第20話 カール大公の策略

文字数 1,858文字


1796年。ライン河畔・ドイツでの戦いに、オーストリアのカール大公が投入される。



ブログ「カール大公1」

麗しい……。

白馬の王子って、実在したのね……。

あ。

96年のドイツ戦の話はしないから。

えっ! なんで?!
だって俺、戦線を離脱していたし?

95年(前年)に捕虜になってさ。ヴルムザーの温情で解放されたけど、さすがにすぐに、戦場にもどるわけにはいかなくて。

また、ラヴィエールの実家に帰ってた。



19話「マンハイム陥落」

でも、カール大公……。イケメン王子……。
うるさいな。

これで我慢しろ。ドゥゼ将軍も、ちょびっと出てるし。

「三帝激突」10話「ライン防衛」


あと、イケメンドゥゼ将軍だろ! やることが! 顔は、俺の方が断然上だけど!

サーヴィスで、彼の肖像画を上げといてやる。






【96年の戦いの概略】


フランスの総裁カルノーは、ライン川に沿って、北軍中央軍、そしてイタリア方面(南軍)の3方向から、ウィーンに攻め入る計画を立てた。





●北軍

 ジュールダン麾下サンブル=エ=ムーズ軍**



10話「フランス革命戦争3」12話「ライン右岸へ」、参照

**94.6.29 モーゼル軍左翼(旧オッシュ軍)、北軍右翼、アルデンヌ軍が合併




●中央軍

 モロー麾下ライン・モーゼル軍**



*政治家になったピシュグリュ(五百人会議員:18話「マンハイム籠城」参照)の後任。オランダ戦では、ピシュグリュの元で戦っていた。

ブログ「モロー」

**95.4.20 ライン軍とモーゼル軍が合併




●南軍

 ボナパルト麾下イタリア軍



*ケレルマン(ブログ「ケレルマン(父)」9話「フランス革命戦争2」、参照)の後任。1795年、ヴァンデミエールの乱の鎮圧で総裁バラスの副官を努めている

ナポレオンのイタリア遠征は有名だし、私の守備範囲外なので(ナポレオン、嫌いだし?)、ここでは、ドイツ方面の動きを簡単にご説明します。



サンブル=エ=ムーズ軍

5月31日夜。クレベール師団、デュッセルドルフのライン河橋頭保を出発。



ライン・モーゼル軍

マンハイムにおいて、ぎりぎりまで敵を牽制後(その間、軍は密かにストラスブールに集結)、6月24日午前2時、ストラスブールより渡河。油断していた敵から、ケール要塞をたやすく奪う。



マンハイム滞在を見せつけ、オーストリア将校を欺いていたのは、俺のドゥゼ将軍 なんだ。彼は、22日夕暮れまでマンハイムでオーストリア将校と面談してから、夜通し馬に乗ってストラスブールへ帰着、翌23日は軍の点検整備に費やし、日付が変わった24日深夜2時に、ライン河渡河を決行した。


どうだ。すごいだろ。

すごいスタミナですね! オーストリアの  ロートル  ベテラン元帥たちには、とてもじゃないけど、無理そう……。


ここですよね! ドゥゼが隠し子を仕込める可能性があったのは。

馬鹿者! 


今、その話をするな! つか、隠し子疑惑は冤罪だ! ドゥゼ将軍は、危うくダマされるところだったんだ!


(ぶつぶつ)

大体、徹夜で帰ってきて、翌日、軍務の合間か、夜、出陣までのほんの数時間で、仮眠もろくに取らずに出陣、しかも手柄を上げたことになるんだぞ? もし万が一、隠し子疑惑が真実だとしたら、それはそれで、俺はドゥゼ将軍を尊敬……ごほん!

詳細及び、後世の研究者たちの考察は、小説に反映されてます。



小説「負けないダヴーの作り方」




下は、ライン・モーゼル軍の出撃の様子。ストラスブールから出撃して、オーストリア軍を奇襲、対岸のケール要塞を、たやすく奪った。



※この後、ライン・モーゼル軍は、東へ進むが、ケールには、駐屯軍が留まった。オーストリア軍は、何度かケールを奪い返そうとしたが、フランスの駐屯軍はここを守り抜く。




ジュールダン北軍(サンブル=エ=ムーズ軍)と、モロー中央軍(ライン・モーゼル軍)は、連携を取りながら進んだ。


が、カール大公の策略にはまり、モロー軍は、ドナウ河を越えてしまう。両軍は、ドイツの奥地で、連絡が取れなくなってしまった。



すっかり連携が絶たれたところで、カール大公軍により、まずジュールダン軍がライン左岸(西側)に追い返される。



サンブル=エ=ムーズ軍の撤退戦では、マルソーが銃撃されました。

カール大公は彼に医者を送り、手当の甲斐なく彼が亡くなった時は、涙したといいます。



6話「西部地方派遣」 15話「ルクセンブルク、マインツ、マンハイム」、参照 

 ブログ「フランソワ・セブラン・マルソー」

そうだ。

マルソーは、そういう男だった。

敵でさえ、好きにならずにいられない……。

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登場人物紹介

ルイ=ニコラ・ダヴー

Louis-Nicolas Davout

1770.5.10 - 1823.6.1


主役は、オレだ!


(後のナポレオン時代、”鉄の元帥”の異名を取る。無敗を喧伝される一方で、偏屈とも噂される。ここでは、彼が若く、ナイーヴだった頃を扱います)

小説「負けないダヴーの作り方」

ルイ・シャルル・アントワーヌ・ドゥゼ

Louis Charles Antoine Desaix de Veygoux

1768.8.17 - 1800.6.14


ライン軍将校。俺の憧れの人♡

注)本作及び、小説「負けないダヴーの作り方」は、BLではありません

ブログ「ドゼー1」 ~

サヴァリ

Anne Jean Marie René Savary

1774.4.26-1833.6.2


俺を差し置き、ドゥゼ将軍の副官になりやがった邪魔なやつ。こいつ、童てi じゃないかと、俺は密かに疑ってるんだが、 こんな世間知らずが、ドゥゼ将軍の副官になっていいものか!!

ラップ

Jean Rapp 

1771.4.27 - 1821.11.8


こいつも、ドゥゼ将軍の副官になりやがって。勇気だけが取り柄の、とにかくクソ生意気な男



ラップ目線の2000字小説が、こちらに「勝利か死か Vaincre ou mourir

ブログ「ラップ」

アンベール

General Jean Jacques Ambert

1765.9.30 - 1851.11.20


俺の上官。俺の軍服に、鼻水をなすりつけて感涙にむせぶ癖がある

作者

※このページは、ダヴーにのっとられました……

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