第92話 認知症なのか霊感なのか
文字数 1,448文字
一月に友人たちと新年会を行ないました。
話はだいたい、近況、昔話、噂話、ドラマの話。
とあるファストフード店のパートをしている友人Aがいて、毎回「客層が悪い」という愚痴の勢いがとまりません。私たちはその話のヘビーリスナーです。
ぼそぼそ喋って聞き取れない兄ちゃん、高飛車な姉ちゃん、塩コショウ抜きのオーダーをする面倒くさい姉ちゃん、自分勝手な高齢者たち、お誕生月特典を一年中使おうとするオバサン、何に使うのかわからないけど無料の紙袋をたくさん要求するお婆さんの話とか、乞食速報を聞いているみたい。時給が安い分、Aの怒りが収まりません。
そこに今回は、年末にそれぞれが罹患した感染症と、親と老犬の介護の話が加わりました。
メンバーの一人に、持病により仕事を辞めた友人Bがいます。
同居している母親の物忘れがひどく、認知症傾向にあると暗い顔で言いました。彼女が話してくれた母親の認知症エピソードで驚いたのが、
・普段デジタル時計ばかり使っていたためか、長針と短針のあるアナログ時計では時間がわからなくなってしまっていた。
・年賀状を書かせたところ、宛名面の自分の住所名前を書く左下欄に、「あけましておめでとうございます」と文章を書き出してしまった。
ああ、そんなことになってしまうのか……怖い。
私も年取って認知症になってしまったらどうしよう。支離滅裂で妄想垂れ流しのような毒電波文章を迷いもせず投稿してしまったら。「実験作」と「ほんまもん」って、区別つきますよね。
高齢化が進んで、ユーザーの文章が変異する可能性……あると思う。
話を戻して。
控え目だけど芯があり真面目なBが訥々 と話します。
「お母さんはすごくきちんとしていた人だったから、ショックなんだよね。どうしても気になって細かく言ってしまうの。イライラする自分も嫌になって落ち込むんだ」
ずっと一緒にいるとなおさらですね。最後に「話したら楽になった、ありがとう」と表情をゆるめてくれました。
認知症といえば、と。
『電波観測所』でも書いた、私の母親の幻覚エピソードを披露しました。
【母の語りダイジェスト】
町内の親しくしていた〇〇さんの旦那さんが亡くなった。
それからというもの、家の中で薄暗い階段や廊下を行き来するときに、大きな黒い影が背後についてくるようになった。その背丈が亡くなった旦那さんにそっくり。
〇〇さんが遺骨を押し入れに入れたままにしているから、そのせいで成仏できずにさまよって、私に訴えかけにきているのだ。
気になるので、友人を通じて霊能者に相談した。
「朝、仏壇にお線香をあげるとき、いつもの数に一本プラスしてください、それだけで大丈夫です。二週間くらいで消えます」
との回答だった。
さっそく、いつもお線香は三本あげていたので、四本あげるようにした。すると、二週間たたないうちに黒い影は消えた。
というもの。
「そう言いだしたときがあったんだよね、黒い影が見えるなんて、認知症の一種かなと思ってさ」
するとスピリチュアル好きな友人BとCとDは、
「それは認知症じゃなくて心霊現象だよ、そういうことってあるもん」
「お母さんは霊感強いんじゃない?」
「だから霊から頼られたんだよ」
そして、お線香を一本余分にあげるという具体的なアドバイスに感心していました。
……思い返してみれば、母は昔から霊感的なものがあったかもしれません。単なる思い込みがほとんどだとは思うけど。
三十年以上前のとあるエピソードを思い出しました。今までずっと忘れていたのに。
次回へ。
話はだいたい、近況、昔話、噂話、ドラマの話。
とあるファストフード店のパートをしている友人Aがいて、毎回「客層が悪い」という愚痴の勢いがとまりません。私たちはその話のヘビーリスナーです。
ぼそぼそ喋って聞き取れない兄ちゃん、高飛車な姉ちゃん、塩コショウ抜きのオーダーをする面倒くさい姉ちゃん、自分勝手な高齢者たち、お誕生月特典を一年中使おうとするオバサン、何に使うのかわからないけど無料の紙袋をたくさん要求するお婆さんの話とか、乞食速報を聞いているみたい。時給が安い分、Aの怒りが収まりません。
そこに今回は、年末にそれぞれが罹患した感染症と、親と老犬の介護の話が加わりました。
メンバーの一人に、持病により仕事を辞めた友人Bがいます。
同居している母親の物忘れがひどく、認知症傾向にあると暗い顔で言いました。彼女が話してくれた母親の認知症エピソードで驚いたのが、
・普段デジタル時計ばかり使っていたためか、長針と短針のあるアナログ時計では時間がわからなくなってしまっていた。
・年賀状を書かせたところ、宛名面の自分の住所名前を書く左下欄に、「あけましておめでとうございます」と文章を書き出してしまった。
ああ、そんなことになってしまうのか……怖い。
私も年取って認知症になってしまったらどうしよう。支離滅裂で妄想垂れ流しのような毒電波文章を迷いもせず投稿してしまったら。「実験作」と「ほんまもん」って、区別つきますよね。
高齢化が進んで、ユーザーの文章が変異する可能性……あると思う。
話を戻して。
控え目だけど芯があり真面目なBが
「お母さんはすごくきちんとしていた人だったから、ショックなんだよね。どうしても気になって細かく言ってしまうの。イライラする自分も嫌になって落ち込むんだ」
ずっと一緒にいるとなおさらですね。最後に「話したら楽になった、ありがとう」と表情をゆるめてくれました。
認知症といえば、と。
『電波観測所』でも書いた、私の母親の幻覚エピソードを披露しました。
【母の語りダイジェスト】
町内の親しくしていた〇〇さんの旦那さんが亡くなった。
それからというもの、家の中で薄暗い階段や廊下を行き来するときに、大きな黒い影が背後についてくるようになった。その背丈が亡くなった旦那さんにそっくり。
〇〇さんが遺骨を押し入れに入れたままにしているから、そのせいで成仏できずにさまよって、私に訴えかけにきているのだ。
気になるので、友人を通じて霊能者に相談した。
「朝、仏壇にお線香をあげるとき、いつもの数に一本プラスしてください、それだけで大丈夫です。二週間くらいで消えます」
との回答だった。
さっそく、いつもお線香は三本あげていたので、四本あげるようにした。すると、二週間たたないうちに黒い影は消えた。
というもの。
「そう言いだしたときがあったんだよね、黒い影が見えるなんて、認知症の一種かなと思ってさ」
するとスピリチュアル好きな友人BとCとDは、
「それは認知症じゃなくて心霊現象だよ、そういうことってあるもん」
「お母さんは霊感強いんじゃない?」
「だから霊から頼られたんだよ」
そして、お線香を一本余分にあげるという具体的なアドバイスに感心していました。
……思い返してみれば、母は昔から霊感的なものがあったかもしれません。単なる思い込みがほとんどだとは思うけど。
三十年以上前のとあるエピソードを思い出しました。今までずっと忘れていたのに。
次回へ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)
(ログインが必要です)