第14話 上アルザスにて

文字数 1,224文字


オランダで印象的な勝利を収めたピシュグリュの目には、ライン・モーゼル軍は、いかにも貧弱で、貧乏くさく映った。武器など、政府からの補給も北方軍よりずっと少なく、勝算は見込めなかった。また、人的な資源にも乏しく思われた。



10話「フランス革命戦争3」、参照


失礼な話だよな!

俺のドゼ将軍 がいたのに!


あ。俺はまだ、ライン・モーゼル軍にはいなかったぞ。


密かに、ピシュグリュは、オーストリア、そして、エミグレ(亡命貴族)軍と連絡を取り始めた……。


当時、ピシュグリュは、スイスのバーゼルの司令官を経由して、オーストリアと連絡をとりあっていたんだ。この手紙をせっせと運んでいたのが、サヴァリ。後に、ドゼ将軍の副官になるやつだ。


もっとも、彼は何も知らなかったがね。途中で死んだ場合のスペアまで立てられていたというのに、呑気なことだ。


春になるまで、ドゥゼは、マインツ包囲陣の中にいた。

新司令官ピシュグリュは、彼に、ブリザッハからバーゼルの間の上アルザスの守備を任せた。ドゥゼには、5個師団と、5万人の兵士からなる軍団が任された。



この辺りで、オーストリアの元帥ヴルムザーが、ライン渡河を計画していた……。


ストラスブール出身のヴルムザー元帥は、元、フランスの王の部隊の騎兵だった。そういうわけで、ヴルムザー元帥の下には、コンデ将軍配下の、エミグレ(亡命貴族)が、たくさんいた。



*王族。亡命して革命政府に対抗、亡命貴族軍を率い、諸外国に援助を求めた

 ブログ「フランス革命からナポレオンの台頭へ1」



エミグレ達には、ヴァンデの王党派に加わろうという目論見があった。国に財産を残し(政府に没収された)、身一つで国を出た彼らは、武器に乏しく、ゲリラ戦のように、革命軍を襲った。それは、同じフランス人同士の戦いだった。


これに、オーストリアの傭兵たちが加わり、ライン河の西側に攻め入ろうとする。



それで、アレだよな。

ラップが怪我をしたんだ。ドゥゼ将軍に心配かけてよ。全くあいつも、怪我の多い男だよな。



*のちのドゥゼの副官


革命歴Ⅲ年フレクチュール30日(1795.9.16)の日付で、ドゥゼは、ラップが勇敢な兵士であることを証言し、もしこの怪我により(腕の怪我だった)、戦闘が不可能になった場合は、必ず、名誉ある地位につけるよう、書状を書いている。



2000字短編「勝利か死か Vaincre ou Mourir」

後にラップは手記を書き、その冒頭で、この書状を掲げ、「兵士が得た最も喜ばしい証明」としています。彼がドゥゼのことに触れたのは、この冒頭部分だけです。



ブログ「ラップ」



ドゥゼの軍を上アルザスに残し、ピシュグリュ麾下ライン・モーゼル軍は、北進を始めた。9月20日、マンハイムを無血で陥落させ、ここから、ライン河を渡河した。



それに先立ち、9月6日、ジュールダンのサンブル=エ=ムーズ軍も、ライン渡河に成功、デュッセルドルフを占領した。



12話「95年ライン右岸へ」、参照

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登場人物紹介

ルイ=ニコラ・ダヴー

Louis-Nicolas Davout

1770.5.10 - 1823.6.1


主役は、オレだ!


(後のナポレオン時代、”鉄の元帥”の異名を取る。無敗を喧伝される一方で、偏屈とも噂される。ここでは、彼が若く、ナイーヴだった頃を扱います)

小説「負けないダヴーの作り方」

ルイ・シャルル・アントワーヌ・ドゥゼ

Louis Charles Antoine Desaix de Veygoux

1768.8.17 - 1800.6.14


ライン軍将校。俺の憧れの人♡

注)本作及び、小説「負けないダヴーの作り方」は、BLではありません

ブログ「ドゼー1」 ~

サヴァリ

Anne Jean Marie René Savary

1774.4.26-1833.6.2


俺を差し置き、ドゥゼ将軍の副官になりやがった邪魔なやつ。こいつ、童てi じゃないかと、俺は密かに疑ってるんだが、 こんな世間知らずが、ドゥゼ将軍の副官になっていいものか!!

ラップ

Jean Rapp 

1771.4.27 - 1821.11.8


こいつも、ドゥゼ将軍の副官になりやがって。勇気だけが取り柄の、とにかくクソ生意気な男



ラップ目線の2000字小説が、こちらに「勝利か死か Vaincre ou mourir

ブログ「ラップ」

アンベール

General Jean Jacques Ambert

1765.9.30 - 1851.11.20


俺の上官。俺の軍服に、鼻水をなすりつけて感涙にむせぶ癖がある

作者

※このページは、ダヴーにのっとられました……

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