悔しいか……?
ならば力を欲せ、この石と共に力を宿せ……
霞んだ目では何も見えない……でもずっと私を呼んでいる。
そうあいつさえ……あの力に勝てる、あの石が欲しい……!
はっと目が覚めた。
いつも居る水溜まりに仰向けになっていた。
本当に夢だったのか、分からない。
でも確かにポセイドンの加護は水上ジャンヌ溟に宿っている。
頭に着けている髪飾りを撫でながら水に浸り、また思考し始めた。
あの女とは業火の鬼狩りとして戦い続けた、戦闘狂
碓井槐である。
生まれた時代は溟が先であったが、類稀なるセンスと信仰心によって人神様として崇められていた。
だから力は上であるはずだった。
水上 ジャンヌ 溟
「あははッ、さあ供物を納めなさい。私がこの地を守ってあげているのよ。雑魚如きが歯向かうじゃないわよ!」
この頃の私は識属性であり、私に勝てる者など存在しないと過信していました。
むしゃくしゃする日は村の住人に八つ当たりし、鬱憤を晴らし、食料も住処も最高の物しかない生活をしていた。
無論、村の反感は買ったが全て力で捩じ伏せた。
「私は神なのよ? お前が決める事じゃない。私が強い、私が一番、それ以外は絶対許さない……そうお前のように足で転がしてあげるわ……」
碓井 丹波守 槐
「うみたん、槐と遊ぼ?」
「遊ばないの? あ、それとも、槐に負けちゃうから遊べないの?」
「は? 私が負ける? ちんちくりんのお前に勝てる所など無いわ」
碓井槐は話し声とは全く違う雰囲気を纏い攻めて来た。
その頃の碓井槐は全盛期であり、日本列島で碓井槐に悪だと認定されると火を包まれ壊滅させられていた。
長年生きて来てここまで押されるのは……初めて負けると感じた。
「あらま、もう終わっちゃった。でもうみたんとの遊び楽しかったよ! またね」
あれが遊びだと言うのか?
識属性を以てもなお、負けたというの?
あぁ……この、この炎が嫌い……こんな私を見ないで……
業火の魔女、ジャンヌ ダルクのように炎に焼かれた。
この炎で私は新たに水上ジャンヌ溟となり生まれ変わった。
そこからは命辛々生き延びたが、碓井槐に怯えて生活をしていた。
負けた喪失感と最高の暮らしが無くなってしまった頃には、私は一人になってしまった。
南アルプス赤石山脈の近くに身を隠して、どれほどの月日が経ったのだろう。
涙か汗か水か分からない水分で視界が霞んで見えない。
碓井槐に負けて、この様か?
悔しいだろう?
悔しいか……?
ならば力を欲せ、この石と共に力を宿せ……
手には石が置いてあるらしい。
聴いていれば、この石に私の欲である、碓井槐に負けたくないという意志を込めると力をくれるという。
これを手に入れれば、私は一番に戻れる。
私より強い者は存在しない世界が、もう一度生まれる?
目を開くと、ポセイドンの加護を受け、使者となった。
識属性はそのままであるらしいが、私の記憶を読み取って火属性に対抗するため水属性を高めたらしい。
ある程度の言葉は理解できるらしい。
何度も近寄るなと言って追い返したのだが、懲りずに毎日私の所に姿を見せた。
碓井槐との思い出がよぎり、裏切るのかと思っていたら、少女は。
嶺咲 あずさ
「絶対裏切らないよ女神様。だからずっとずっと一緒に居て?」
その目に吸い込まれた。
長い間、人に触れずにいた心に取り憑かれた。
全部、ぜんぶ、ぜんブぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ!!!!