第18話 暗号小箱を俺がこじ開けた!

文字数 1,244文字

 そこで俺は、早速言った。
「おい大津、ちょっと待った。さっき見せた細工品、早く俺に寄こしなさい」
 俺はさっきからそれを触りたくて、ウズウズしていたのだ。
「あ…、先輩そんな事、言ってましたね」
 なんか全然期待してない声で、大津がまた襟の裏から隠していた小さなオブジェを取り出して、俺に渡した。
 さあそこで、俺が本領を発揮しましたよと。
 大津の心の中を、解説しよう。
(その時、奇跡が起きた)。多分。
 ドドドド、ドヤァ! ドヤァ!
 物語の真の主人公は、俺であった! 天才。細工小物の組みほぐしの天才、それは俺。
 俺はものの30秒で、その龍と城と太陽うんちゃらのオブジェを、2つに解体した。ウォーッ! 立体パズル解きの魔術師(マジシャン)・石原拓也。俺は
「はい。これ」と大津に、それを手渡した。
 大津は鳩が豆鉄砲を食らったような(古い)びっくりした顔をして、それを受け取った。
 2つに分かれた片方から、薄い小さな紙片が、垂れ下がっていた。
「ええか、こういうのはな、コツがあんねん。押すか引くかして、斜めにずらして、回転させるか、なんかすんねん! 指先の感性、勘、発想の豊かさだ。ドヤァ! 鼻高々エッヘン丸。得意、得意!」
「先輩、本当にお手柄です! ありがとうございます! 感動しました! ではこの後の作戦行動について、ご説明します。まず一階に上がり、僕はこの館には麗奈ちゃんはいないと聞き出していますが、一応、全部屋当たってみます。20部屋くらいとの事です。今は大体10人くらいいるらしいですけど、一応全員、いっぺんお眠りいただくというか、やっつけるつもりです」
「お、おう。凄いな」
「それで先輩は、大変すみませんが、昨日の私たちが一瞬隠れて様子を見た、あの(くさむら)に、行って下さい。そこに、私のスマホが隠してありますから、それを取って来て下さい」
「なんだよお前、そんな事してたのか。なんで俺に黙ってたんだ?」
「スマホは、現代社会の宝で命で、肝で最終兵器ですからね」
「それはまあ、分かるけど…」
「先輩に言ってたら、もし捕まった時に白状してしまう可能性(ケース)もありえて、奪われたり、破壊される危険があったので、黙ってました」
「ぐぬぬ…、分かった、取って来る」
「あ、先輩! 昨日あれほど『合図をするまで、絶対に、何がどうあっても、ここから出て来ないで下さい』って言ったのに、出てきちゃったでしょ。メッ!」
「ギャーッ! やっぱ覚えてた? 忘れてくれたかと思ってた。すまん、すまん。でも、おかげでこの建物の中に入れたみたいな感じ、ないか? あるだろ?」
 俺が、ブルブル怯える子犬みたいな気持で、一晩必死に考えた言い訳を口にすると、大津はフッと笑って、
「なるほど、それもそうですね。じゃあ茂みまで、お願いします。玄関まで一緒に行きましょう」と言った。
 ハー、助かった! 諦めずに、言ってみるもんだな~。
 本当は明らかに「出来の悪い先輩だから、もうええわ」という感じだったが、「上手く逃げ切った感もあり」、俺は大いにホッとしたのだった。
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