第13話 深夜の牢獄で作戦会議する①

文字数 922文字

「お目覚めになられましたか?」
 次に目が覚めた時、俺と大津は、腕を後ろに回されて、鉄格子でふさがれた部屋に、放り込まれていた。
 3面は壁だ。明り取りの窓から、月光が見える。半地下牢のようだった。
「今、何時?」
「多分、午前2時40分くらいです。私の腹時計によると」
 2人ともコンクリートの床の上にケツ付けて、半身を壁にもたせ掛けている。そして両腕を、後ろで手錠されている。そういう親には見せられない格好で、俺はお目覚めしたって訳だった。
「ずいぶん眠ってらしたので、ちょっと心配してました。良かったです」
「て言うか、お、大津、お前、その顔…!」
 大津の顔には、ぶん殴られた系の紫色の痣が、3つくらい付いていた。
「ああ、これ…。ちょっと尋問されて。でも人より回復は速いんで、朝までには消えますよ」
「だ、大丈夫か?」
「ええ、ありがとうございます、先輩ご心配なく」
「いや、結構酷いぞ、その痣。むくれ方が半端ないよ…」
「まあ2人、倒しちゃいましたからね。向こうも最初はプンプン殺気立ってました。でも途中から、ちょっと仲良くなって、『身柄の完全解放』というところまでは催眠誘導できなかったんですけど、ここに放り込んでもらいました」
「そ、そうか…」
「本当なら、先輩もゴリゴリ尋問されるところだったんですよ。でも『あの人はただのシロウトで、ちょっと一緒についてきてもらっただけですから』と僕が言って、『そうか』って話に、なりました。まあ向こうもプロですから、誰が敵方の脅威人物で、誰が人畜無害な普通の市民なのかは、分かるんですよね」
「そ、そうか…(ムキッ)」
 そこでしばらく、会話が途切れる。
 大津が高い位置にある、小さな窓を見上げる。
 俺もつられて見た。
 嘘みたいに艶やかで無垢なレモン色に輝く満月が、この世で最も美しい啓示のように、見えていた。
 ゴッホの『星月夜』のような月だった。
「奇麗ですね…。素敵なお月さま。緊張感があるけれど、美しくて、凛としてますね。力が漲っていて、『面白くなってきた』と言うか、『お楽しみはこれからだ』と言うか…」
「そうだな」と言いながら、(やっぱりこいつ、何言ってるのか、ちょっと分からない奴だなぁ)と俺は、しみじみ思っていた。
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