第12話 大津が敵を瞬殺したのだが…

文字数 956文字

 次の瞬間に起こったことは、俺的には「ホエ?」だった。
 力強いとか、速いとか、激しいとか、じゃなかった。
 俺は格闘技とかは、なんも知らんから、上手く表現できないが…。
 ビシッ! バシッ! でもなく、ガジッ! ドガッ! でもなかった。
 それはなんて言うんだろう、
 トン、トンという感じだった。
 大津は、そんなに殺気立った雰囲気で近づいて行ったわけじゃなかったが、顔が割れていたのか、2人の男は大津に気が付くと、ウワッと身構えた。
 そこで大津は、1人目の男に、手刀で首筋をトン、と一撃する。
 そして、一旦後退する動きと、2人目の男の攻撃を防御する動きと、さらにその男に攻撃を仕掛ける動きが、「一つ」になった感じで、俺が格闘技の動画とかを(たまにちょっと)見てもあまり目にしないような、手刀がバナナ状に空間を滑らかに裂く感じで、相手の顎にトン、と当てたのだった。
 次の瞬間、2人ともハラリと花びらが散るように、あっけなく地面に倒れこんだのだ。
 …凄え。凄えよ…。
 …強え! 大津ほんと強え…!
 俺はまた、圧倒された思いだった。この運動神経。研ぎ澄まされてる。
 あっという間に大男を、2人とも、のしちまった。
(俺はこの後輩に、一生ついて行くぞ!)みたいな。
 俺は感動と興奮が、収まらなかった。
 茂みから出て、大津の方に、フラフラと歩いてゆく。
 大津は、シュートをネットに突き刺した後みたいに落ち着いて、やや下を向き、しかし口元は少しだけ笑ませて、「ちょっとは嬉しいです」みたいな顔をしていた。ああ、かわちい。
 そこからフッと顔を上げ、俺と目が合った。うれちい。
 だがそこで何故かオヤッ? という口元になった。なぜちい?
 そして目や口を薄く延ばして「フフフ…」みたいに笑い、そして両手を上げた。なぜなぜ?
 そのとき俺の後頭部に、コツンと固くて重い感じのものが、当たった。
 痛いやん。(何よ、失礼ね)と思いながら、そっちを向く俺。
 そこには、今の二人と同じような黒づくめの大男が、ピストルを手にして、立っていたのだった。
 そして俺は、白布を口にあてがわれた。
 それは、吸入麻酔薬だったらしい。ちょっとワサビの匂いがした。
 咄嗟のことで驚いた俺は、ハフッと盛大に、息を吸ってしまった。
 俺は、あっという間に、昏睡したのだった。
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