第25話 窮鼠、猫に噛まれる!? 中編

文字数 9,555文字

前回衝撃のラストだった訳だが、覚えていない方の為にも軽く語る……アリリが……ネズニを攻撃した……金の斧で……ぬう? いつもの語り部さんらしくないよ! であるだと? そうか……しっかりと語れておらぬか? だが事実なのだ……アリリは現在犯罪者……詳しくは前話を見て欲しい……

「ククク……痛えか? これが貴様の犯した罪の重さ……とくと味わうがよい!!!!」
人格が、変わっている。これはアリリではない。何となく分かるのだ。
「きゃあああ! 止めてリキ!!!」

「何してるんだーリ!」

「おいおい……こんな……アリリちゃんは悪魔だったのカニ?」

「アリリちゃん! なんて事をするドフ! ネズニ君! しっかりドフ!」

「アリリ最高峰の……いや! アリリちゃん! ……セリフが完全に悪役だニイ」

「フンガーフンガーフフ!! フ……ガ……」
ドタバタドタバタ……フラフラ……バタッ
フンガーは流れる血を見てあたふたした後、気絶してしまう。

「あっフフンケン君が倒れたリキ!」

「ま? な、なんて事を……大丈夫かい? ネズニ君!」

「肩から血が……痛いチュウ……」
ポタポタ
肩を押さえるが、そんな事では何も変わらず。手をすり抜け、床に血が滴り落ちる……この量は死に直結しかねぬぞ……

「ククク……」

「追い、詰められたら……暴力で訴えるピカ? ……お前は最低でチュウ。こんな酷い事をするなんて……」
こ、これは……まさかアリリが傷害罪の現行犯になってしまうというのか……? しかし力1のアリリでもネズニを傷付ける事が出来る事から、この斧、相当軽く、その上切れ味抜群と言う事が分かる。だがおかしい! 普段ならこんな事をする娘ではない筈なのだ! 言葉で心を潰すしか出来ない幼女の筈だ! そう、どんな時だってそれで障害を取り除いて来た筈なのだ。

「いいえ! 私は罪を犯したつもりはないわ」
なんだと? そうか! 少年法か……14歳以下の傷害は確か罪にならない。それを利用しての計画的犯行……最低の幼女である……

「ど、どういう事ピカ?」

「ニイラ君! あれをネズニに!」
まさか?

「そうか! 大いなる森よ! そして、そこに住まいし、心清らかなる聖霊よ! この、小さき命の肩に刻まれし傷の穢れを、聖なる輝きで浄化したまえ!! ぬううううううう……ハッ! ホイミイラ!」
パアアアア
ネズニの肩に刻まれた傷が塞がって行く……これで一安心だな……しかし、なんて事をするのだ。もし魔法が無かったら病院までに間に合うかすら……ぬ? これは?
バリバリ

「うわあああ……あれ? 傷が癒えないでチュウ……痛いピカ……ピカチュウ瀕死でチュウ……」
だが、その傷は一旦塞がったと思いきや、すぐに再び同じ大きさまで開いてしまう。更に傷の色がおかしい事に気付く。黒紫色なのだ。この色は普通の傷の色ではないだろう。何とも毒々しい色。
ぽたぽた

「え? それじゃあ話が違うよ……癒えてもらわないと困るのに」
アリリ! それ以前にまずはネズニに謝らぬか!!

「くそう! もう一度ニイ! 大いなる森よ! そして、そこに住まいし、心清らかなる聖霊よ! この、小さき命の肩に刻まれし傷の穢れを、聖なる輝きで浄化したまえ!! ホイミイラ!」
ぱああああ 

「止めてピカ……塞がってもすぐに開く……その度に痛みが甦るでチュウ……」
何故こんな事に……アリリよ……お主、一体何をしたのだ!

「何でこんな事に……」
ふと左手に持った斧を見て見る……すると……!

「あ、あれ? この斧……金色ではあるんだけど、よく見たら物凄く呪われている装備っぽい装飾なのよ……ほら、見て? 悪魔が真ん中にいる様な……」
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「ま? ブル……そ、そんな物早く外して下さい」

「うん……え? あれ? 外れないよ……なんで?」
ブンブン ブンブン
やはりこの斧、金色ではあるが呪われた斧だったな。だがどういういきさつで? この斧は、童話の【金の斧】をモチーフに作られた筈だ。あの話ではそんな結末にはならなかった。あのお話内では正直者の木こりは金銀鉄の全ての斧を手に入れ、嘘を突いた悪い木こりは自前の鉄の斧も含め全て没収され終了した。これだけだった筈なのだ。だが、アリリもあの場面で嘘を突いたが、嘘つき木こりの様に没収されず、逆に金の斧を手渡された。
これは一体どういう事なのだろうか? その際も、精霊様の表情はこれから呪われた斧を渡すわよ? ふふふwと言った素振りは無かった筈。もしやそう言う芝居で安心させたと言う事か? いや、渡した後におかしいやん等と沈みゆく瞬間も文句を言い続け去って行った。
ここからも彼女は素だった筈なのだ。まさかアリリの自信に満ち溢れた嘘を目の当たりにし混乱。脳内で処理しきれず、こういう事もあるんやなあと思いつつうっかり金の斧を渡してしまったのか。だがその斧には呪いが……フム、この矛盾を解消するにはどうすれば……だが、ここから推測するに……成程……これは精霊様も未経験で想定外の事が起こっていたと言う事だったのかも知れない……そう、第三の選択肢があの場面で唐突に選択されていた。と言う可能性が高いのだ……その可能性とは、

【躊躇いも無く嘘を突いた存在】

が現れた場合、没収では飽き足らずに呪われた金の斧を渡し、その最低の嘘つき木こりを懲らしめると言った内容の選択肢なのだろう。
思い出してほしい。アリリが精霊様の質問に対し嘘を突いたがその際にためらいはあっただろうか? 微塵すら感じられなかったな? その最低な行為に反応し目覚めてしまったのだ。第三の選択肢……がな……そのスイッチが押された瞬間、精霊様の脳内にその命令が下され、意志に反して呪われた斧に変化した金の斧を手渡した。これが真相であろう! だから精霊様も納得せずに帰宅した訳だ。それをアリリが初めて引き起こしただけの事。と、言う事なのかもしれない……そして、本来言葉で人を攻撃するのは得意ではあるアリリが、安易に暴力に訴えてしまった理由も、その呪いの斧が引き起こしたものだと推測される。そう、この凶暴性は心の奥底に眠っていた物を、斧の呪力によって顕在化させてしまっただけの話なのだ。呪いの斧って本当に恐ろしいなあ。
しかし、アリリは色々な事を試し、新たな事実を発見するのが得意なのだなあ? アリリはもしかしたらゲームのバグを発見するデバッカーに適しているのかもしれぬ……本来2択までしか存在しなかった択を強引に一つ増やしてしまったのだからなあ。

「そうか! 分かった二イ。これは……」
ニイラが何かを閃いたのか? アリリに向け詠唱を始める。怪我人はネズニだろうに……

『神の寵愛を受けし神聖なる聖霊よ! 数多の呪術を退ける力秘めし聖霊よ! この小さき者の腕に取り憑きし呪物を開放せよ! ジョーカース』

「あっ外れた……良かったあ……」(この斧はカバンにしまっとこうっと)
ごそごそ
ほう。呪いを解いたのか。だがアリリは外れたと思ったら、瞬時に当たり前のように私物化してしまう。根っからの盗賊気質だ。
そういえば覚えているだろうか? メデューリの部屋でネクロノミコンに呪われた時、私は既に2つの呪われた物を所持していると言う話をしたと思うが、一つ目はイーグルスノーホテル展示室にあった幸運が下がるブラックダイア。そして二つ目がこの金の斧だったのだ。ブラックダイアは装備していたが、この時のジョーカースの対象が、

【小さき者の腕】

だった為、解呪はされる事無く未だにアリリの幸運を下げている。そしてその時所持はしていた金の斧は、装備していなかったので、仮にジョーカースの対象になったとしても解呪されない。何故か? それは呪われた装備は一度装備していないと浄化は出来ない。そういうルールがあるのだ。そし現在、呪いの消えたただの純金の斧を入手してしまった状態なのだ。

「ふう、よし次は……」
すぐさまネズニ男の方を向く。そして、傷に向け手をかざす。

「神の寵愛を受けし神聖なる聖霊よ! 数多の呪術を退ける力秘めし聖霊よ! この小さき者の肩に取り憑きし呪物を開放せよ! ジョーカース」
ぱああああああ
そうか、ネズニの肩に刻まれた傷。これは呪われた武器でつけられた傷だ。これは一度付けられたら失血死するまで塞がらないと言う、呪いの傷。その名を【死魔傷】と言う。ニイラ男は瞬時にそれを見抜いて、傷に向けて解呪の呪文を使用したと言う事だな。

「あっ傷の色が変わったわ? これで普通の傷に戻ったって事?」

「正解ニイ。これで次は……『大いなる森よ! そして、そこに住まいし、心清らかなる聖霊よ! この、小さき命の肩に刻まれし傷の穢れを、聖なる輝きで浄化したまえ!! ぬううううううう……ハッ! ホイミ』……あ、あれ? 出ないニイ」
ぬ? これは? 

「ニイラ君……MP切れだドフ……君は既に回復呪文と解呪の呪文を2回ずつ使用しているドフ……MP切れも仕方ないドフ」

「そうか……うっかりしていたニイ。その前にも僕の部屋とメデューリさんの部屋で回復と解呪の呪文を一回ずつ使ってしまっていたニイ。僕、最大MPはそこまで高くないニイ……でもこのままじゃネズニ君が……」

「何か方法はないのリキ? 早くしないと死んじゃうリキ……」
  
「だ、大丈夫でしょ? 呪いが消えたんだし後は自然治癒力で……」

「黙っていろ!!!!」
ニイラの包帯が真っ赤に……いや、深紅に変わる。これは怒りを超えて、激怒しているようだ。

「ブル」

「ブル。そうだ! 廊下に設置された羊羹の洋館……間違えたよおwwww洋館の羊羹を食べればいいんだよおwヒヒヒ……苦ヒィ……」
なんと! 

「えっ? 何であんな物を?」

「食べたら分かるよお!」

「分かったカニ! 俺が取って来るカニ!」
ダダダダダ!
お? オオカニが部屋を飛び出していったぞ……だが……
ーーーー数秒後ーーーー
「ぎゃあああああ」
ポウーン

「オオカニ君の叫び声ピカ……」
食べ物を見ると変身してしまうオオカニ。完全に人選ミスである……誰か事前に気付かなかったかなあ? 

「メエエエエエエ! メエエエエエエ!!!」
ドガンドガン
オオカニは羊に変化している。何故だ? 法則に(のっと)っていない……本来この羊羹が一番好きな動物に変身する筈だが……羊は羊羹が大好物な動物なのか? まさか……そんな筈は……それとも誰一人まだあの羊羹を食した事が無いと言う事か? もしくは羊羹を食べ物の中で一番好きと言う人類も動物も存在しないと言う事なのか? 確かに食べ物の中で羊羹を一番好きと言う種族は存在しないのは仕方がない。甘いだけで尖った物が無いからな。好きすぎて最後の晩餐に羊羹を選ぶ人類はおらぬだろう。どちらかは分からぬがどちらかと仮定し、今羊になっている状況を推理すると……誰も食していない、もしくは好物の動物がいない場合、その食べ物の名前で近い動物に変化する様だ。そう、

【羊】

羹だからな。変なオオカミ男だ……だがその羊、暴走している。壁に何度も体当たりをしているぞ。羊が羹羹になって怒っている。と、考えていいのだな? 正に、どとうのひつじだなあ……

「……フ……フガア? ココ……ドコダ?」
ぬ? この爆音で気絶したフンガーが目を覚ましたな。血を見て気絶したのだろうな。意外である。

「暴れた動物なら僕に任せて欲しいでチュウ。動物の調教なら僕に任せてピカ。この能力で一瞬で止めて見せるでチュウ」
ネズニ男がなだめようとオオカニが変身した羊に近づくが……

「あ……れ? フラフラするピカ……」
負傷している状態では本来のネズニの特技の【なだめる】が使用出来ない様だ……だが容赦なく羊の暴走は続く……廊下の壁が角の刺し跡で刻まれていく。そして、いずれ住人にも被害が出るかもしれぬ……どうなってしまうのだ?

「くそ、あの唄さえ……睡眠の唄さえ歌えれば……悔しいドフ」

「そう言えばドフキュラさん補助の唄の使い手だったっけ?」

「そうドフ」

「こういう時に覚醒してみんなを助けられればすごく盛り上がるのになあ……それが出来ないようじゃドフキュラさんは真のヒーローとは言えないね……」

「面目ないドフ……って言うか私はヒーローと言うよりは妖怪ドフ……そんなまぶしい存在にはなりたくないドフ」

「そうなんだね……なんか悲しい言葉……」

「ならこれでどうリキ?……」
そう言ってリキュバスが詠唱を始める。

「え?」

『万人の心の中に潜みし愛の聖霊よ、この者達の中で、今も眠り続け、永遠に訪れぬその時を待ち続けている悲しき聖霊よ……今こそこの者達の理性を乱し、本能を曝け出し私の虜に……数多の殿方の心を引き付けよ……フェアズーフング!』

「それはダメだドフ……う、うう……リキュバスさああああああん♡」

「メエエエエエエ……? メエエエエエエ♡」
スリスリ

「美しいニイ……リキュバスちゃああああああん♡」
ダダダダダ

「リキちゃああああああん」

「お姉たまああああ♡」
ダダダダダ

「ピカチュウウウウウウウ♡」
だだだだだ
一斉にリキュバスちゃんに向かって走る男達♡♡

「フフフwwみんなリキに虜リキww」(……あ……あれ? そうか……そうよね? え? でもさっきも……あれ? こんな事って)
優越感に浸るリキュバスおねえたま♡だが、何かに気付き♡複雑な表情をする♡

「おいおい……羊だけでいいーリ。というかアリリまで誘惑してどうするーリ。アリリはメスーリ? 不思議ーリ……仕方ないーリ……」
メデューリよ……アリリをメス呼ばわりしないで欲しい物である♡だが、口は悪いが現在この屋敷で唯一まともなメデューリが詠唱開始する♡

『大いなる大地の聖霊よ、地中深くから大地を守りし優しき者よ! 彼の者を母なる大地の安らぎにて、暫しの眠りを……シュタインビーゲンリ―ト』
ピキーン

「あれ? 私、またリキュバスさんを性の対象として見てた……でももう正気に戻ったわ……」
アリリ……性の対象なんて言葉、何回も何回も使っちゃだめだよ。

「リキュバスちゃん! 駄目でしょ!」

「ごめんリキ!!!! でもこれしか止める方法思いつかなかったリキ……」

「そうか……リキュバスちゃんも一つ足りないんだったよね? でもそこがリキュバスちゃんの欠点でもあり良い所でもあるんだ」

「まだ暗くした方が夜かと思って眠るかもしれなかったでしょ?」

「うっかリキ」

「リキちゃん! 語尾略は勘弁だよお! この場合はうっかりリキだって」

「あっ、うっかりリキ!!!!!!! ニカ」
何なのだ……この状況……

「メデューリさんありがとう! お陰でオオカニが変身した羊が、誘惑されたと思ったら石に変わっちゃったwてかどんだけ変わるのよオオカニwww」

「これで大丈夫ーリ。オオカニ君の戦闘の意志が消えたら解ける筈ーリ」

「あっこれで羊羹を食べられるニイ」
パクパク

「うう、この羊羹物凄い硬いニイ」
もぐもぐ

「大丈夫だよ。よう噛んで食べればいいんだよお」

「羊羹だけにニイ?」

「おうよ! ヒヒヒィ……苦ヒィ…… 」
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「分かったニイ……」(何でこんな面白くない事でそんなに笑えるんだニイ? しかし市田さん……一層……)
もぐもぐもぐもぐ

「味はどうなの?」

「普通に美味しいニイ。あ、あれ? 魔力が甦る? こ、この羊羹……凄い効果ニイ!!」 
洋館の羊羹はMPを回復させる効果があるようだ。ニイラ男の瞳に光が宿る……!

「本当? じゃあ今ならいける?」 

「おうよ! はああああ……大いなる森よ! そして、そこに住まいし、心清らかなる聖霊よ! この、小さき命の肩に刻まれし傷の穢れを、聖なる輝きで浄化したまえ!! ぬううううううう……ハッ! ホイミイラ!!」
ぱああああ

「き、ずが治ったでチュウ……ハアハア……ニイラ君本当にありがとうピカ。ピカチュウ感謝でチュウ!」

「ナイスニイラさん! ありがとう……でも……大パニックだったよねーw」
おいおい……どの口が言うのだ?

「誰のせいでこうなったと思ってるドフ!」

「え? リキュバスさんですかあ?」

「アリリリリキ!!!」

「リが一個多いwwwww」

「あっ、こら! 1増やしちゃダメだよお。こんなのはもっての他だよお」
この言い方、まるで1減らすのはオッケーと言う感じに取れるが気のせいか?

「すまないリキ……」

「うっせえなこのハゲ! 下らん事で叱るなwでもリキュバスさんもみんなを混乱させてきたじゃない?」

「大元はアリリリリリリリキ!!!!!!」

「だよね……ごめんね……でも私のお陰でみんなの結束が高まったんじゃない?」

「元から結束はあるーリ。バラバラだと思っていたーリ?」

「うん。あ、そういえばなんで私の呪いまで解いたの? ネズニの傷の呪いから先に解いた後、ホイミイラじゃ駄目だったの? そうすればMP切れ起こさなかったんじゃない?」

「咄嗟の事で良く覚えていないニイ……でもアリリちゃんの呪いを先に解かないとまたネズニ君を呪いの斧で攻撃する可能性もあったニイ」

「成程、そういう事ね」

「傷がもう一度作られたら二度手間ニイ。元を絶たなくてはと思ったのかもニイ」

「凄いね。咄嗟の判断で正確な方を……流石私の弟子ね。でも私が自然治癒力でも治るからいいんじゃないって言う的確なアドバイスをした時に『黙っていろ!』って包帯を真っ赤にして怒っていたよね?」

「え? そんな事言ったニイ?」(やばいニイ……覚えていたニイ……)

「いいのよ。それ位元気じゃなきゃ私の弟子とは言えないし」

「はいっ」(怒られないでよかったニイ)

「う、うう……でも貧血でピカチュウ瀕死でピカ……子孫繁栄したかったでチュウ……」

「ほら、みんなこの屋敷を繁栄させたいと言う気持ちは一緒ーリ。それに! ネズニ君が酷く衰弱してるーリ」

「耳腐ってるの? 屋敷の事なんか一言も言ってないじゃん」

「そんな事よりも彼に謝るーリ!」

「やだよ! それが目的だもん」

「どういう事だカニ?」
カニも石化して羊化していたが、いつの間にかオオカニの姿に戻った様だ。そして今までの流れを把握している事からも羊化&石化中も、皆の言っている事は分かっていたと言う事だろう。

「知りたいの? じゃあ教えてあげる。これで証拠は残らず。更にネズニに恐怖を与える事に成功した筈よ! ホイミイラでは流れた血を戻す事も、今しがた私から味わった恐怖も消す事も出来ない。回復呪文と言えど万能ではない。故に貧血気味の状態で尚且つ私と言う存在自体ににトラウマを感じている筈。
そんな状態ではあんたはもう私に生意気な口を利く事は出来ない」

「……」
アリリを睨んでいるネズニ男。が、その表情は怯えている気がする。

「でもね? あんたが悪いんだよ? 200もあった物を177まで下げやがった。良かれと思ってやった、私の大切な人生の時間を割いて考えて出したアドバイスを否定して来たのが悪りいんだよ! 所詮畜生が一生懸命頑張って知識を(さら)け出したくてやった愚行。そんな矮小な自己顕示欲を満たすために私の心を傷付けるな! ちょっとおかしいなと思っても黙って受け入れとくべきなの! 下手に私を刺激して怒らせた。だから出る杭として打たれた。仕方ねえ事なのよ! 分かったらさっさと200に戻して、土下座して、泣いて詫び続けなさい!」
成程な。紆余曲折あったが、ホイミイラを使用可能なニイラ男を有効活用し、更には呪いの武器に操られたとは言え、本来正義の味方のアリリがそれに一切抗う事無く素直に呪いを受け入れ、思う存分暴れたと言う事か……全ては200から減らされるのを止める為だけに……機転が利く幼女である。だが最低である事には変わらない。
近い内に彼女には天罰が下る気がする。

「クッ! 言われてみれば……怖いピカ……でも傷は塞がったとは言え、この切れて、変色してしまったローブをどう説明するんでチュウ?」

「そこら辺の木の枝に引っかかって切れたと言えばいいわ。その時肩から流血で変色した。あんたの部屋ならあり得るからね」

「そんな言い訳はすぐに暴かれるピカ! 悪には絶対に負けないでチュウ」

「ほう、この純然たる正義の幼女を悪と言えるか……しかもまだ目は死んでいない……か……よろしい君はその資格があるようだ。では続けてみよ……」(その強がりがいつまで続く事か……!)

「ブル」

「言われなくても続けまピカ……フラフラするけど元気に行きまチュウ!!!! ええと……木の精霊を見て気のせいかって言いうのは止めなシャレと言っていたけど、あの洒落を言っていたのはアリリ自身だピカ! 僕に責任転嫁するなでチュウ! 177→176

次に妖精の間を妖妖妖ヨーヨーヨーYO! 精の間に改名しろと言っていたでピカ。ですが、本気でそれがお化け屋敷の部屋の名前として相応しいと考えて言ったんでチュウ? ラッパーじゃあるまいし……僕はどう考えても適当に考えたとしか思えなかったピカ。どうせ一晩泊まったらオサラバするだけの立場だチュウ。親身になって考えていないように感じたピカ。176→175 

捻りが足りないと言ってダメ出しした割にはアリリのアイディアも大した事ないでチュウ。175→174」

「もう終わりか?」

「まだまだ始まったばかりでチュウ! 天使の間で【ハイ天使ョン】を批判していたピカ。それ自体はこの屋敷の運営方針には関係ないでチュウ! それにそこまでテンションシステムは不評じゃなかったんでピカ! 低レベルでもテンションを上げる事で強敵を倒す事が出来るんでチュウ。その快感は今までのトラクエでは味わえなかったピカ! アリリは新しい仕組みを受け入れられない懐古厨だチュウ!! 174→173

そして、その事に対して友達の名前を借りて別々の人間として本社に手紙を10通送ったと言ってたけど、文面に

【目玉へし折る】

と言う目立ったワードを書いてしまえば同一人物とバレるピカ」173→172

「ぬ、ぬうううううううう」

「次から次へと出てくるリキ……200つっこみを終えたばかりのアリリちゃんはとってもすごい子リキ! って思っていたけど、ネズニ君の話を聞いた後だと大した事ないように聞こえちゃうリキ!!!!」

「おい、リッキーそんな寂しい事言うなよ……友達だろお? ぐぐぐぐ……もう、打ち止めで、終わりだろお?」
残念だがリキュバスはリッキーでもアリリの友達でもない。

「これで折り返し地点でチュウ……フラフラするピカ……でもピカチュウ諦めないでチュウ!!!」

「ま?」

「ま?」
市田と同じタイミングで驚くアリリ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本当はネズニの怪我、ホイミイラで治して終了でした。ですがそれだけでは味気ないし、一回だけじゃつまらないと思い、もう一度住人達の特長のおさらいを兼ね、傷を呪う事を思い付きました。これはドラクエの漫画、ロトの紋章の戦士、キラの使う呪われた武器で攻撃すると回復呪文でも傷が治せない幻魔剣と言う剣技? の効果をそのまま真似しました。それを解呪している内にMP切れを起こし、それを洋館の羊羹で回復。ところがそれをオオカニが取りに行ってしまい……と言う感じで引き伸ばしました。結果、本来4000文字位だったのが、倍以上になってしまいました。こんな風に、本来4000文字で投稿予定だったのが、読み直している内にここを付け足せるんじゃないかと足している内に膨れ上がる事が多いのですが、そうなってしまった場合改めて5000文字位で区切り直した方がいいのでしょうかね? そうするとおかしなところでぶつ切りになってしまう場合もあるし……難しい所です……
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