梓と聖
文字数 2,265文字
(本篇とは異なる時空世界の物語)
何だか、同じようで違う…。
何時まで、何処まで聖様の元に居られるか分からないのだ。
下を向いて泣きそうな私を見た聖様は、
聖様の体温に抱き締められながら、言えなかった気持ちが涙となって溢れていた。
でも、長くは続かなかった。
変わったように見せていたが実際は変わっていなかったのだ。
享楽とは偽りだという事に。
都合のいい願いを何度も願うのであった。
表面だけ綺麗に見えている世界で、聖様は良いと思えるのか。
心がすり減りながら周りが傘を差している中感じてしまった。
教会のメイド達がそう呟きながら駆けて行く。
手を差し伸べた聖様、その温かさに触れた私は、
いつも聖様、あなたと。
泣いて、笑って、怒って、いつも歌って、踊って、話していたかっただけなのに。
なんでそれが許されないの。
許さない…。
ずっと貴女といるのは私だ。
それを妨げようとする者は例え聖様でも許さない。
ユダとして。
と男は呟いた。
黄色いレインコートを着て処刑台を眺めた。
民衆の暴言に振れもせずただ手を前に出して彼女は呟いた。
なんと哀れだろう。
最後の最後まで私の事を騙し続けた彼女が呟いた。
その言葉を聴いてフードを脱いで私は聖様がその場に居るかのように教会で踊った踊りを始めた。
裁判中に踊り出した私を見た人は何か言っているが私には届かない。
この誰も知り得なかった感覚を教えてくれてありがとう。
魔女、聖。
私にこの気持ちを。
この感覚を…生きている全てを。
正しくしている。