第48話 わりと古典が好き(枕草子)

文字数 947文字

 前回に引き続き古典の雑談。
紫式部が自分の日記で、ガチ目の悪口を言っている相手が清少納言。

 その清少納言の『枕草子』を教科書で読んだ頃は、「清少納言の自慢話?」と思いました。
いや、それが違ったんですよね。
 清少納言と中宮定子さま(一条天皇のお后さま)の信頼関係と政治的背景がわかってくると、ぜんぜん違って見えてくる。


 清少納言は二十八歳のとき、十七歳の中宮定子さまにお仕えすることになり、約七年ほど宮中でお勤めをしました。
二人が出会って一年半ほどで、定子さまは政治的な後ろ盾を失ってしまい、凋落(ちょうらく)の一途をたどることに。そして定子さまは二十四歳の若さでお亡くなりになってしまう。

 清少納言も定子さまも長く失意のうちにあったのに、枕草子はそれを微塵も感じさせない。あんなに瑞々しくキラキラしている。
出逢って一年半の頃の、定子さまの全盛期だけを描いているのです。

「私の定子さまはこんなに美しく聡明なのよ、こんなにお優しいの、私たちはこんな風に機知に富んだ会話をしたわ、私は特別に目をかけてもらったの、そして定子さまのサロンはこんなにも明るく華やいで素敵なのよ!」

 そんな風に。定子さまの凋落を無かったことにするかのように。

 時系列的に、定子さまは、枕草子をさわりの部分しか読んでいないのかもしれない。

 定子さまが亡くなったあとも、「魅力あふれる定子さまと、そのサロン」を綴り続けた清少納言。もしかしたら政治的な理由があったのかもしれないけど、定子さまへのリスペクトと私は信じたい。
清少納言のその健気さ、沁みるなあ。


 それからこれは完全な私の憶測というか、こうあって欲しいという妄想なんだけど……
清少納言のあの独特で斬新な文章は、定子さまのお墨付きをいただいて磨かれたんじゃないかな。
定子さまが「いいわね、素敵よ、続きをお願い」とお褒めになられて、だからあんなにも自信を持って、自由闊達に表現することができたんじゃないかな。

 定子さまは清少納言より十ほど年下なのに、清少納言に対しお姉さんのような優しさと包容力を発揮されるんですよね。
(宮仕えをしたばかりで恥ずかしさで下を向く清少納言に対し、定子さまが絵を見せながら優しく話しかけてあげたエピソード好き)

 そんな平安時代のブログが、未だ新鮮に胸に響く……






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