第27話  2回目の夕食タイム

文字数 8,862文字

美味しい食事をすると、つい口の紐が緩んでしまうものです。これは美味しい味を堪能する事に夢中で、本来秘密にしておきたいような事までうっかり話していた? と言う事なのかもしれませんね。

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「じゃあお手数ですが食堂に戻りましょう。場所覚えてますよね?」

「はいっ!」

「助かるカニ。お腹減ったカニ」

「あれ? オオカニ君はさっき食べたばかりですが?」

「食べてないカニ。食材を見せられただけカニ。それどころか今日は過去最高で色々な種類の生物に変身させられたせいで物凄く減っているカニ!」

「ま? そういえばそうでしたね」

「ダメよ! まずは私の分だけを迅速に用意して。だって……血が……足りねえ……」

「酷いカニ……僕だって沢山変身したせいでへとへとカニ」

「その後寝たでしょ? わがまま言わないの! それよりもあのムクバアドとかいう馬鹿鳥の焼き鳥も食わせてね」

「ああ、ムクバアドちゃんがやってましたもんね……でも彼を調理して食べさせる訳にはいきません。花の間の大事な一員なんですから! それに折角進化して……あっそうです! もうムクバアドじゃなくてムクホウクですよ? 全く……アリリちゃんは抜けているなあ。まあそれがアリリちゃんの欠点でもあり良いところでもあるんだ」

「またそれかい! 早く眼球のお詫び飯頂戴!」

「眼球のお詫び飯……分かりました。迅速に用意させましょう!」

「またオウム返ししてるし……」

「なんかいい響きだったのでw よし! フフンケン用意してくれるか? 血になる様な料理だぞ? その後で私達の分も用意をしてくれ」

「フンガーフフ!」
その言葉にいつもと違う様な目の輝きになるフンガー。やはりアリリが弱っているから何とかしたいと思っているのだろう。気は優しくて力持ち、更には家事全般も出来てしまう大男。完璧であるな……そして自室に走り出す。
ドドドドドドドドド

「では私達は食堂に行きましょう。私もお茶だけは頂こうと思いますしなんか色々とあって発汗が凄くて……喉がカラカラですよ」

「そういえばお腹減ったでピカ。今から食堂でチュウ?。僕も行きまピカ」

「僕も行くニイ」

「私も行くドフ」

「私もリキ!」

「ワシも行くーリ」

「みんなで作ればいいんじゃない?」

「え? みんな? 」

「全員料理は得意なんだよお。勿論私も得意だ! 実は周って貰った後、お客さんが気に入った部屋主一人選んでその人からの料理を食べて貰ってから帰って貰うんだよお」

「へえ、そんなサービスが……意外ねえ。それで2999円は安いね」

「大人は4999円だよお」

「ああ、そういえば子供2999円って言ってたっけ」

「理内さん待って欲しいチュウ。今はフフンケン君頼りピカ。僕は今料理を作るほど元気じゃないでチュウ。確かに傷は塞がっているピカ。でもちょっと貧血気味でチュウ。料理を待ちまピカ」

「そ、そうかい。じゃあ行こう」
とことこ
ーーーーーーーーーーーーーー2階 食堂ーーーーーーーーーーーーーーーー
アリリは市田、ネズニ男、ドフキュラ、ニイラ男、リキュバス、オオカニ男、メデューリと共に食堂に到着。

「な? もうこんな時間か……」
食堂に着くと腕時計を見て慌てる市田。

「え? そういえば何時?」 

「9時30分だよお」

「市田さん。今は10時30分ドフ」

「な? そうだったね。助かるよドフキュフ君」

「何でも【それ】をやっては困るドフ。正確な時間位は教えて欲しいドフ。ん……? 市田さん? 今の【ドフキュフ】とは何だドフ?」

「な……ついうっかり……」(しまったあ……これじゃあ駄目なんだ。これじゃ【2足りない】じゃないかよお……最悪のミスだよお……)

「私の名はドラキュフなのか? ドフキュラなのか? ドフキュフなのか? 曖昧だュフ。先程私の部屋でドラキュフと言った場合はュフ。で、ドフキュラならドフと言う語尾にしてくれと言う面倒な命令を受け入れたばかりドフ。この場合どういう語尾にすれば良いのだ? 取り合えずドフとュフを交互に言っているュフ。だがこれだと必要以上に頭を使ってしまい大変ドフ。出来れば呼び方を統一して欲しいュフ」

「うーん……じゃあドフキュラで何とか統一出来るように頑張るよお」

「全部違うでしょ? どう考えてもドラキュラじゃん」

「NO!」 

「それは違うドフ」
何故かドフキュラも同意している。

「分かんねー。何でこんな謎が解けないだけで悔しいのよー。どうでもいい謎じゃねえかよおおお! でも、解きたイイイイイイイ」

「いずれ分かるュフ」

「ドラキュフさんュフ言いにくいでしょう?……それにね? 打ち込む方も大変なのよ? だから断ればいいじゃないそんなゴミみたいなゴミ指示」

「アリリちゃん良いんだュフ……ん? 打ち込むとはなんだドフ? 初めて聞く表現ュフ」

「知らないわよ!」 

「私も知りたいおお」

「何でよ! 関係ないでしょ? しかもドフキュラさんも律義にュフとドフを交互に使ってるし……見てられないよ……こんなの首を切られるのを恐れて、何でもかんでも言う事聞いてる窓際族のサラリーマンみたいだよ……」

「まあそのようなものだから仕方ないドフ」

「そうなのね……かなしいなあ」

「あっ! 時間だしそろそろ行くからね。ゆっくり食べてていいよお」

「一緒に食べないの?」

「悪いね。そこまで空腹じゃないからね。この時間はどうしても書斎に戻らないといけないんだ。私のルーティンなんだ。だからとりあえず部屋に戻るよ」

「はいっ! 行ってらっしゃい! じゃあ私たちは待とうか」

「了解カニ」
ガチャ
食堂内でそれぞれの席に座る住人。

「あっ僕、アリリの隣に座るピカ」

「えー嫌だよー」

「アリリはもう一回食ってるんでチュウ? 僕はまだなんでピカ」

「違うって! 食べるのは別にいいけど、わざわざ隣には来ないでよー。臭いもん」

「まあ臭いの事はアリリが慣れてくれれば良いでチュウ。芳香剤や香水の力に頼っていない割にはいい匂いでピカ?」

「慣れないよ 馴れ馴れしくするなあ!」

「昨日の敵は今日の友でチュウ。それに僕も傷は塞がっているとは言え、かなりの血を失っているピカ? 異なる方法ではあるけれど同じ血を失った仲間でチュウ。仲良くするピカ!」
そう言いつつ肩を組んで来る馴れ馴れしいな。
「おいおい! 臭い臭い、ま、まあそれを言われたら弱いけど……でも弱っているとは言え、この私を打ち負かした癖に友達にまでなろうとするな!!」
アリリはもう既に忘れているだろうが、今ネズニに言われて思い出したようだ。そう、一応傷害罪に抵触するほどの凶行を彼に対して行った筈なのだ。だが、それを忘れているような感じでネズニに接していた。これはまあずっと屋敷を回ってさらには200のつっこみを行い、それをネズニに144個まで下げられたという一連の流れの中で、全てを記憶する事が厳しくなり、記憶として残す優先順位としては最も大した事の無い出来事だったと彼女の脳が判断した故に忘れたのだと思われる。
が、しかし、それと同時に、ネズニ男も彼女を一切恨んでいる感じがしないのだ。何故だ? やった方が忘れたとしても、やられた側がその記憶を簡単に忘れる事は無い筈だが……確かに傷にかけられた呪いを解き、ホイミイラで傷は塞がったが、それでも本来警察に報告しても文句は言えない程の事を彼女はした筈。実際に斧で肩を裂かれ、かなりの出血だったし、大切なローブも斧で破れた筈なのだ。
だのに、それをする気配も無く、隣の席に積極的に座ろうとしているではないか! まるであの出来事がすっぽりと抜け落ちた状態? で、親しい友人感覚で口げんかをしている? ……まさかネズニはアリリの全てを許したというのか? 本来警察に引き渡され、逮捕まではいかないが、指導位はされる筈なのだが……何と言う……恐ろしい程に優しく器の大きいネズニ男なのか? 私はその外見から卑怯で嘘つきな男だと思っていた節がある。だがその考えは改めなくてはならないな……もう外見で安易に判断する事は止めた方が良いのだろうな。
だが、ネズニ以外にも目撃者がいて、アリリがそれを指摘されれば現行犯でもあるし、警察に連れていく事もあり得るのに、何故かこのアリリの悪事を無かった事にしようとしている気がしてならない。気のせいだろうか?

「まあまあ、私達はお金を払って食べる訳だから同席を許してほしいドフ」

「ちぇっ、生理的に嫌だし臭いし異様に賢くて嫌いなのに……でもホイミイラの力でこいつのワキガも治らないのかなあ」

「それは厳しいニイ」

「やっぱりね。まあドフキュラさんに免じて許してあげるわ……ま? お金掛かるんだ」

「それは当たり前リキ! フフンケン君の料理はお金を払ってでも食べたいリキ!」

「へえ、とりあえず私は持っていないけど大丈夫?」
本当は14000円所持しているが、帰りの電車代を減らしたくないので無一文のふりをしている。

「アリリちゃんはタダで良いよ。じゃあ私はこれで」
そう言い残し市田は食堂を出ていく。

「わーいwじゃあまたね! 早く来ないかなー」

「まだまだ時間が掛かりそうドフ。テレビでも見るドフ」

「もうすぐ11時かあ、ナイターとかやってるんじゃない?」
ピッ

「もう終わってるドフ」
ワーワー
だがナイターはまだ続いて居る様だ。

「え? やってるじゃん?」 

「え? どうしてドフ?」

「ちょっと調べてみようっと……あ、そういえば雨、ゲリラ豪雨が夕方来てたよね? それでグラウンド水浸しになったんだって? で、延期になってたんだね。でももう終わりじゃない? 臣人33点で-半神が4点かあ。いつも通りねえ」

「4点も取れるだけすごいドフ」

「そうーリ。33点で凌ぎ切ったってだけでもすごいーリ」

「じゃあ、チャンネル変えよっと。あっでもこの時間帯じゃあ2時間ドラマも終わっちゃってるねえ。暇ー!」

「あっ、ちょっとお手洗いーリ」

「私も行くリキ!」

「僕はさっき排便済みなのでまだまだ大丈夫でチュウ」

「こらネズニ! いちいちそんな報告しない! これから食事なんだ!」

「申し訳ないでチュウ」

「俺もちょっと席を外すカニ」

「私も行くドフ」

「僕も行くニイ」

「あれーみんなトイレー? ネズニと二人きりになっちゃうじゃん。じゃあ私も行こっと。ネズニは留守番しててねww」

一方フンガーもキッチンで一人作業を開始する。一見夜、空腹で目覚め夜食を作る一人暮らしのおっさんと言った風貌。
だが、表情は職人のそれ。そして包丁を慣れた手つきで洗い始める。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー20分後ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「戻ったわよ今何時―? もうご飯できたー?」

「まだ11時15分でチュウ」
ネズニ男が腹から目覚まし時計の様な物を取り出し時間を知らせる

「わあネズニ! 銅鑼衛門かよ! そんな所から出すな!!」

「時間を聞いて来たからいけないんだピカ」

「アリリちゃん気が早いーリ フフンケン君は料理速いけどこの人数分じゃ流石に無理ーリ」
遅れてメデューリが入ってくる。

「私も戻ったリキ!!」
次々と戻ってくる。

「みんな揃ったみたいね。じゃあそろそろかなあ?」
うずうずうずうずうず

「アリリちゃんはそればっかりでチュウw食い意地が張っているピカ! まだ作っている最中でチュウ。せっかちでピカ」
まあそうだろうな。だが、アリリもムクバアドちゃんに眼球を傷付けられ血が少々出た位で大袈裟なのだ。眼球の怪我は既に治っているし、少し流れた血も食事で元に戻る。
今アリリの体の中で一番心配すべき体の部分と言えば胃腸だと言える。理由はもうアリリは今日既に3回も食事をしている。3回もだ。
朝牛丼屋でママと一緒に食べた牛丼。昼にボケ人間コンテストの控室で7人のライバルと食べたお弁当。そして五鳴館で市田と食べた夕食であるな。こう考えると全ての食事を別々の場所、そして色々な人と一緒に食べているな。あまり大勢に囲まれて食べるのは緊張してしまう私に言わせてもらえれば【すごい】の一言である。
ご存じの方もいるかと思うが、食事を1回すると、消化の為に胃腸に負担を掛ける。それほどに食物を消化する事とはエネルギーを消費する行為なのだ。そして、胃腸が働いている間は色々な悪影響が出る。食事を控え、胃腸を休める事は体調改善に非常に役に立つ事なのだ。

【空腹は病知らず】

という言葉もある位だ。皆食べ過ぎなのだ。通常一日2食、もしくは1食でも良いのだ。朝どうしても腹が減って何か食べたいと思ったら、一杯のみそ汁などを飲んで学校や職場に行けばよい。ただ、

「え? じゃあ飲み物なら何でもいいんじゃ?」 

と、コーンスープやシチュー等の結構カロリー高めのスープに逃げてはいけない。
あなたがもし日本人なら絶対に味噌汁だ! 日本の土地で生まれた食材で作られた物こそが、その国の人間に一番合う物なのだからな。
そして、慣れてくれば朝も何も食べずとも夕食まで凌ぐ事は可能だ。
これは所謂(いわゆる)ファスティングと言うテクニックで、断食を英語に訳したものだ。朝昼休んだのだから夕食を沢山食べればよいが、それを取り返そうと夕食1食をドカ食いしようとしても意外と入らない物なのだ。それを繰り返す事で一日の総合摂取カロリーは自ずと低くなる訳だな。
ファスティングは健康や美容が目的で近年注目されており、色々な方法が紹介されている。断食と言う力強い響きから委縮してしまいそうだが、水や食事を一切摂らずに長時間の絶食を伴うと言う程に厳しい物ではないのだ。そう、1日の間で18時間程何も胃腸に入れないように努める。それを2か月程続けると体の調子が物凄く良くなる。と、言う物だ。慣れるまでは辛いかもしれない。だが、18時間連続で何も入れないにはどうするか? を意識しさえすれば、自ずといつ食えばそれが出来るか? を感覚で分かるようになるだろう。これを繰り返し、胃腸を休める事が重要だ。まあ時々耐えられなくて間食でバナナ等一本程度なら食べても問題ないだろう。健康の為に取り入れるのもよいと思う。
1日3食は、エジソンが自分の発明のトースターを売る為に広めて定着した。それもアメリカでの話。その海外の慣習をわざわざ日本でも取り入れる必要性はないと思うのだが……おっと長々と説教っぽく語ってしまった。申し訳ない……実はこれ、覚えたての知識でな……ついひけらかしたかったのだ。まあこんな鉄面皮の男でも意外にかわいい一面もある。と言う事で納得してくれないか? では話を戻そう。
フンガーは一人で料理を作っている。しかもネズニ男やドフキュラ等のメンバーの分も作っているのだから時間が掛かっても仕方がない……

コンコン
ぬ? 誰かが来たようであるな。

「フンガーフフ」
なんだフンガーか、恐らく食堂に忘れ物をしたのだろうな。うっかり者であるなw

「あらw え? フンガーもう出来たの? サラマソダーより早ーいwもう終わったんだw嬉しいヨヨヨw」

「フガ! フガフガフガ!!! ヤメロアリサフフ!!」
プンスカプンスカ
今まで穏やかな表情をしていたのだが、アリリの口癖で激昂するフンガー。
ほほう、アリリに向かってヤメロアリサと言っている。アリリの荒療治のお陰か? フンガーも少しずつだが確実に日本語を使えるようになってきている? 

「あ、フンガーこれ嫌だったっけwごめんごめんww忘れてたwwそういえばボケ人間コンテスト中もこれで怒ってたっけwでもお陰で日本語も順調に喋れるようになってきてるじゃんwwもう一息だよ頑張れw」(うん、実っていく……もしかしたら……きっと)

「フガフフ……」
怒りも治まってくれたようだ。

「今の何でチュウ? サラマソダー?」

「気にしない気にしない」

「フンガーフフ」
と言いつつ巨大なお盆に大量の皿を載せ器用に運び、テーブルの上に並べる。スープにステーキ、魚のムニエルにパエリアや一回目の食事にも出て来たレタゼラもある。
早いな……もう完成していたのか?

「あら? 良い匂ーい♡怪我は一応治ったけど、あのクソ鳥のいたずらで失った血、料理で回復させないとね」

「何が来るのかなー? 楽しみリキ」

「そうだーリ」

「フンガーフフ」
コト

「まずはスープ? 赤いわ……これは?」

「それはすっぽんの血のスープピカ。色はあれだけど美味しいしパワーも付くでチュウ」

「真ん中に何か肉がある……これはすっぽんの肉かしら?」

「そうだピカ これで完璧でチュウ」

「フンガーフフ」
どうぞと手を前に出すフンガー。

「いい匂い……これは旨そうでピカ」
カチャ すー
そう言うとスプーンで掬い、飲み始めるネズニ男。

「うん、いい味でチュウ! これで血を回復出来るなんて最高でピカ。ほら怖がらず! アリリちゃんも飲むでチュウ!」

「本当? そう……ね。いただきます!」
恐る恐るスプーンで掬う。すると

「ちょっと辛いけど凄く美味しいわ。うおお……力が……そして、☆精力☆が……漲る……」
小学生が精力か……ちと具体的すぎないか? もう少しその……元気とかエネルギーとか別の言葉に言い換える事は出来なかったのか? アリリよ……

「はあ、美味しい♡でもスープだけじゃ足りない……もっと持って来てー」

「フガガガ!!」
コトッコトッ

「手際いいわねえ。乗り物の素質もあるし、料理も出来て、しかも何でも言う事聞いてくれそうだし……便利だわあ。万が一竜牙さんが駄目だったらフンガーも候補に入れておこうかしら?」
フンガーを異性として見てしまうアリリ。精力が回復してしまいムラムラしてしまっているのか? それにしても大人びた考え方も相まって、同世代とは恋愛を出来そうにない幼女である。

「フガ」
コト

「これはガーリックステーキね。この肉質は牛じゃん! 牛肉最高! はーいい匂い」
カチャカチャ、パクリ。

「ああ……これは……おいしい。でもちょっと歯応えがあるね? フンガーこれって焼き加減は何?」 

「フガフフ? ミ、ミデアムフフ」

「へえ……意外ね……フンガー? 私は焦げ目がある位の……そうね、ウェルダン位が好みなのよ? 覚えといてね♡」

「フガフフ!」

「でも美味しいわ♡こんなおいしい物を食べられるなんて……そして、更なる精力が……そして血が……うおおおおおおおおおお」
汗と涙を流すアリリ。

「美味しいカニー、助かるカニー、体力が漲るカニー」
パクパク モリモリ
何故かオオカニ男は片手で両目を覆いながら食事している。その様は異様。
何故なら左手で覆い、右手でナイフで切った後、右手でフォークに持ち替えて口に運ぶ。かなり手間取っているが幸せそうだな。

「あれ? オオカニさんどうしてそんな食べ方してるの? もしかして……余りの旨さで泣いてる?」

「ああ、それもあるけど違うカニ。俺の特徴は見ながら食べてしまうとその料理が好物の動物に変身してしまうんだカニ」

「それであんな姿になったんだ一番初めに見せたあれは何だったの? ゴキになってたけど」

「ああ、あれはホウ酸団子だカニ。だからあんな姿に……ゴキブリ対策で置いていた物をアリリちゃん勝手に見せてくるんだから参っちゃうカニ。
だから絶対に見ないようにして食べなくてはならないカニ」

「へえ、あれは玩具の一部じゃなくて害虫対策だったんだねwじゃあ頑張って完食してね♡はあ、食った食った。食い過ぎてくたくたよ……くたくたの語源って食った食ったなのかもしれないわね」
それは半分外れで半分正解だ。くたくたは草臥れるという言葉から来ていて、意味は草に臥せるという所から来ている。
しかし、実際胃腸はこれから大仕事に入る訳だ。無暗やたら咀嚼も適当なままに放り込んだ食べ物を、寝ている間もずっと消化するという大仕事に、な……そう、これからくたくたになる訳だ。

「相変わらず美味しかったリキ♡ご馳走様リキ!」
リキュバスは小食なようだ。

「もうお腹いっぱいなの? まだまだ出て来るってのに」

「このくびれを維持するには大変なんだリキ!!!!!!!」

「そうか! 腹八分だね。でも料理上手よねーフンガーは一家に一台ほしいわw」

「クエフフ」
コト コト コト……
全員の前に皿を置くフンガー。

「あっ! やったニイ」
パクパク

「え? これ大好きリキ!!! まだ戦いは終わっていなかったんだリキ!!!!」
パクパク

「やったーリ!」
パクパク

「うむ、これは嬉しいドフ」
パクパク
皆置かれた料理に目を輝かし食べ始める。リキュバスは口を拭き終えた直後にまたがっついている。全く……お転婆な娘である。

「何これ? 見た事あるけど」

「ゼラレ……レタゼラフフ。クエフフ」
レタゼラと呼ばれる料理を見るや否や皆夢中で食べている。
皆さんフンガーの変化に気付いたであろうか? 少々の言い間違いをしてはいるが、フガしか言えなかった彼が日本語混じりで話せるようになって来ているな。ゆっくりではあるが確実に成長して来ている。カラムーチョラグーンのトラウマから徐々に快方に向かっているのだ。

「ああレタゼラね! さっきも食べたけど……食後にサラダかあ。普通一番目に野菜な気もするけど……でもこれ好き♡宇宙一好きかも! しかしフンガーもやるようになったねえ。食えって言えたじゃん。どんどん実っていく……」
シャキシャキプルンプルン

「俺だって好きだカニ。だけど味は分かるけど一度も見た事ないんだカニ……」

「そっか……見たらこのレタゼラが一番好きな生物に変身しちゃうんだっけ?」

「そうカニ。多分芋虫辺りに変身して誰かに踏みつぶされる未来に震えているカニ」

「変な体質ねえ……でも美味しかった♡ はーお腹一杯♡♡仕事も終わったし寝ようかしら?」

「美味しかったピカ! 僕も眠くなってきたでチュウ」

「沢山食べて、HP・MP状態異常が完全回復したカニ!」

「フフンケンさん! ありがとうリキ!」
皆笑顔になり、少し確執のあったと思われるアリリとネズニの仲も改善した様にも見える。なんだかんだ言っても食事は楽しいのだな。
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