手放させようと画策してくる悪者も沢山いるけど、そんな嘘には従わないんだからね! 絶対私が守り抜いてみせる」
七瀬や早乙女を悪者扱いしてしまうアリリ。私は彼らが嘘を言っている様にはどうしても思えないのだが彼女は絶対に手放さないのだろうな……
キラリーン
アリリはペンダントを開き、中に入っている黒い宝石【不運のブラックダイア】を取り出し、虎音に見せる。

「これは黒い宝石ガル? 奇麗ガル」
ゴロゴロゴロゴロ

「そうよ。……あれえ? なんか聞こえる? 雷? ゴロゴロって響いてる!」

「あっ、またやってしまったガル(///照///)」
これは虎音の癖で、気持ちがいい時などに、ネコ科の動物の様に喉を鳴らす事が出来てしまうのだ。見かけによらず可愛い癖がある物である。

「虎ちゃんの仕業だったんだ!!」

「申し訳ないガル。でも習性なので止めようがないガル……では、もう刑事も呼んだし仕事も必要最小限の事は終えたので私はこれで帰るガル。刑事さん来たらこの書類を渡しておいてくれガル。後事件解決したら送って貰うガル」

「うん。で、読んでもいいでしょ?」

「別に構わないガルが、難しい漢字で書いているので大丈夫ガル?」

「平気よ。漢字は超得意だし」

「そうガル。じゃあ私はこれで本当に帰るガル。アリリちゃん? 死体をいじったり動かしたりはしては駄目ガル? 後、市田さんの部屋に鍵をかけておいたガル。だから竜牙刑事が来たらその時に開けるガル」
そう言い、アリリに鍵を手渡す。

「はいっ!」(早速死体を見に行こうっと。触らないけど)
虎音は帰って行った。

「よし、刑事さんが来る前に死亡診断書? だっけ? を見てみようっと……何々? え? 嘘!!」
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死亡診断書 作成者 美薬 虎音

死亡者氏名……市田理内 (いちたりない) 

性別……男性

生年月日……1973年12月31日 

死亡日時……2022年7月24日 11時~12時

場所……五鳴館3階自室、机の側面。

死亡の原因……満腹による死亡。もしくは老衰による自然死。

死因の種類……満腹の場合は窒息死、自殺もしくはその他。

外因死の追加事項……〇〇都ー〇〇市ー〇〇番地 五鳴館3階自室、机の側面にて仰向けで倒れていた。食事で異常に腹が膨らんでいる状況で死亡。外傷、絞殺痕、毒物検出無し。

その他特に付言すべきことがら……周りにはコーヒーや砂糖水、小麦粉を焼いた菓子、牛肉、蟹の身、レーズンと成分不明の赤い液体が散らばっていた。
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(ま、満腹か老衰? 何よそれ! 滅茶苦茶いい加減じゃん……何あの哺乳類ネコ科のメガネ……)
かなり猫の特徴を持ってはいるが一応人類である。

「どっちでもないでしょ! 一目見て分かるわ! ……だって50そこらで老衰って……江戸時代か!! それか食い散らかして死んだって事? 好きなもん食いまくって大往生なんて最高の死に方じゃん……私も死ぬ時はその死因採用するわwで、外傷無し、絞殺痕、毒検出されず? 死亡推定時刻11時から12時ね……」
皆さんお気付きであろうか? あの虎音は書類をここまでしっかり書けるのに、脈だけは絶対に決して見ないのだ。徹底してるなあ……

「これだけじゃ当てにならないよね? 恐いけど市田さんの死体を実際に見てみよっと。メデューリさんも来てくれない?」
ダダダダダダ

「分かったーリ……って! アリリちゃん? 素早過ぎるーリ!」

「お邪魔しまーす」
即到達する。
かちゃ くるっ ガチャ
虎音から預かった鍵を開けドアを開く。すると……

「え?」



「あれ? 無い? 市田さんの死体が無い!!」
市田は部屋の奥で仰向けて倒れていた筈だがきれいさっぱり無くなってしまった。一体誰が何の目的で? まさか虎音の仕業か? いや……そんな事をする意味がない。アリリは皆の部屋に駆け出す。
ダダダダダダ

「みんなを集めて」

「何事チュウ?」

「任せるカニ」

「おおーいみんなー集まってニイ」

「何リキ? 今、マネキンを治していたリキ……」

「とにかく市田さんの部屋に来てー」

「分かったドフ」

「フンガーフフ」

「アリリちゃん? 一体なんだピカ?」

「部屋に入ってみて?」

「何でチュウ? もったいぶって……あっ!」

「どうしたって言うんドフ……な?」

「どうして……いなくなってるーリ?」

「みんな! 取り合えず刑事さんが来るまでここで待機してくれる?」

「アリリちゃんに言われた事でみんな各々自室に帰って行ったんだチュウ? 部屋に戻りたいでピカ!」

「あんたねえ……市田さんが死んだかもしれないし、その死体が無くなったんだからあまり動くのは怪しまれるわよ?」

「そうドフ。ここは皆を監視し合わなくてはいけないと思うドフ」

「分かったリキ!」

「みんな何かおかしい事はなかったの? 物音がしたとかさ?」

「そんなの室内の動物たちの鳴き声が大きすぎて聞こえなかったでチュウ」

「他のみんなは?」

「特に思い当たらないリキ!」

「僕もニイ」

「私もだドフ!」

「フガ……オ……レモフフ」

「え? フンガーもなのね? すごいじゃん! 日本語が出来るようになってきてるじゃない! うん……着実に……実っていく……」

「アリリちゃん? どうしたリキ?」

「あわわ……何でもないですうぅ」

「何でもないようには見えなかったニイ」

「本当だってwほら 物音聞こえたの?」
話を逸らすアリリ。

「私も静かに読書出来ていたーリ」

「俺もおもちゃの整理をしてた時も何も聞こえなかったカニ!」

「じゃあ音も立てずこんな夜中に一体どこに移動させたの?」

「分からないーリ」

「探索は明日にしたらいいと思うピカ。こんなに眠い状態ではどうやっても見つけられないと思うでチュウ」

「そうね……」
そんなやり取りをしていると……
コンコン コンコン
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