第3話 初期の収監事件

文字数 1,321文字



革命が起きると、ダヴーのいた、シャンパーニュ王立騎兵隊は、エスダン(フランス北部、イギリス海峡近く)に移された。



若いころのダヴーは、トラブルメーカーだった、という人がいま、
ああっ!?
私じゃありませんからっ!

全く、なんたる短絡思考だ。


俺はな。革命思想に、心底惚れたんだ。なにしろ、ガクがあるからな。ルソーやヴォルテールなどの思想書を、読み漁ったものさ。


革命が起こるとすぐ、俺は、自分の名前を改名した。

貴族臭い、d'Avout

は捨てて、

ただの Davout

に変えたんだ。

この、新思想かぶれを、ダヴーの軍での擁護者でもある、伯父ジャックは、懸念の目で見ていました。
ほう。

伯父は、何て?

いえ、私の口からは、とても……
言え!
「甥のダヴーは将来、何の役にも立たないだろうし、兵士になることもないだろう」
ほほう。



1790年4月。ダヴーのいた、シャンパーニュ王立軍と、当地(エスダン)の国民衛兵が一緒になり、連合隊を結成しようじゃないかという案が浮上した。



もちろん、俺は、大賛成だった。今や、王立もクソもないだろ。それに、国民衛兵であろうと、同じフランスの市民だ。海に近いエスダンは、イギリスの脅威にさらされている。協力して、憎いイギリスを倒すべきなのだ!
衛兵隊の兵士・将校達と、ダヴーを初めとする王立軍の一部の将校らは、この案を受け容れました。しかし、王立軍の高級将校と、エスダン市政府は、これに反対の姿勢を示したのです。
王立軍と国民衛兵軍の連合。

これに賛同する者たちは、市庁舎前で、連合への忠誠を誓った。


5月7日。ついに議会が承認、両軍は、連合軍となった。

この時の書類に、俺も署名したんだぜ!
しかし、連合に反対する高級将校ら(元貴族)の不満は、くすぶり続けていました……
夏。


王立軍、国民衛兵軍の懇親を深めようという名目の元、王立軍の将校らが、衛兵軍の将校を招いて、食事会を行った。しかしこれには、下級将校は招かれなかった。


夕食会の後、王立軍が騒動を起こした。これに巻き込まれる形で、裁判もなく、49人の(衛兵隊の)下士官が解雇された。中には、勤続20年以上のベテランもいたという。



さらに、ルイ16世が、「しばらくの間、昇進は行わない」と定めたにも関わらず、過激な王党派の下士官が、少尉に昇進するという事態が起きた。

*昇進管理システムが機能するまで



貴族の高級将校の、傲慢と優越。王党派(当然貴族)の優遇。

これに激怒したのが……

許さん!



激怒したダヴーは、上官に抗議した。上官への反逆は、大罪だ。彼は逮捕され、陸軍大臣*の命で、アラス**の監獄に投獄された。



*当時はまだ、王の大臣

**フランス北部。ダヴーの赴任地エスダンより、50キロほど、内陸寄り



王の大臣により、王の軍から締め出されたわけですね……
見せしめの収監だった為、6週間ほどで釈放された。しかし、シャンパーニュ隊での地位は剥奪されてしまった。


が、この頃、革命の余波で王の大臣は没落、剥奪された軍のランクも復活した(同じ部隊にいた伯父、ジャックのおかげだという)。

しかし、上官に楯突いたわけですから。

人間関係というものがありますからねえ……。



ほとぼりを冷ます為、ダヴーは、故郷ラヴィエールに帰った……



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登場人物紹介

ルイ=ニコラ・ダヴー

Louis-Nicolas Davout

1770.5.10 - 1823.6.1


主役は、オレだ!


(後のナポレオン時代、”鉄の元帥”の異名を取る。無敗を喧伝される一方で、偏屈とも噂される。ここでは、彼が若く、ナイーヴだった頃を扱います)

小説「負けないダヴーの作り方」

ルイ・シャルル・アントワーヌ・ドゥゼ

Louis Charles Antoine Desaix de Veygoux

1768.8.17 - 1800.6.14


ライン軍将校。俺の憧れの人♡

注)本作及び、小説「負けないダヴーの作り方」は、BLではありません

ブログ「ドゼー1」 ~

サヴァリ

Anne Jean Marie René Savary

1774.4.26-1833.6.2


俺を差し置き、ドゥゼ将軍の副官になりやがった邪魔なやつ。こいつ、童てi じゃないかと、俺は密かに疑ってるんだが、 こんな世間知らずが、ドゥゼ将軍の副官になっていいものか!!

ラップ

Jean Rapp 

1771.4.27 - 1821.11.8


こいつも、ドゥゼ将軍の副官になりやがって。勇気だけが取り柄の、とにかくクソ生意気な男



ラップ目線の2000字小説が、こちらに「勝利か死か Vaincre ou mourir

ブログ「ラップ」

アンベール

General Jean Jacques Ambert

1765.9.30 - 1851.11.20


俺の上官。俺の軍服に、鼻水をなすりつけて感涙にむせぶ癖がある

作者

※このページは、ダヴーにのっとられました……

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