そして始まった反撃準備
文字数 2,446文字
~これは、地球が迎えるであろうもう一つの物語~
3か月も経てば様子見をしていても、もうすっかり打ち解けてしまう者だ。
桜橋母娘がセーフであるという意味の収容区域に移動したその翌月、その知らせはやって来た。
遊理が学校へ行ったタイミングで隊員が紙を渡す。
以前倒されミンチと化した東山の血肉と桜橋母娘の血液を取ってDNA鑑定を蘭香から直々に依頼され、それについての報告だった。
結果、桜橋母娘と東山備中にはしっかりと血縁が確認された。
しかし……。
「するよ。星によっては生命体も存在してるし、東山はメタバースワールドの、またその奥……アンダーギャラクシーの出身だという事までは判明してる。地球にその情報があまり無いのは、宇宙規模での条約とか色々なものが追い付いていなくて、こうやって支援に来るまでに結構な時間が掛かっちゃったからなんだ」
パサ、とデータ結果の書かれた紙を置いて、蘭香は隊員達の方を向き、苦笑いをもう一つ。
そして深呼吸をした。
「何も、この地球だけじゃない。他のメタバースワールドや、バーチャルスペース。果てはこの地球を含む太陽系のどこかでアイツは破壊の限りを尽くしてる……地球はまだ壊されてないだけ助けられるし、私としても壊されるのは非常に
悔しそうな顔をして拳を握る蘭香の瞳に涙が揺れる。
その姿に隊員は言葉を失う。
涙を自ら拭い、再び苦笑いをしながら、彼女は語り始めた。
私は、バーチャルスペースと呼ばれる星態系の中にある、サレリクルという星で生まれた。
幸い、色んな意味で進んでいるから、他の星の存在や、宇宙犯罪について知る事も多かったよ。
私は地球という星を知った時、感動したのが忘れられないくらいには色んな情報が明瞭に飛び交っていたんだ。
地球は美しいが故に宇宙規模で守られ続けていて、その星やそこに住む生命体に異常を起こされないように、不可侵条約があって、誰も近付けず、でも守れるように太陽系という別の世界に書き起こして、科学というものを生み出して、それを太陽系に埋め込んだのがベースサーバースペースって言う宇宙歴の話を私は母星で学んだし、そこから太陽系自体の介入を禁止されているって言う事も一緒に学んだ。
ま、せいぜい研修とか、観光で何もしないままそこで過ごすのが許されるくらいの……そうだな、例えるなら……地球は宇宙遺産だという事になるかな。
でもさ、不思議なものでさ。
生命体である限り、似たような思考してるんだよ。
そんな綺麗な星を壊そうとする奴が生まれてしまう。
それが、宇宙指名手配システムのイースト ヴィッチ……この星で言う東山備中の存在なんだ。
生命体でありシステムであるアイツはまず元を叩かなければ破壊されない。
クローンの雑魚が無限に生成されるだけなんだけど、アンダーギャラクシーから既に逃亡していて、今はどこに潜んでいるかも分からない。
そして、雑魚の大発生が一番頻発しているのが、この地球なんだ。
アイツがこの星を壊していないのはこの星に生きる美しい女性を襲って恐怖の顔を見たいだけ。
飽きたら、どこぞの星とぶつけるなり隕石落とすなりで木っ端微塵にして、また次の星なり世界なりに行って繰り返す。
サレリクルも強姦被害が無い訳ではないし、どこの星もその恐怖に震えているし、壊された星の事例も報告だけで二桁を迎えていた。
静まり返る部屋、無言の空間。
再び蘭香の声が部屋に響く。