第9話 フランス革命戦争2

文字数 1,536文字

しかし、ヴェルダンの陥落から1ヶ月もせずに、奇跡が起きます。


ケレルマン麾下中央軍(後のモーゼル軍)は、ヴァルミーでプロイセン軍を破った(1792.9.20)。当時、プロイセン軍は、フリードリヒ大王の精鋭軍の流れを汲む、強力部隊として知られていた。



翌日、王制が廃止される。



続いて前述の通り、デュムーリエ麾下北軍は、ジェマップ(ベルギー)の戦いでオーストリア軍を撃破する(1792.11.16)。これにより、北の低地地方(ベルギー/オランダ南部)への足掛かりをつかんだ。

*5話「裏切り者デュムーリエ」


俺はその時、コンデ(ヴァルミーの戦い)とブリュッセル(ジェマップの戦い)に……おい! 地図はどうした!



4話「革命戦争勃発」参照

軍総司令官のデュムーリエは、4話で肖像画を出したので、ここでは、ヴァルミーで活躍したケレルマン将軍を。父親の方です。



ブログ「ケレルマン父」

しかしながら、翌93年は、フランス軍にとって、苦難の年でした。

以下にその理由を3つ、ご紹介致します。


ちなみに、93年5月末くらいまではまだ、ジロンド派内閣の時代です

①対仏大同盟(第一回)



93年1月。ルイ16世が処刑される。

これにより、また、フランスのベルギー、オランダへの侵略に危惧を憂えた諸国により、第一回対仏大同盟が結ばれる。これには、神聖ローマ帝国、プロイセン王国の他、イギリス、サルディニア(アルプスを挟んで国境を接接する)、スペイン(西の国境を接する)、ポルトガルが加わった。


ヴァルミー、ジェマップのフランス軍の勝利は、義勇兵の参加による、数の勝利といえました。

しかし、対仏大同盟により、数の優位は怪しくなってきます。




②軍への派遣委員制度



93年3月、革命裁判所が設置され、4月には、公安委員会が作られた。中央政府からの派遣委員制度が始まった。


派遣議員たちは、革命政府に謀意を持つ者、敵国との密告者の発見を任務としていた。また、戦争に負けると、軍の士気を下げたとして、上級将校たちが、逮捕拘束された(ギロチンにかけられた人も多かった)。


その一方で、彼らは、有能な若い将校を探し出し、取り立てた。

こうして取り立てられた若い将校の一人が、ナポレオンでした。彼は、派遣委員だったロベスピエールの弟に見いだされています。

ボナパルト兄弟その初期



また、後に総裁政府の総裁となるカルノーも、この時期、派遣委員を勤めていました。彼は、窮地に陥ったドゥゼやオッシュを救い、軍務に復帰させています。

ドゥゼ

オッシュ

だがな。

俺は、ぴったりひっついてくる派遣議員がうざくて、将軍になるのを断ったんだ。



7話「再び逮捕・収監」参照

そうなんです。

軍の士気を下げていたのは、むしろ、派遣委員の方だったのではないでしょうか……。



ライン軍総司令官の運命




③農村部の蜂起と王党派の暗躍



綻びはほかにもあった。


革命が起きても、市民、特に農村部の暮らしは一向に良くならない。おまけに、神を否定されているから、信仰に頼ることもできない。従来通り、村の神父などに相談することもできない。農村部の不満は募るばかりだ。


こうして、ヴァンデやトゥーロン、リヨンなどで、大規模な農民蜂起が起こる。ヴァンデは王党派と結びつき、トゥーロンでは、イギリスが暗躍していた。

俺も、ヴァンデや西海岸に派遣された(93年7月)。


特にヴァンデでは、同じフランス人同士、残虐な戦闘になってな。マルソーが悩んでた。俺の場合は、1ヶ月ほどの滞在でよかったと思っている。



6話「西部地方派遣/昇進拒否 」、参照




世情は不安定になっていった。
絶対的な支配力が求められた。



そんな中、ジャコバン派が台頭してくる。93年8月、総動員法施行。これにより、再び、フランス軍は、兵士の確保に成功する。

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登場人物紹介

ルイ=ニコラ・ダヴー

Louis-Nicolas Davout

1770.5.10 - 1823.6.1


主役は、オレだ!


(後のナポレオン時代、”鉄の元帥”の異名を取る。無敗を喧伝される一方で、偏屈とも噂される。ここでは、彼が若く、ナイーヴだった頃を扱います)

小説「負けないダヴーの作り方」

ルイ・シャルル・アントワーヌ・ドゥゼ

Louis Charles Antoine Desaix de Veygoux

1768.8.17 - 1800.6.14


ライン軍将校。俺の憧れの人♡

注)本作及び、小説「負けないダヴーの作り方」は、BLではありません

ブログ「ドゼー1」 ~

サヴァリ

Anne Jean Marie René Savary

1774.4.26-1833.6.2


俺を差し置き、ドゥゼ将軍の副官になりやがった邪魔なやつ。こいつ、童てi じゃないかと、俺は密かに疑ってるんだが、 こんな世間知らずが、ドゥゼ将軍の副官になっていいものか!!

ラップ

Jean Rapp 

1771.4.27 - 1821.11.8


こいつも、ドゥゼ将軍の副官になりやがって。勇気だけが取り柄の、とにかくクソ生意気な男



ラップ目線の2000字小説が、こちらに「勝利か死か Vaincre ou mourir

ブログ「ラップ」

アンベール

General Jean Jacques Ambert

1765.9.30 - 1851.11.20


俺の上官。俺の軍服に、鼻水をなすりつけて感涙にむせぶ癖がある

作者

※このページは、ダヴーにのっとられました……

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