F男に付ける薬  2

文字数 915文字

 ふう。危機一髪。
 あぶね~。と思っていたら、停まった車からおっちゃんが出て来て、すごい勢いでF男を怒鳴った。
「馬鹿野郎!! お前はガキか! 大人の癖に飛び出しなんかしやがって」
 F男は冷や汗をかきながら平謝りだった。
「済みません。済みません。本当に申し訳が有りません」
 何度も頭を下げた。
 説教はループ状に続き、F男はこりゃ、完璧会社に遅刻だなって思った。
 おっちゃんがぷんぷんと怒りながら去って行く。
 やっと車が動き出した

 去って行く車を眺めて、F男はスマホを取り出した。
「済みません。ちょっと車にはねられそうになって・・・、いや、怪我はしていないのですが、その運転手と話をしていて・・・いいえ、向こうが前方不注意だったんですよ。ホント困りますよね。怪我は無いから謝ってもらっただけです。・・・良いって言っているのに、しつこく謝ってくれていて・・・はあ。そんな訳で少し遅れます。いや、まだ駅の前です。これから電車に乗ります。・・・・はい。申し訳が有りません」
 F男はそんな風に上司に説明をした。


「あーヤバかった。マジでヤバかった。危ない。危ない。気を付けないとな。事故になったりしたら、物語が書けなくなる」

 F男は暫し考える。 

「・・・そうか・・・・突然車にはねられて、そのドライバーと被害者でラブストーリーが始まるとか、そういう物語はどうだろうか・・・? この場合、ドライバーは男がいいだろうか? それとも女か? いや、たまにはBLで行くか。・・・・被害者が意識不明になるとか・・・? ハッピーエンドがいいか・・・・いや、切ない悲恋物語にするかな。・・・そうだ。はねた相手がたまたま宇宙人だったというのはどうだろうか・・・? 
宇宙人とのラブストーリーかあ・・・うーん。これは難しい。難し過ぎる・・・なんてハイレベルなストーリーなんだ・・・」

 電話を入れたから会社に急ぐ必要も無い。
 F男は宇宙人とイケメン青年の恋愛話(BL)を考えながらゆっくりと歩いた。

ん⁇
そもそも、宇宙人に性別はあるのだろうか?
どちらかと言うとそれはラブストーリーと言うより寧ろホラーに近いのでは?
等々。
そしてF男は電車を乗り過ごすのだった。

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