第11話 あなたの物語と通勤路の面々

文字数 592文字

 あなたの人生の物語は、生まれ落ちた時からすでに決まっている。
選択肢などはないのだ。

(本棚の『あなたの人生の物語』(テッド・チャン)が目についたから)
(念のため、こんな文章は出てきません)
(よく覚えていないけど)

***


 そういえば、芦田愛菜さんがいいこと言っていたんだよね。
愛菜ちゃんは小さい頃から敬意を表して「さん」付け。

「自分に人生の最終決定権があると思ってしまうと、うまくいかなかったとき自分を責めてつらくなってしまう」

結果は決まっていて、自分はそこへ行くための方法を選んだだけ

「そう思えれば納得できるのかなと思います」

 芦田愛菜先輩、いや、先生だよね。お美しい上に賢すぎじゃない? 
そう考えれば、後悔したり、くだを巻いたりの心の漏電をしなくて済みそうだもんね。


***


 最近傘女(かさおんな)を見ない。
隣接異次元と交信する、傘女の話はどこかで書いたな。

 経年劣化した青い折りたたみ傘が目印。
おそらくあれが受信器で、唇から高速モールス信号を吐き応答している。

 裁判所の前で、部活帰りの女子高生自転車集団の波にのまれ、強張(こわば)っているのを見たのが最後だった。


 代わりと言ってはなんだが、タイタニック老婆を見かけるようになった。
ビジネス専門学校近くの交差点、街路灯にもたれて両手を広げている。
夕暮れ時に鈍く光る、黄色い反射タスキが目印。
信号待ちで目が合うと、ほんのり恥じらいの表情を浮かべてくれる。





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