めっちゃ諦めが悪い 2 ~倉庫

文字数 1,150文字

白茶けた土の上を走る。日差しが強い。


目の前に木造の倉庫らしき物が見えた。
私達はそこを目指す。
誰が追って来ているのか分からない。
黒い服を着た奴らだけが数人見えた。

祥が叫んだ。
「走れ!」
夢中で走った。

「ナツ。早く!」
祥が銃を取り出した。
私の手にはナイフがある。

祥が後ろを振り向いて銃を撃つ。
「先に行け」
祥が怒鳴る。
私は頷く。

祥が追い付く。私の腕を掴んで顔を寄せる。
「ナツ。あの場所に隠れろ。奴らを始末したら呼びに行く」
私はがくがくと頷く。
「行け」
祥が私を突き放した。

ばらばらと追手の足音が近付く。
「祥」
私は叫ぶ。
「早く行け」
「死んじゃ嫌だ」
「大丈夫だ。早く」
私は走り出す。

ぽっかりと空いた公園みたいな空間を倉庫まで走る。
遮るものは何もない。
乾燥した土の上を自分の影だけが付いて来る。


倉庫の裏側の柱の陰に身を隠す。
心臓がばくばく言っている。
息を殺して壁に体を押し付ける。
ぐうっと息を吸い込み一瞬停めてそれをゆっくりと吐く。
音がしない様に。少しずつ、静かに。静かに。

ここに居て大丈夫だろうか。見付からないだろうか。
誰かの足音がする。
向こうから見えない様に身を縮める。うんと壁にくっ付く。
銃声が聞こえた。私は「はっ」とする。
祥は大丈夫だろうか。

駄目だ。ここじゃ駄目だ。

私は倉庫の壁に沿って移動する。
どこか中に隠れないと。早く隠れないと。
ドアがどこかに・・私は窓を見付ける。床の所に小さな窓がある。
鍵は掛かっていない。だが小さ過ぎてこれじゃ無理・・頭と肩が入れば・・どうしよう。
私はそこを諦めて前に進む。

ドアだ。ドアがあった。ドアには古い南京錠が付いていた。
何かの封印がドアに貼ってある。丁度ドアと壁に跨る様に。開けてはいけないという事なのだろう。
だが、そこしか逃げる場所はない。
私は封印を破った。

南京錠の付いた留め金は古くてドアの隙間にナイフを入れて、梃子みたいに動かせば留め金が緩んで外れそうだった。私はナイフの根元の部分まで隙間に差し込み、腕に全体重を掛けて取っ手を押した。ぎしぎしとドアがきしむ。
男の声がする。裏に回れと言っている。
私はドアに体を寄せる。
どうする?どうする?逃げるか。ここを諦めるか?
もう少しなのに。
私は壁沿いに隠れる場所を探す。柱しかない。柱じゃ駄目だ。
私は足を踏み込んだ。
早く。早く開いて。
留め金が外れた。外れた留め金を持ったまま私はドアの内側に滑り込んだ。

中はガランとしている。倉庫なのに何もない。
これじゃ隠れる場所が・・。
ドアを抑えながらそこで外を伺う。足音が近づいて来る。私は屈んでドアの下に挟むものを探す。布でもいい。新聞紙でも。何か、何か・・。
足音が近付く。私は覚悟を決めてドアを抑えたままナイフを構える。心臓の音が大きく響く。息を殺して表を伺う。足音がドアの前で止まった。

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