第23話 ディアースハイム出撃

文字数 2,060文字



97年。戦闘のシーズンが始まった。

前年に引き続き、

サンブル=エ=ムーズ軍

及び、

ライン・モーゼル軍

は、ライン河右岸(東側)へ渡河、ドイツ方面への進出を目指す。



そして、成功を収めているイタリア軍と合流し、敵国オーストリアの首都、ウィーン攻略へ……。



まずは、サンブル=エ=ムーズ軍の動向を、簡単にお話ししておきましょう。



前年、ライン・モーゼル軍を置き去りに、カール大公に追い散らされた、サンブル=エ=ムーズ軍*では、ジュールダンが辞任、代わりに、オッシュ将軍**が、再び、指揮官となった。

20話「カール大公の策略」、参照

**11話「ライン方面軍」、参照



4月中旬。サンブル=エ=ムーズ軍左翼は、デュッセルドルフの橋頭保から南東へ進軍(17日)、また、主力のオッシュ軍も、ノイヴィートで渡河(18日)、この辺りにいたオーストリア軍を、フランクフルトまで追いやった。



続いて、おまたせしました!

ドゥゼ将軍やダヴーらの、ライン・モーゼル軍の活躍です!


まずは、戦闘に入る前の、春の様子を、ダヴー様に語って頂きましょう。

この年の春、ライン・モーゼル軍の司令官、モローは、パリへ行っていた。モローが留守の間、ドゥゼ将軍が、臨時の司令官を務めていたんだ(えへん)。

ちなみにその前年(96年)、ピシュグリュが辞任した後、モローが着任する前も、ドゥゼが、臨時の司令官を務めています。人望があったんですね、ドゥゼ将軍。
だから、モローは、すっかりドゥゼ将軍を頼っていてな。この時も、ドゥゼ将軍に言われて、こっそりと、ただし、「雷のように早く」ストラスブールへ帰ってきた。


ラインモーゼル軍は、3つに分かれていた。


右翼

 デュフォール将軍麾下

 デュフォール師団の他、フェリノ師団

 ライン河上流ユナングより出陣


中央軍

 ドゥゼ将軍麾下

 ストラスブールより出陣


左翼

 サン=シル将軍麾下

 サン=シュザンヌ師団、アンベール師団

 ※左翼は、一時的にマンハイムとマインツの封鎖を肩代わりし、ここにいた友軍をライン右岸で自由に動けるようにしていた。その後、兵の一部を残して左岸(東側)に戻り、ライン河流域付近を離れていた(サン=シル自身は、Zweibrücken付近にいたか)。

 97年の戦闘が始まると、ライン河上流(ストラスブール方面)へ向かって進軍開始


ダヴー様は、ドゥゼ将軍麾下中央軍にいらしたんですね?

あれ?

それまでは所属していらしたアンベール師団は、左翼ですが?

鈍いねえ、お前。


ドゥゼ将軍 が、俺を手元に置きたがったからに決まってるだろ❤


俺の 献身 が、ようやく彼に伝わったんだ!



*詳細不明。なお、フェリノ師団に所属していたサヴァリ(後にドゥゼの副官になる)が左翼にいたのか、ドゥゼの中央軍にいたのかも不明

はあ……。


ストラスブールのドゥゼ師団は、今回は、キルステット*から、対岸のディアースハイムへ渡ったんですね。


*ストラスブールから、十数キロ北。

そうだ。

3ヶ月前、俺達は、ストラスブールの対岸、ケールを奪われている。当然、オーストリアは、ケールに兵を集結させ、ディアースハイムは、比較的手薄だと判断したんだ。ドゥゼ将軍が。



22話「ケール撤退」、参照

ライン・モーゼル軍の司令官、モローではなく?
ドゥゼ将軍だ。
いよいよ戦闘です。

相方のサンブル=エ=ムーズ軍の主力部隊が、ノイヴィートで渡河した、2日後。


ライン・モーゼル軍の作戦は、敵に気取られないことに重点が置かれていた。


4月20日。未明のうちに、彼らは、ディアースハイムに渡河する予定だった。


しかし、ライン河の水位は低く、兵士らを運ぶ船は、途中で座礁してしまう。


座礁した船を、モロー、ドゥゼ将軍ら、将校達*が河に入って、流れに押し戻したんだ。もちろん、俺もな!



*Reynier、Lecourbe、Yandanmoie、Duhesm


オールが流され、集めるのに時間がかかった。夜はすでに明けかけていた。これでは、河を渡る様子が、敵から丸見えである。


けれど、ドゥゼ将軍は決断したんだ。延期はなし。急襲が何より大事だ、と。


こうして、対岸からの敵の砲撃の下、フランスの船団は、ディアースハイムに向けて、船を進めた。


真っ先に上陸したのは、デュエズム師団だった。


ところが、デュエズムは、右腕を銃弾で撃たれてしまう。


右腕を撃たれたデュエズムは、鼓笛隊の太鼓を奪い、剣の柄で叩き始めた。師団長が撃たれたんだ。怯えて崩れかけていた兵士どもは、はっとした。そのまま部下を鼓舞しつつ、彼は、敵に突っ込んでいった。


ディアースハイムの岸辺には、ドゥゼ師団はじめ、フランス軍が、続々と上陸し始めた。


一方のオーストリア軍は、早急にケリをつけようとした。近くのオノー駐屯地から、増援隊を呼び出した。


俺とドゥゼ将軍は、敵を押し戻し、堤防を奪取した。


午前11時。

ドゥゼが、太ももを撃たれる。


撃たれた時、彼が叫んだ言葉は、史実通りです。

なんとも、高潔というか、ここまでくると、人間離れしているというか……。



「カクヨム」25話「最後の命令」

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登場人物紹介

ルイ=ニコラ・ダヴー

Louis-Nicolas Davout

1770.5.10 - 1823.6.1


主役は、オレだ!


(後のナポレオン時代、”鉄の元帥”の異名を取る。無敗を喧伝される一方で、偏屈とも噂される。ここでは、彼が若く、ナイーヴだった頃を扱います)

小説「負けないダヴーの作り方」

ルイ・シャルル・アントワーヌ・ドゥゼ

Louis Charles Antoine Desaix de Veygoux

1768.8.17 - 1800.6.14


ライン軍将校。俺の憧れの人♡

注)本作及び、小説「負けないダヴーの作り方」は、BLではありません

ブログ「ドゼー1」 ~

サヴァリ

Anne Jean Marie René Savary

1774.4.26-1833.6.2


俺を差し置き、ドゥゼ将軍の副官になりやがった邪魔なやつ。こいつ、童てi じゃないかと、俺は密かに疑ってるんだが、 こんな世間知らずが、ドゥゼ将軍の副官になっていいものか!!

ラップ

Jean Rapp 

1771.4.27 - 1821.11.8


こいつも、ドゥゼ将軍の副官になりやがって。勇気だけが取り柄の、とにかくクソ生意気な男



ラップ目線の2000字小説が、こちらに「勝利か死か Vaincre ou mourir

ブログ「ラップ」

アンベール

General Jean Jacques Ambert

1765.9.30 - 1851.11.20


俺の上官。俺の軍服に、鼻水をなすりつけて感涙にむせぶ癖がある

作者

※このページは、ダヴーにのっとられました……

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