第13話 95年春
文字数 1,022文字
この国では、ドゥゼ将軍のことが、そこまで伝わってないだろ。伝記の一冊も出てないし。彼の高潔さなんて、わかるわけないじゃないか。それを、アレな話ばかり先行させやがって!
例年にない寒い冬だった。武器弾薬の他、食料・医薬などの補給も、途絶えがちだった。
ドゥゼは、将校への割り当てを、兵士達と分かち合い、食事は常に、一番最後に、兵士らの食べ残りを食べた。将校である彼に、報奨として割り当てられた白パンやワインは、病院に運ばせた。
待ちに待った軍への補給が届くと、公共広場の大理石の上に陣取って、住民らにも分け与えたという話が伝わっている。
怪我をした司令官・ミショーの代わりに、ピシュグリュが、ライン・モーゼル軍に戻って*きた。
*93年、ピシュグリュはライン軍を指揮していた。モーゼル軍を率いてきたオッシュと馬が合わず、オランダ方面に転出していた。
11話「ライン方面軍」、参照