第14話 深夜の牢獄で作戦会議する②

文字数 1,299文字

「先輩、いまちょっと時間がありますから、もう少しだけ、お話ししましょう。私が入っている警視庁高校は、今はまだ立ち上げ段階です。高校生世代からの人材確保。そういう趣旨で、創設されました。それで普段の授業は」
「普段の授業は?」
「通信教育です。ただ、普通教科は預託しています。普通高校に。ただ今回は、その預託関係すら存在していません。要するに、関係性を築いておらず、湘南宝光学園の成績表を持ってきたら、それを警視庁高校の成績に、そのまま加算。そして単純に、補完の教科を修得して、卒業証書を出すという形です。二重学籍で。構想としては」
「なんじゃそれ。変なの。高校の(てい)を、なしてないじゃん」
御意(ぎょい)でございます。立ち上げ段階です。授業は全部オンラインで、週に6時間。情報解析と、武術と、軽超能力です」
「最後のやつは何?」
「催眠術とか、あと武術でもあるんですけど合気道とか、そういう感じです。空を飛んだり、重量物を自由自在に飛ばしたりは出来ませんよ、という意味で、(けい)が付いています」
「麗奈も、そういうのをダンス教室の裏で、やってたの…?」
「いえ、ですから全く別系統です。麗奈さんが属していたのは、公安の本流セクションで、僕がスカウトされて入ったのは、外事課がなんとなく試行主体の、プロジェクトです」
「なんとなくね…。まあともかく、何回聞いても、俺にはよく分からんよ」
「今世界は、爆発的に経済成長して、何十億の人が、高度資本主義情報社会に身を置いています。世界の百か国以上が、従来の超大国のような高度情報を駆使しています。20世紀を超えた21世紀型の、新しい発想と戦略の諜報活動が、求められています。我が国も、そういう様々なアプローチに対応して、必死で新しいフォーマットの形成をしている、という形です」
「分からん、ちーとも分からん。わしアホじゃけえ」
「そうですよね。いえ『わしアホじゃけえ』ではなく、その前の『ちーとも分からん』に対しての、そうですよねです」
 俺はヘディングを、大津の顔に食らわした。
「あ痛っ! 暴力は、やめて下さいよー…。ともかくどちらかと言うと、全人類が、現代文明・情報社会の爆発的な進歩に、振り回されている現状です。そう公安トップが言ってました」
「そうですか」
「ただ、警察もお役所ですから、内部ではセクショナリズムが、物凄くて…。いがみ合ってますし、予算の分捕り合戦も、酷いです。大人って、ほんと嫌ですよね…。しかし本事案につきましては、地域セルと警視庁高校が、共同内偵してたんです」
「俺、ショックで立ち直れん…」
「まあ他にも、先輩にとってショックな話は、あるかも知れませんけど。それはおいおい…。地域セルは、本当の有事、国家の一大事、外勢侵攻や内国騒乱があった時に、地方に秘密の拠点を作っておき、一時的にでも国の中枢活動を担うための、拠点確保の組織です、基本的には。全国約10の地方都市に設営して、相互のメンバーさえ正体を知らされていない基地(ベース)を、築いているのです。麗奈ちゃんは、湘南セルの一員でした」
「それでさ、本事案って、なんなんだよ」
「はい、実は…」大津は一瞬せき込んだ後、話を続けた。
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