笹木 詩絵楽
文字数 7,752文字
燦国侵攻戦 小悪魔の再臨
何だか新しい出逢いがありそうな新学期の朝、通学路を往く主人公。
疲れからか不幸にも、食パンを咥えた袖無し腹見せミニスカートの美少女と正面衝突してしまう。
可哀想な冤罪を着せられ、全ての責任を背負う羽目になった主人公に対し、謎の転校生、笹木詩絵楽が提示した口止め料とは…。
このエピソードは、朝霧白雨『烏の恋』とのコラボ企画で執筆されました!
日本の神々らが住む天道界、高天原。
ここには、地上世界の人間達よりは偉いが、人間と似たような感情・欲望を持った天神族が暮らしている。
そんな天上界の片隅で、やや高級そうなベッドに寝転びながら、永遠に携帯電話を弄り続けている
落ちてしまいました。
「ふ…副隊長、空からノースリーブの美少女が…!」
「えぇ…(困惑)」
自宅
「ああ、そうだね」
私達は、商店街の南アジア料理屋で外食する事に。
しかし、そこの店員は…。
「が…俄勝様!? どうして、こんな所に…?」
「が…俄勝様が、そんな格好だからですよっ!(苦笑)それに今は、家族も一緒ですし…w」
教会の聖職者である十三宮聖は、その宗教的信念により、ベジタリアン向けメニューを注文する事が多い。
今日は、お客さんが少ないので、店番の黒沢俄勝も、私達と一緒に食べようという事になった。
十字架のアクセサリーを指差しながら、そう微笑む俄勝様。
かつて彼女は、自らの信仰に殉教した隠れキリシタンであり、今は仏道なども学んでいる、勉強熱心なサキュバスらしい。
「いや、どちらかと言うと『性食者』ですよねw」
そういうわけで、聖姉さんとお揃いの野菜カレーを作った俄勝様を交え、皆で楽しく会食する事に。
禁欲主義者の聖姉さんと、欲望の塊みたいな俄勝様…正反対な二人だが、二人とも教養ある「せいしょく者」同士なので、割と仲が良いらしい。
黒沢俄勝が所属している総督府は、各地に諜報偵察工作員を送っているが、彼らの一部が、国籍不明の特殊部隊に狙撃される事件が発生しているという。
そう言って俄勝様は、一枚の絵を聖姉さんに見せる。
そこに写っていたのは…。
その後、私達は俄勝様の情報に基づき、謎の組織の調査を手伝う事にした。
彼らの正体に関しては、総督府のデータベースでも特定不能であり、より多くの人員を投入して、現地調査を重ねる必要があるという。
そこで私達は、彼らが出現した地点の目撃情報を整理し、それを地図に書き込んで、彼らと遭遇しそうなエリアの範囲を絞り込んでみた。
「じゃあ、この地図に打たれた点から、事象の原因がありそうな領域を特定して欲しいんだけど…」
「ああ、そうだよ」
謎の組織の行動範囲が、おおよそ明らかになってきた。
後は、ここを調査しに行く部隊パーティーを編成しよう。
「ヒナミさん。私達の仲間の中で、この場所に急行できそうな人員をピックアップできる?」
こうして私達は、謎の組織の正体を確かめるべく、彼らの勢力圏になっている秘境の土地へと向かう事になった。
北を山地に隔てられ、西・南・東を海に囲まれた
北西から流れる河川が、南東の浦へと注ぎ込んでいる。
今回の任務は、関西畿内軍の間宮主計・斎宮星見らが先陣を切り、その後、四国サイドワインダーの松山隊が増援として合流予定である。
大燦帝国、通称「
御伽噺として語り継がれてはいるが、本当に実在するかは分からない伝説上の国である。
一説によれば、かなり永い歴史があり、太陽神崇拝を中心に、呪術的な宗教など独自の文化を持っているらしい。
前の大戦に敗れてからは鎖国状態になっているが、その後も魔術兵器の開発など、国としての軍事力を温存しているとも言われる。
と言った瞬間、森の奥から威嚇射撃が飛来し、左右に散開して避ける一同。
間宮主計は樹木に隠れ、銃を構えながら口を開く。
「…あら、あたし達の正体に気付いちゃったの? じゃあ、生きて帰らせるわけにはいかないかな~?」
そう言って、木々の隙間から現れたのは…。
再び連射音を轟かせ、森を切り裂く弾幕。
どうやら、縫い包みの口がガトリング砲になっているらしい…。
伊勢の神官、斎宮星見は放電閃光弾を軽く上に投げ、それをラケットで敵方に打ち飛ばした。
敵が怯んだ一瞬の隙を間宮は見逃さず、そのまま一気に前進して、謎の敵将に銃口を突き付ける。
そう言われた敵将は、両手を挙げて屈むような動作を見せるが…。
謎の敵将は、足下に備えた砲台を遠隔操作で撃とうとしたが、それよりも僅かに早く、間宮が敵将の背後に瞬間移動したのが先であった。
この美少女…笹木詩絵楽は、以前は天界に住むニートだったが、諸事情で下界に追放されてしまった「堕天使」である…らしい。
下界に落下した時、不時着した場所が燦国の領土だったので、そのまま燦国軍の呪師組織で働く羽目になり、今この時に至ったそうである。
その後、援軍として合流した松山なつき達を交え、日本側と燦国側との間で和議が結ばれた。
・日本と燦国は以後、敵対行為をやめ、互いの領土を尊重し合う。
・燦国の特殊部隊「呪師組織ヤタガラス」の存在に関しては、双方とも極秘情報として隠匿する。
・但し、魔術兵器の開発など、互いの利害が一致する部門における協力の可能性を排除するものではない。
・ヤタガラスの傭兵だった笹木詩絵楽に日本国籍を付与し、燦国から日本への移住を許可する。
このような条件で、大燦帝国との戦いに終止符が打たれた。
しかし、人工衛星が地表を隅々まで監視できる時代なのに、何故あのような秘境の国を今まで発見できなかったのか、謎は残る。
もしかすると「燦の国」は、こちらの日本列島とは別の時空間に存在し、神隠しに遭った者だけが入国できる、異界の国だったのかも知れない…。
今日、十三宮仁と十三宮顯は、朝から委員会の予定があるため、普段より早く登校せねばならなかった。
そのため、今朝は二人が先に出発し、先日の燦国任務で疲れていた私は、二人より少し遅れて、一人で登校する事になった。
こうして出発したのだが…。
「…え~っと新しい学校、どこだっけ? 早く見付けないと、朝礼に遅れちゃう…って、きゃぁっ!!」
「覗いてないし、もし見えてしまったとしても、それは不可抗力の事故です! まさか、あのブランドの下着を穿いていたなんて…わざと見るわけないですw」
「あ…あぁ、誰かと思えば笹木さん! 先日は燦国の件、お互いお疲れ様でした。もしかして笹木さん、私達と同じ学校に?」
だったら最初から、もう少し長いスカートを穿いておけよ…と思った。
そもそも学生服なのに、何故か彼女のシャツはスリーブレスだし、ついでにお腹も丸見えだし、随分と過激な「制服」だな…w
これが…あの日に燦の国で出逢い、そして今日この通学路で再会した美少女、笹木詩絵楽さんとの物語、その始まりであった。
同じ頃、学校の教室には、普段より早く登校していた仁・顯の姿があった。
顯は教室のベランダに出て、朝の清々しい青空を眺めている。
短い時間を共に過ごした後、その人は家庭の事情で、遠くの街へと引っ越してしまった。
そして、しばらくした後、その人は…ある不幸な出来事により、若くして世を去った。
授業開始時刻が迫り、教室にはほかの学生達が次々と入り始め、色々あって担任の先生になった黒沢俄勝も教壇に上がり、そろそろ朝礼である。
そんな中でも、顯は追憶に耽っている。
放課後の児童館で、戦車の玩具で一緒に遊んだのが、最後の思い出だった。
男子達をグイグイと引っ張る勝ち気な性格で、いつも袖を捲り、スカートを短く折り、そして…いつも熊の縫い包みを抱き締めていた少女。
笹木詩絵楽の章
小悪魔再臨篇
終わり