第15話 深夜の牢獄で作戦会議する③

文字数 1,407文字

「実はこの地域の地場有力企業による、密輸事案がありそうだという情報があり、それに付随して近々、不測の重大事案が発生しそうだといういう緊急情報が、うちの本部に、もたらされたんです」
「何の密輸? やっぱ薬物?」
「それが意外なことに、武器でした。まだ手始め的に、ピストル20丁と言ったレベルですが。手りゅう弾やライフルの輸入も、計画していたようです」
「どこからの情報?」
「言っていいんですかね…。日本の某軍事関連の省が、世界中のあらゆる通信やコンピューターの中身を傍受監視(ハッキング)している北米大陸の某国から、ユーラシア大陸の大国のR国とC国の通信で、『今度、日本の湘南地方で、ルボシア共和国が、ヤバい事するらしいってよ』みたいな会話してたって、教えてくれたんです」
「おいなんだその、まだるっこしい言い方! いちいち隠して言うお前、超イライラすんだけど! 」
「すみません」
「…お前さあ、実はわりかし、構ってちゃんだよな? わりかし人の顔見ながら、受けるように必死にものを言うよな? お前本当は、寂しいのか?」
「…先輩って、割合と人が一番突いてほしくないところを、容赦なく無慈悲に、突いてきますよね。大ッ嫌い。覚えてなよ。いつか(いかずち)を落としてやる」
「お、おい、や、やめてよ。そう怒るなよ。ごめん、ごめん。軽い気持で言っただけやし。すねんなよ~。機嫌直してくれよ~」
「………………それで緊急で、内偵してたんです。言い忘れましたが武器密輸は、湘南宝光コーポレーションによるものです」
「な? マ? それ、うちの高校の、母体企業じゃん!」
「そうです。湘南宝光学園は元々、この地域の名門企業である湘南宝光コーポレーションの、唯一の分家筋が経営しています。そして本家筋の御所園家の当主も昨年亡くなられて、後継ぎがおられない事も、先輩、ご存知ですよね?」
「ああ、まあ一応は、知ってるよ…」
「つまり、そういう事だよ。分かるだろ? 黒…」
 俺はまた大津に頭突きを食らわす。ボケたら突っ込む。コンビの絶対鉄則だ。我々は相方二人組として、だいぶこなれてきた気がする。来年ぐらい、漫才コンテストに出ようか。
「痛あい…、暴力やめて下さい」
「やかましいわボケ! ド突いたろか! …最後なんか、黒がどうとか言った?」
「まあ、そのうち分かりますよ。それでともかく明日、いえ日付変わって今日ですね、うちの高校で、我が国とルボシア共和国の国交樹立80周年の、記念式典があるじゃないですか。そこで何か大変な出来事が起きそうだというのが、最新の観測だったんです」
 湘南宝光コーポレーションは、第二次大戦前は軍人の家門で、ここ地元の湘南で創業し、軍部とつながりが深かった。戦後は民生品の輸入業に転換し、家具や衣料や宝石アクセサリーなんたらを、世界中から日本に手広く仕入れている企業だった。あとは病床数200を超える総合病院も経営している。
 国政や市政の与党との関係も、バッチリだ。関係は密だと言われていた。良く知らんけど。
 今日は親密取引先のうちの一国であるルボシア共和国の皇太子様がお見えになり、記念式典が行われるという話なのだった。
(この市で一番広い会場は、うちの高校のグラウンドなのだ。四方をそれなりに建物(校舎や体育館)と道路を隔てて海に囲まれて、高級式典会場(セレモニーべニュー)感あり。紅白の屋根のテントが並んだり、吹奏楽部が演奏したりして、華やかな光景が、年に数回は出現するのだった)
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