第12話 雨

文字数 555文字



 彼氏が死んだ。バイク事故だ。
 踏み切りにつっこみ、電車にひかれてバラバラになった。

 あたしは泣き叫んだよ?
 好きだったしね。

 でも、一年たって、新しい彼ができた。
 しょうがないよね。
 あたし、まだ二十歳だし。
 彼だって欲しいし、結婚もしたいよ。

 今日は、これから、彼のうちに、初お泊まり。
 はりきって、新しい下着、買っちゃったよぉ。
 超セクシーなやつ。

 だけど、あーあ、雨ふってきた。

 まあ、いいけどね。
 ずっとベッドのなかにいればいいんだしさ。

 コンビニでビニール傘、買った。
 その傘をさして歩いてると、なんで?
 みんなが、あたしを、すっごい目で見るんだけど?
 ホラー映画、見てるときみたいな顔して、あわてて、さけていく。

 やんなるなあ。
 気分悪い。

 明るい駅前についた。
 街灯の下を通ったとたん、あたしは気づいた。

 水たまりが赤い。

 正確に言うと、あたしのまわりの水たまりだけ、赤い。

 なに、これ?

 立ちすくむと、傘から赤いしずくが、とめどなく、したたってくる。

 雨が赤いんだ。
 だから、その雨が落ちて、水たまりも赤くなる。

 なんで、あたしのまわりだけ?

 あたしは、そっと、上を見た。
 ビニール傘の上から、もと彼が、のぞきこんでいた。
 事故で死んだ彼が。
 全身、真っ赤に見えるほど、血みどろになって……。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み