鷺原 イズミ

文字数 19,233文字

※このエピソードには、やや生々しい津波災害などの描写が含まれています。

PLANET BLUE SIDEWINDER

鷺原 イズミ

サイドワインダー零

 旧日本国家の壊滅後、瀬戸内海に出没している犯罪組織「虚人(きょじん)東山(ひがしやま)」と、彼らと戦い続ける四国の義勇軍「サイドワインダー」。


これは、本篇の3年前に起きた戦争と、そこに参陣した少女達の軌跡を中心に、サイドワインダー結成の歴史に迫る物語である…。

「アタシは…」
「この世界を…!」
「…変える!」

 2649年(光復元年)6月に日本列島を襲った、太平洋巨大津波


分裂した小惑星の破片が、隕石雨として地表に降り注ぐ中、太平洋などの海にも隕石が落下し、大きな津波を引き起こした。


この巨大津波により、高知平野の集落は完全に壊滅し、徳島平野も半壊。


当時、四国を独裁的に支配していた山田(やまだ)主席は、逃げ惑う住民達を見捨て、私物化した財産を持ち去り、真っ先に逃亡してしまった。


この日「高知県」は消滅し、県民の大半が亡くなり、辛うじて逃げ延びた人々にも、苦難の歳月が待ち受けていた…。

 こんな「怖い話」がある。


ある時、虚人東山軍の一味が土佐(とさ)地方(旧高知県域)を襲撃した…のだが、何日経っても、誰も帰って来なかった。


後日、全員の遺体が発見された。


不毛の土佐に攻め込んだものの、そこには襲う人間も、奪う食糧も無く、飢えに追い詰められた彼らは、仲間割れの果てに、全員が餓死したのであった。


こんな『死国』に人々が安住できるはずも無く、未来ある子供達を優先的に、本州や九州へと避難させる作戦が進められていた。


その土佐で戦い、決死に生き残っていた住民達の中に、鷺原(さぎはら)の姿があった。

「…もう、これ以上は乗れません! お子様を優先して下さい!」
「ママぁ! パパぁ! どうして、一緒に来てくれないの!?」
「東山の増援軍が接近中ですって!? もう時間がありません! 出航します!」
「離して! ママ・パパと離れたくないよ~!」

「このまま土佐に踏み留まっても、皆が死んでしまうだけです! 子供達だけでも、疎開させるしかありません! さあ、脱出します!」

 敵襲の警報が鳴り響く中、轟音と共に急発進し、手を伸ばした先の土佐湾が、見る見る遠くなって行く。


それと共に、幼き少女の僅かな記憶も、置き忘れたように薄れてゆく。


少女の心に残ったのは、土佐に踏み留まった両親の面影と、「土佐を離れ、海の彼方に別れても、強く健やかに、幸せに生きて」という、最後の言葉だけであった…。

「…この子の、お名前は?」

「それが…言葉を覚えるには幼過ぎる上に、眼前で両親を襲われたショックで、記憶が錯乱しており、とても会話できるような状態では…」

「…トサ…カナタ…うぅ…」
「分かりました。ならば本日より、あなたの御名は…」
「…お母さん…お父さん…どうして…」

嶺咲(みねさき) ウルスラ(Ursula)

「…カナタ様、十三宮カナタ様! 大丈夫ですか?」

十三宮(とさみや) カナタ

「…あ、ウルスラ先輩…」

「また、あの日の夢を…?」

「…はい、そうみたいです…」

「睡眠不足は、若い乙女の敵ですよ。睡眠薬と、必要ならば精神安定剤を処方させます。カウンセラーにも、話しておきますね」

十三宮(とさみや) 瀨紲(せつな)

「そうですね、用意しておきましょう」

「…ありがとう、御座います…」

「先輩はね、カナタ様のような、可哀想な弱き者を救済できる大人になるため、この教会で修行しているのです。だから、何でも相談して下さいね…!」

「…ウルスラ先輩、本当にありがとう…」

「カナタ様を棄てた御両親など、もう生きてはいないでしょう。辛い過去など、忘れなさい。天主(デウス)の神様と私達を信じ、未来への現在を…今を生きるのです!」

「…はい、頑張ります…」

 あの日、土佐湾から太平洋に「放流」され、黒潮海流に乗って東海道へと漂着した少女は、現地の教会孤児院に保護された後、その僅かな記憶から「十三宮カナタ」と名付けられ、この日に至っている。


比較的、平穏な生活を送ってはいるが、記憶の彼方に眠る両親の面影を、どうしても忘れる事ができない…。

「カナタちゃん、大丈夫?」
「…あ、めぐちゃん先輩…」

「一人で眠るのが寂しい夜は、めぐちゃん達も一緒に寝てあげるよ! 明日は、念々佳ちゃん達も遊びに来るよ! カナタちゃんは、一人じゃないんだよ^^」

(めぐみ)さんの言う通り、困った時は助け合うよ!」


(※この黄色い吹き出しが「夢小説主人公」の台詞なので、ここに感情移入する事を推奨します。名前・性別などは、御自由にどうぞw)

「…あなたも、皆ありがとう…」
 そんな十三宮カナタの人生に、大きな転機が訪れようとしていた…。

 時は、2665(光復十七)年。


無政府状態の四国を防衛し、壮絶な全滅を遂げた義勇軍「旧ハンター中隊」の、唯一の生き残りである石本ユミカ中佐(大学3年生)が、旧愛媛県域を制圧し、松山市を臨時首都とする軍事政権、伊予(いよ)軍政府を樹立していた。

 そして翌年、2666(光復十八)年。


軍備を固めた石本大佐(大学4年生)は、分裂・内乱状態の四国を統一するため、最終段階の作戦に着手した。


伊予軍政府は、北四国(伊予・讃岐(さぬき)をほぼ平定しているが、南四国(土佐・阿波(あわ)には、未だ虚人東山軍の占領地域がある。


特に、土佐で繁殖している「東山備中(タウ)」は、女性を襲わなくても無性生殖できる変種であり、人間への感染力は低いが、脳容積が大きくて悪知恵が働き、社会に対する重症化リスクは甚大である。

伊予 松山城址(じょうし)

石本(いしもと) ユミカ

「…この部屋、大昔は天守閣だったそうよ。今は見ての通り、事故物件みたいな廃墟だけれども」

大城(おおしろ) エリザベス(Elizabeth) 椿姫(つばき)

「城だったと分かるだけ、まだ良いではありませんか。讃岐高松などは、もっと酷い情況ですよ」

 石本大佐は、税を私物化していた山田主席とは異なり、自らの権力を誇示せず、住民の福祉を優先しようと心掛けていた。


伊予軍政府の臨時基地である松山城跡地も、総司令官の「城」とは思えぬほど質素で、荒廃したままである。


倹約して浮いた予算を、将兵と軍需品の確保に充当していた。

「…さて、既に話した通り、高知の虚人東山軍を南北から挟撃し、土佐を奪還するわ。特に北部戦線は、シスターリズの協力が必要不可欠よ」

「はい、最善を尽くします…ただ、私達のダイバー中隊も再建途上ですので、人員が…やはり、例の鵜久森ギャングを動かさざるを得ないのでしょうか…?」

「あぁ…鵜久森団、ね…」

 鵜久森団、正式名称「高松十字会」とは、虚人東山軍に対抗して、北四国の中等学生らが結成した、武装不良集団である。


「弱肉強食」「毒を以て毒を制す」という価値観に基づき、虚人東山軍への報復テロ行為を繰り返している。


しかし…敵の死体を切り刻んで晒し者にしたり、手柄のために味方を見捨てたり、第三者を巻き込む無差別攻撃など、あまりにも猟奇的な「正義」を執行しているため、住民からの支持を得られていない。


その団長と目されているのが、鵜久森ミナトという血気盛んな女学生(中等学校2年生)である。

「鵜久森団の子達が、東山軍の奴らを殺してやりたいって思う気持ちは、痛いほど分かるけれど…」

 鵜久森団の中には、東山備中の「血」を憎み、彼(彼女?)に襲われた女性や、その間に生まれた子供を敵視する者も居た。


そのため伊予松山を統治する石本大佐は、鵜久森団の活動を規制したが、彼女らは讃岐高松に逃れ、暴力的な活動を続けている。

「敵の敵は味方、とも言います。鵜久森ギャングと虚人東山軍、両者を潰し合わせ、共倒れになって頂くのが、良いのかも知れませんね…」

「そうね…これは戦争、利用できる者は利用するわ。でも、いつか…」
「鵜久森ギャングの者達にも、回心の機会を与えねばなりませんね…エイメン(amen)

 若い女子学生だらけの鵜久森団が暴れ回れば、欲望の塊である虚人東山軍を陽動できる。


その隙に、土佐高知へと進撃できれば…!

「そこで重要になるのが南部戦線、土佐湾から高知平野への上陸! これには海軍艦艇など、多大な兵力が必要ね」

「こればかりは、四国だけでは足りません。日本中・世界中から義勇兵を集めると共に、軍需産業にも支援を求めましょう」

 土佐高知では、虚人東山軍に誘拐された住民らが、人質として強制労働させられている…との情報もある。


国内外あらゆる勢力に助けを求め、速やかに準備を整え、一刻も早く作戦を決行・完遂せねばならない!

「恐らく、少なくない犠牲が出るわ…死傷者を一人でも減らすため、救護活動を担ってくれる人達も大切ね」

「そういう事ならば、私達のネットワークにお任せ下さい。人道に関しては、熱心な教会が多数、御座います。早速ですが、信頼できる所に連絡しますね…」

 そう言って、讃岐高松の大城エリザベス大佐は、胸元の十字架を握りながら微笑んだ。

「…はい、畏まりました。では、土佐に教会騎士団を派遣致します。大城様にも、どうか天主の御加護がありますよう…エイメン」

 遂に、この時が来てしまった…と、その司祭は思った。


司祭は、自分の妹として今日まで育てた十三宮カナタに、全てを話した。


「十三宮カナタ」は仮の幼名で、真の実名は、土佐に残った御両親と再会した時に、名付けられる約束だったという事。


その土佐を奪還するための上陸作戦が、間も無く始まろうとしている事。


そして、カナタの両親は…死亡している可能性が高いものの、土佐の地で生存している可能性も、僅かながらゼロではない…という事。


全てを知らされた十三宮カナタは、予想通りの反応を示した。

「…(ひじり)お姉ちゃん、私…土佐に帰りたい。お母さん・お父さんに、逢いに行きたい!」

「カナタさんの気持ちは分かるけど、今の土佐に向かうのは危ないよ! 連合軍が高知を制圧した後のほうが、安全なのでは…」

「それじゃ、間に合わないかも知れない! 私は、この手で両親を助けたい! お姉ちゃん、お願い! 私に、土佐奪還の先陣を切らせて下さい…!」

「カナタちゃん…」

「…止めても無駄でしょうから、止めません…が、これは大規模な戦いであり、命懸けの任務になります。私達が全身全霊を以て、カナタちゃんを護ります!」

禅定門(ぜんじょうもん) 念々佳(ねねか)

「私も一緒に行くよ、カナタちゃん!」

「念々佳ちゃんも、来てくれるの!?」
「昔からの親友なんだから、当然よ!」
(いさみ)とウルスラ様も、此度(こたび)は宜しくお願い申し上げます」
「実戦経験を積めるなんて、私としても好都合よ。やってやるわ!」
「はい、お任せ下さい…!」
「そして…あなたは分隊長として、常にカナタちゃんと行動を共にして下さい」
「分かったよ、姉さん!」
土佐 高知城址

 17年前の巨大津波で壊滅し、復興せぬまま放置されていた高知城下町。


その地下に、虚人東山軍のアジトが張り巡らされていた。

山田(やまだ) ランスロ(Lancelot) 玉子(たまこ)

「うぅ…何故(なにゆえ)、こんな所に(それがし)が監禁されねばならぬのだ…ママぁ、助けて~!」

夢宮(ゆめみや) 魅咲(みさ)

「…私達、このまま死ぬのかな…」

 廊下から、足音が近付いて来た。
黒沢(くろさわ) 俄勝(がしょう)大姉(だいし) 蓬艾(ほうがい)

「お二方、お静かに。御膳を持って参りました」

「お前は、東山軍のサキュバス…さては某に、あんな事やこんな事をするのだろう! エロ漫画みたいに!」

「はい、その方向で前向きに検討しております…が、もう少し揉み応えが欲しいですね~」

「否定しないのかよ! しかも一言、余計だぞ!」
「…もう、死なせて…」

 黒沢俄勝は、周囲に自分以外の一味が居ないのを確認してから、静かに口を開いた。

「…間も無く、反東山連合軍が土佐に総攻撃を仕掛けます。この場所も、混乱状態に陥るでしょう。その隙に、お逃げ下さい…」

 そう言って食膳を置き、囚人達の凍えた体を(自慢の爆乳で)癒した俄勝は、立ち上がって着衣を整え、廊下の奥へと戻って行った。

「…さて、次は鷺原様の牢に配膳ですね」

東山(ひがしやま) 備中(びっちゅう)

「俄勝、御苦労だなぁ!」

「あら備中様、お疲れ様です(合掌)
「そんな淫乱な格好の癖して、礼儀だけはお上品なんて、抜け目ねぇ女だなぁ」

「んふふっ…お褒めの御言葉、ありがとう御座います。ところで備中様、近頃は女遊びが御無沙汰のようですが…宜しければ今宵、(わたくし)を抱きませんか?」

 驚くべき事に、その「東山備中」は、サキュバスである黒沢俄勝に誘惑されても、全く動じていない様子だった。

「わりぃな俄勝、俺はもう女に興味ねぇんだわ」
「おや、備中様らしくないですね…?」

「おいおい…この俺を、あんな頭わりぃ『オリジナル』と一緒にしねぇでくれ。俺達は『タウ型』だ。衝動的な情欲じゃなくて、冷静に知能で勝負するんだ!」

(…東山備中タウ型は、女人(にょにん)と交わらぬ無性生殖で一味を殖やす。色欲が衰えた分、頭脳が強化されている…)

「俺達が直接、女共を犯したりするよりも、奴らを遊郭で奴隷労働させてよ、そこの客から金を巻き上げたほうが、遥かに効率的な商売だと思わねぇか?」

(うわぁ…これは、元の備中様より(たち)が悪いかも…)


「なるほど…では、囚人への配膳、並びに食後の回収が残っておりますので、そろそろ失礼致します…」

「待て、俄勝」
「は…はい、なんでしょう…?」

「貴様が、敵に内通している事は分かっている。余計な真似をすれば、人質の命は無いと思え」

山陽道 周防(すおう)長門(ながと)宇部(うべ)

﨔木(けやき) 夜慧(やえ)

「…うわぁっ! また負けたよ…未玖ねーちゃん、お前は本当に強いな!?」

中本(なかもと) 未玖(みく)

「え、そうかな…?」
「次は何しよっか? 人狼ゲームなら、負けないぞ!」
「ごめん…そろそろ安芸(あき)(広島)に帰らないと、彼に怒られちゃう…」
「あ、お前(また)新しい恋人でも出来たのかよ?」

「そう…今後こそは、私を殴ったりしない人だから…」

(フラグ)

「俺は別に、気が合えば誰でも良いんだけどさ、たまに思うんだけど、いっそ女同士のほうが楽なんじゃね?」

「それはそれで、きっと本人達にしか分からない悩みがあると思うよ」
「帰り道は国鉄? それとも宇部空港?」

「私、飛行機に乗るの好きだから、宇部空港かな。工学を専攻したのも、機械に関心あるからだし」

「お前、何歳だっけ?」
「大学4年、確か…四国の偉い人と同い年だったはず。来年には、就職かな?」

「未玖ねーちゃんも俺みたいに、戦闘機の免許を取らないのか? てかさ、そんなに飛ぶのが大好きなら、空軍にでも入れば良くね?」

「私に軍人なんて、向いてないと思うけど…私は、どちらかと言えば、強さを求めるよりも、弱い子達を守る人になりたいな」

「じゃあさ、弱い奴らを守るために、強くなれば良くね?」
「ふふっ…まだ一年生なのに、最近の中等学生って鋭いね」

 3年後には、﨔木夜慧と共に早期警戒機などで活躍している中本未玖も、当時は就活生の一人に過ぎなかった。

「…ん? あれ、知らない奴からメールが届いた…なんだこれ、アメリカ軍が…とか書かれているけど、何か事件でもあったのか?」

北太平洋 航空母艦マーシャル

美保関(みほのせき) 大宰少弐(だざいのしょうに) 天満(てんま)

「あーあ…海路での長旅は、豊かな胸が凝っちゃいますね~。分隊長さーん、ちょっとあたしの爆乳を揉み(ほぐ)してくれませんかぁ~? お願いしますぅ~♪」

「あー、もう! さっきから人使いが荒いな…立場の違いを分からせてやる!」

「あははっ♪ ざーこ! こんな事でしかイキれない隊長、かわいそぉ~♪ でも、そんな隊長が好きですよ(はぁと)

 分からせたい、この笑顔。
「なんなんだよ、全く…w」
(じーっ…このカップリングは、ちょっと賛否が割れそう…)

 私達、十三宮カナタを先陣とする十三宮教会に、義勇兵の禅定門念々佳らが加勢した連合軍は、相模(さがみ)(神奈川)横須賀市からアメリカ連邦の航空母艦に搭乗し、四国へと向かう事になった。


この艦隊は、表向きには横須賀から琉球諸島に帰る設定だが、途中で四国方面に急北上し、土佐湾の虚人東山軍に奇襲攻撃を仕掛ける。


当然、この作戦は極秘なのだが…。

「…警報! 敵戦闘機の接近を確認! あの機影は、ロシア製…ターミネーターよ!」

「何故、このタイミングで敵機が…!?」

 別ルートで四国に向かっている嶺咲先輩(高等教育学校1年生)の部隊にも、この事を無線通信で報告し、助言を仰いだ。

《情報が漏れているという事は、艦隊の中に敵のスパイが潜んでいるかも知れません。警戒して下さい!》
「了解です!…あれ、敵機の通信が混線している? この声は、まさか…!」

ターミネーター(Su-37)

《おい、鬼畜アメリカ軍! 東京・沖縄・広島・長崎だけでは飽き足らず、また俺達の国、日本を焼き尽くす気か!? 舐めんのも、いい加減にしろ!》
「あれは…長州(山口)の化物、﨔木夜慧!」
「夜慧ちゃん、何を言っているの? 私達は、日本の仲間を助けるために…!」
《黙れ! お前達の野望は分かっている! 俺の故郷、長門を無差別爆撃するんだろ!? 俺に密告してくれた奴が居たんだ!》
《あぁ…どうやら、何者かの偽情報に、まんまと踊らされているようですね。これは、交渉しても無駄でしょう。逃げるか、戦うしかなさそうですね…》
《本来なら、私が今すぐ戦闘機に乗って迎撃したい所なんだけど、あいにく今は陸路で嶺咲ちゃんを護衛中だから、あなた達でどうにかして!》
「総員、戦闘配置! カタパルト起動! 艦載機、発進準備!」

「困ったな…この段階で空戦なんて、想定外だ…あ、美保関さん! 緊急発進できる?」

「あたし、空軍の戦闘機は操縦経験ありますけどぉ、海軍の艦載機は『処女』なんですよぉ~。あぁ駄目、あたしの初めてが…///」

 駄目みたいですね。
「じゃあ私、私が出撃します!」

「駄目よカナタちゃん、あなたはまだ操縦士免許を修了してないでしょ? ここは、私に任せて! 至急、スーパーホーネットを出して!」

「了解したわ。禅定門念々佳、発艦を許可する!」

スーパーホーネット(F/A-18E)

「アプリコーゼン中隊ポタージュ(スリー)、出撃します!」

 こうして禅定門念々佳が、広大な太平洋の上空で、﨔木夜慧との空戦を繰り広げる…しかし!

「…くっ! またレーダーから瞬間移動した! さては、あのスペックを発動したわね!」

 その様子を艦上から、固唾を呑んで見守る私達。
「夜慧ちゃんの戦闘機が、瞬間移動している…一体どういう事!?」
「いえ…夜慧様が速いのではなく、私達が止められているのです…」
「あ、聖お姉ちゃん。それって、つまり…」

「はい…﨔木夜慧様は、時間を停止する超能力をお持ちです。真正面から堂々と戦っても、勝てる相手ではありません…」

「では一体、どうすれば…!」

「やっぱり、念々佳ちゃんを放っておく事なんかできない! 私も一緒に戦う! 格納庫は、どこ!?」

「カナタちゃん、お待ち下さい!」
「カナタさん、どこ行くの!?」
(…夜慧の特殊スペックは、彼女自身にも大きな負荷を掛ける能力でもある。夜慧が疲弊するまで、どうにか持ち(こた)えられれば…!)

「さあ…お尻をロックオンしてやったぞ、念々佳! バックに挿入されたくなきゃ、さっさと降参しやがれ! さもなくば…!」

「お、念々佳ヤラれちゃう? 種付けされちゃう? やばw」

(他人事)

 しかし、次の瞬間…﨔木夜慧のコックピット内に、ミサイル急接近アラートが鳴り響く!

「…あぁっ!? 誰だ!?」

 急旋回して振り向いた﨔木夜慧の瞳に、見慣れぬスーパートムキャットが映った…!

スーパートムキャット(F-14D)

「…背後に気を付けなきゃいけないのは、あなたのほうだよ…夜慧ちゃん!」

「お…お前、無免許だろ!? 操縦できんのかよ!?」
「か…カナタちゃん、嘘でしょ…!?」

「十三宮カナタのスーパートムキャット、発艦を確認! 交戦を許可…って、もう既に交戦しているわね…」

「カナタちゃん、いつの間に…?」

「姉さん、ごめん…止めようとしたんだけど、カナタさん勝手に出撃しちゃって、もう手遅れだった…」

(…被弾したし、1対2だし、そろそろ燃料が尽きるし、これ以上の時間停止はリスクが大きい…畜生、ここまでだな…)

 﨔木夜慧は降伏し、ターミネーター戦闘機から降りて、私達の空母に出頭して来た。


艦上に出迎えた私達は、彼女を捕虜として拘束する…と思いきや?

「よう、さっき振りだな! お前ら、元気にしてたか?」
 降伏して捕虜になる、という自覚が全く無さそうな﨔木夜慧と…。

「夜慧、前よりも強くなったわね! さすがの私も、あのまま犯されるんじゃないかと思ったわw」

「あたし爆乳だから~、貧乳の気持ちとか理解できないんですけどぉ、あたしも貧乳なら、夜慧みたいに高速移動できるのかな? 貧乳って凄~い!」

「夜慧様、先程は見事な武芸でしたね。後で私にも、時間の止め方を教えて下さいね。ぎゅ~^^」

「夜慧ちゃん、お疲れ様! むぎゅ~っ^^」
 﨔木夜慧を捕縛するどころか、お客さん待遇で大歓迎する皆様であった。

「あの人達…さっきまで殺し合っていたのに、どうして、あんな優しい態度を…?」

「試合が終わればノーサイド、体育競技と同じです。戦争が終われば、敵も味方も、同じ人間として愛する…それが十三宮の、私達の信ずる道です」

「なんか、熱い友情系のバトル漫画にありそうな展開…かも知れない」

「きっとそこから、百合と薔薇の花が咲き乱れちゃったりするんですよね!? 嗚呼…分かりみが深い!」

 ギャーギャー騒ぎ回っていたら、そろそろ作戦決行の時刻が迫ってきた。


南西に航行していた艦隊が、一斉に北へと舵を切り、土佐湾に突入する!

「…私と嶺咲ちゃんが居ない時に、﨔木夜慧が奇襲しに来た…やっぱり、ちょっとタイミングが良過ぎるわね…さーて、私達も合流して戦うわよ!」

讃岐 香川臨時政府跡地

 古墳・寺院・城下町など、数多くの遺跡が広がる讃岐高松。


その門前に結集し、拳を突き上げる女学生達…そして、その先頭に立つのは…!

鵜久森(うぐもり) ミナト

「すぅ…叫べっ! 一揆団結! ボクらは無敵の『高松アベンジャーズ』だよ! このボク達に倒せない敵など、多分あんまり居ないよねっ!?」

 作戦計画に基づき、讃岐高松の大城エリザベス大佐に煽動されて決起した鵜久森団は、南四国を占領する虚人東山軍に宣戦布告し、彼らを四国山地(おび)き出して殲滅するべく、行動を開始した。

「弱者に死を! 悪には悪を! 弱さの象徴である虚人東山軍を、今日こそ皆殺しだ! 東山備中なんか、盗んだバイクで轢き殺してやるよっ!」

 語彙力が20世紀で止まっているとか、そういう事を突っ込んではならない。

「全隊、進め! 東山備中の血という血を、根絶やしにするまで戦えっ! 弱い奴、足を引っ張る奴、敵に背を向ける奴は、ボクが斬り捨ててやるよっ!」

 同じ頃、石本ユミカ大佐が率いる伊予軍本隊は、伊予・土佐を結ぶ予土(よど)鉄道を奪回するため、伊予宇和島から土佐へと侵攻した。

 また、義勇兵に志願した松山なつき少尉(中等学校2年生)阿波徳島に、双子の松山いつき准尉は淡路島へと出撃している。


四国全体、広大な南海道を作戦区域とする、歴史的な一大決戦の勃発である。


そして、私達は…!

激闘!土佐湾上陸作戦

「…備中様、敵襲です! 土佐湾に、敵方の水軍が来寇! 十字架を掲げし異国の黒船です!」

「おのれ、鵜久森の決起は陽動か! 虚人東山軍、戦闘開始だ!」
「「了解、侵入者を排除する」」

 総大将である東山備中タウ型の指揮に基づき、量産型の東山備中達が次々と起動・開眼し、戦闘形態にトランスフォームする。


同じ顔をした敵軍の群れに困惑しながらも、土佐湾に着岸した私達は、遂に四国への第一歩を踏み出し、上陸と同時に激戦の幕が開かれた!

「東山備中タウ変異株は、男性ホルモンが退化しており、精細胞も少ないので、襲われても着床・妊娠リスクが低く、女性も安心して戦えますね。では、交戦」

 安心できるのか分からない合図と共に、降り立った海岸から北へと疾走する!

瀬笈(せおい) 緋夏麗(あかり)

「神・救世主・聖霊の御名において、サタン東山を討ち、愛すべき隣人を救出する! 全軍、進め!」

「着岸したわ! カナタちゃん達、今よ!」
「高知エルダー中隊4番、十三宮カナタ! いざ、参ります!」
「カナタさん、援護するよ!」
「めぐちゃんも一緒だよ! 十三宮仁、戦わせて頂きます!」

 私達の眼前に広がる戦場、それは想像を絶する光景であった。


巨大津波で堆積した泥土の中に、かつて「高知市」と呼ばれた街の残骸が埋もれ、突き刺さっている。


数多(あまた)瓦礫、社寺の鳥居、英雄の彫像…そして、誰の物かも分からぬ人骨の山。


それらが散乱した泥土の上にあるのは、まさしく「滅んだ世界」である。


しかも、私達を待ち受ける敵は、同じ顔をした東山備中の大群。


「人間と人工知能が戦争する未来」とは、今この瞬間ここにあるのかも知れない。


敵・味方の弾幕が飛び交う中、量産型の東山備中を一体ずつ片付け、陣地を確保しながら前進して行く。

「お母さん・お父さん、カナタに力を貸して…!」

 3月に生まれた十三宮カナタの戦陣を彩る、両親の形見である二つの誕生石


父親から貰った髪飾りの血石(ブラッドストーン)は、十字架の救世主を語り伝え、その紅は敵の照準を狂わせ、弾道を逸らす。


そして、母親から貰った珊瑚(サンゴ)は、極楽浄土への解脱(げだつ)を導き、それを埋め込んだ剣が、迫り来る東山備中を、その罪と共に業火へと斬り裂く!

「…地形解析完了! 高知平野東部の南国(なんこく)海軍航空基地(高知空港)に、まだ使えそうな滑走路が残っています。それを確保すれば…!」

「南国…長宗我部(ちょうそかべ)岡豊(おこう)城があった場所で、確か戦時中には…いや、了解! 念々佳さん、南国飛行場を制圧してくれ!」

「了解、お任せ下さい!」

 再びホーネットに飛び乗った禅定門念々佳が、南国市に展開する虚人東山軍を掃討し、航空基地遺構の飛行場を確保する。


この滑走路を使えば、空母艦載機以外の戦闘機も離陸できるが、問題は、機体を滑走路まで運搬する時間だ。

「時間が足りない、だと? だったら、俺に任せな!」

 﨔木夜慧が時間を止めている間に、戦闘機を南国飛行場へと運ぶ。


胸も軍事費も肥大している美保関天満は、この時を待っていたという顔で、世界最強のステルス戦闘機ラプターを持って来たのだが…。

「旧海軍航空基地…この滑走路って昔、特攻隊が出撃した場所だよね…」

「アメリカと死闘するために建設された飛行場から、アメリカ製の戦闘機を飛ばす日が来るとはな…」

 操縦席に跨がった美保関天満は、眼を閉じて深呼吸しながら、雌餓鬼らしくない事を考えた。

(…あなた方が護ろうとした未来は、あたし達が必ず…!)
 そして、開眼した。
「アプリコーゼン中隊ポタージュ初号機、イキます!」

(…物凄く格好良い場面なのに、美保関さんが言うと、何故か「行きます!」が卑猥に聞こえてしまう…)

 ラプターに続いて、ステルス攻撃機ナイトホークも離陸し、十三宮カナタを上空から援護する態勢が整った。

「十三宮軍の前進を止めろ! 撃てーっ!」
「「了解、ターゲットを狙撃する」」
「…あ、分隊長! 避けてっ!」
「あぁっ!」
(吹き飛ばされ、倒れる音!)
「あなた、大丈夫!?」
「くっ…こんな所で、終わるなんて…」

(激痛と共に、意識が遠のいて逝く私…と思いきや、何かをプシュッと刺された感触と共に、嶺咲先輩の膝枕で目を覚ました)

「はーい、嶺咲先輩特製の鎮痛剤、お注射完了~♪ これで(しばら)くは、痛みを気にせず戦えますから、死なない程度に頑張ってね~♪」

「は…はい!(副作用が物凄く心配だけど)頑張ります!」
「チッ…歩兵だけじゃぁ、押し返せねぇか…俄勝、戦車を出せ!」
「戦車って、あれですよね? 馬に車輪を引かせる、古代地中海の…」

「馬車じゃねぇよ! 戦車だって、現代の戦車! チャリオットじゃなくて、タンクのほう!」

「すいません…私、江戸時代の亡霊ですので、近頃の流行りには疎い者でして…」

「いーから、さっさと戦車隊を出せっちゅーの!」

「あれは…虚人東山軍の戦車隊を確認! 気を付けて、タンクには銃が効かないよ! めぐちゃん先輩、雷撃を!」

「分かった、やってみる!」
 巫女服の少女が、両手に構えた2本の庖丁から、紫色の雷電を放つ…しかし!
「駄目かな…装甲が厚くて、内部にまでダメージが入らない!」
「うぅ…これ以上は撃てないよ~っ!」
「念々佳ちゃん、タンクを空爆して!」
「了解、私達に任せて!」
ラプター(F/A-22A)

「マルチロックオンミサイル、発射準備!」

ナイトホーク(F-117A)

「誘導貫通爆弾、投下!」
(爆音!)
「…命中確認、やった! 皆ありがとう!」
 一進一退を繰り返しながらも、戦況は少しずつ有利に…!
「…この上は、やむを得ねぇ! 俄勝、城を燃やせ!」
「そ…そんな事をしたら、囚人達が…!」
「もう構わねぇ! どうせ地獄に堕ちるなら、人質も皆殺しだ!」

「どこかに、お母さん達が幽閉されているはず…手遅れになる前に、早く助けなきゃ!」

「はぁ…おい、聴いてくれ…!」
「あ…夜慧ちゃん、どうしたの?」

「俺が時間を止めている間に、備中の脳内ハードディスクをハッキングして、地図データを抜き取った! 人質が監禁されているのは、高知城天守閣だ!」

「天守閣って、お城の上階にあるはずじゃ…この辺りに、それらしい城郭は見当たらないよ?」

「いや、それがな…津波で倒壊した高知城は、横転した状態で、この泥土の真下に埋まっているんだ! 今、出入口の座標を送る…あっちだ!」

 レーダーに表示された、救出地点の位置座標…それは、参謀の黒沢俄勝と、総大将である提督の東山備中が待ち構えている、敵軍本陣の方向と一致する…!

「仲間を助けるには、彼らと決着を付けるしかないって事か…!」
「…やるしかない! 全軍、突撃! 総攻撃だよ!」

「分かった…これが、最後の攻勢だね。神様・仏様、どうか御加護を…いざ、尋常に勝負です!」

「…まだだ、まだ終わらせねぇよ! 俺達は、誇り高き虚人東山軍! 例え玉砕しようとも、最期まで戦うぞ! 撃て! 撃てーッ!」

 前方から、弾幕の暴風が…いつ死んでも不思議ではない。


けれど…ここまで来たからには、もう後戻りはできない!

「「提督へのレーダー照射を確認、防御陣形に至急移行する」」
「量産型が、提督を囲む盾のように布陣を変えた! 最期まで、しぶといな…」
退()いて! 量産型に用は無いの!」
「「ぐはぁっ!」」
「東山様、お覚悟です…雷撃、発射!」

 庖丁を握り締めた両手に力を込め、思い切り飛び跳ねた空中から放つ雷撃が、前方に密集しつつある量産型を、次々と連鎖的に感電させる!

「「エラーが発生しました。原因、感電による熱暴走。トラブルシューティング中…再起動不能、強制シャットダウンします」」

「…はぁ…はぁ…その調子だ、お前ら頑張れよ…」
「﨔木さん、大丈夫? あんなに時間停止能力を使ったら…」

「いや、大丈夫じゃない…俺の能力は、時間を止め過ぎると、俺自身の心臓が止まるかも知れn…うっ!」

(バタッ)

「あ」
「や…夜慧ちゃん、死なないでっ!」

「夜慧様は、私が搬送します! 皆様は、とにかく前進して下さい! 本陣を攻め落とすのが最優先です!」

 﨔木夜慧を回収する嶺咲ウルスラと擦れ違うように、戦闘とは無縁な平和主義者…であるはずの司祭が、前線に出て来た。

「…私には、自らの呪術を見せびらかす趣味は御座いません…ですが、最愛なる妹達を、家族を守るためならば…」

「聖様! この先は戦場です、お戻りになって下さい!」
「ケルト十字展開! 女帝()皇帝()戦車()太陽(19)の正位置! 以上のアルカナにより、敵方からの攻撃は…全て無効です!」

「えー、それは禁止カードですよ~! さすがの聖様でも、そんなチートを使えるわけ…」

(パチッ!)
「…あれ? 敵の弾幕が急に消えた!」
「「リロード不能、原因不明」」
「聖姉様は(本気になると)とっても強いんだよ^^」
「だったら最初から、姉さんが戦えば良かったんじゃ…」

「…では、私は戻ります。ウルスラ様、後は宜しくお願い致します。私、戦争は苦手ですので^^」

 最強の姉、何事も無かったかのように撤収。

「え…あ、はい。全軍、カナタ様の最終攻勢を援護します! 銃撃部隊、撃ち方用意…放てーっ!」

 背後から嶺咲先輩の怒号と共に、今度は味方の援護弾幕が、私達の上下左右を(かす)りながら直進して行く。


その弾道の延長線上に待ち構える、黒沢俄勝と東山備中に照準を定めた私達は、とにかく走り(馬みたいな耳が生えてきそうなぐらい)我武者羅に走り抜けた。

「愛する者を救うために、自らの命を賭する…十三宮カナタ様、あなた方の勝ちです。これ以上の戦闘は無益ゆえ、撤退致します」

「俄勝、どこに行く!? 貴様やっぱり裏切るのか!? おい、待てってば!」
 そして、私達は遂に…眼前に残る敵将は「提督」こと東山備中タウ型だけだ!

「東山備中! 私を育て、愛してくれた人達のために…私、十三宮カナタは今、あなたを討つ! 焔纏(ほむらまとい)の構え、いざ覚悟!」

「覚えているぞ、お前は…あの日、逃げた餓鬼だな。そして今、親御の仇を討つべく舞い戻って来た…と。悪くねぇ度胸だ、来い!」

 この東山備中は、従来型のような小者ではない…悪党を率いる者たる矜持、独特の威圧感を持っている…だが、それを私達は乗り越えねばならない!

 十三宮カナタと東山備中は、どちらも火属性である。


義の焔と、偽の炎…二つの膨大な熱エネルギーが衝突した刹那、天地を斬り裂くプラズマが放電し、増援の量産型備中を次々と破壊した。

 そして、地下では…。
「…兄様! 助けに来てくれたの!?」

「魅咲…待たせてごめん! もう大丈夫だよ! 味方艦隊が迎えに来ている、脱出しよう! 皆さん、こっちです!」

「あぁ…助かった、今回は本当に死ぬかと思った…」

「よーし、捕虜の救出に成功! 後は、乗艦まで護衛するだけだ…あれ、誰か足りないような…?」

 高知城址に突入した十三宮軍は、強制収容されていた捕虜を全員、救出する事に成功した…が、その中に十三宮カナタの両親は居なかった…。

 プラズマ放電が収まり、戦場の視界が回復した時、この決戦に勝ち残り、最後まで大地に立ち続けていたのは…。

「…はぁ…はぁ…!」
 満身創痍の十三宮カナタ、その眼前には…致命傷を喰らった東山備中の姿が。

「…お前の、勝ちだ…だが、俺が死んでも…虚人東山軍の実験は、終わらない。新たなる変種が、貴様らを苦しめ続ける…その行く末、地獄から見ているぞ…」

「ひぃ…東山ぁ! わ…私は、お前をぉ…っ!」

「幸運を祈る、強き者よ」

(ポチッ)

「…え、まさか!」
「カナタちゃん! 伏せて!」

 敵軍総大将、東山備中タウ型提督は、体内(何故か股間)に仕込んでいた自爆プログラムを起動し、自ら命を絶った。


同時刻、土佐に展開していた量産型も一斉に自爆し、遂に土佐は解放された。

「…私達、勝ったんだ…もう駄目、おねんねする…」

(バタッ!)

「あー! 仁さんも死なないで~!」

 土佐奪還・四国統一作戦は、数千人もの死傷者を出す、壮絶な戦いであった。


しかし、この決戦で連合軍は、虚人東山軍に誘拐されていた捕虜を全員救出し、敵の総大将、東山備中タウ型と、その量産型を全滅させる事ができた。

讃岐 高松城最終決戦

 だが…私達には、最後の戦いが残っていた。


虚人東山軍という共通の敵が消えた結果、一時的に協力していた連合軍と鵜久森団が、再び対立する事になった。


鵜久森ミナト中尉は、自らが四国の支配者に成り上がる野望を目論見、石本ユミカ大佐の首級を狙って、伊予松山への進軍を開始した。


鵜久森中尉の野望を阻止するため、四国に駐留していた十三宮軍が、最後の最後の決戦に向かった…!

「目指すは、石本ユミカの首級だけだ! キミ達のような弱者に、用は無いんだよ! 消え()せろ!」

「鵜久森先輩…あなたは何故、こんな虚しい闘争を続けるのですか?」

「弱き者、石本ユミカは、かつて東山備中に純潔を売り飛ばし…忌まわしくも、奴の餓鬼を産み落とした…許せない! 東山の血は全て、淘汰されるべきだ!」

「…東山の血を引く子供には、生きる権利も、この世に生まれる価値すら無いと、そう言いたいのですか!?」

(…優しい嶺咲先輩が、珍しくガチギレしている…)

「ボクは、この世界に選ばれた、唯一最強の人間なんだ! 見せてあげるよ、ボクの力を…奥義『実像鏡面』万華(ばんか)開放!」

「う…鵜久森さんが、5人に増えた…!?」
「分身を操る超能力者…これが、鵜久森団の正体か!」

「慌てずに、一体ずつ片付ければ問題ありません。今回は、私も前衛で戦います。出て来なさい、我が忠実なる傀儡(くぐつ)達よ!」

 嶺咲ウルスラは、自身をデフォルメした縫い(ぐる)みを取り出し、それを鵜久森ミナトの分身に投げ飛ばすと、分身の一体が感電しながら消えた。

「「…そういう事か、少しはできるみたいだね」」
「「じゃあ、掛かって来なよ!」」

 こうして私達は、鵜久森ミナトの分身を、一体ずつ撃破していった。


しかし、最後に残った本体には、なかなか攻撃が届かない…!

障礙(しょうげ)の分際で、調子に乗るなよ! キミ達は、ボクの幸福追求権を侵害した! もう二度と、ボクの悪口を言うな! 破滅の瞬間まで、しばき倒してやるっ!」

 その時、見慣れぬ水色のレーザー剣が、鵜久森ミナトの足元に突き刺され、周囲の地面が凍結した!

「…!? 誰だ、なんの真似だ!?」

松山(まつやま) なつき

「…徳島での任務が終わって、伊予に帰ってリラックスしようと思ったら、アンタ達…さっきから元気そうに喧嘩しているわね。特に、そこの不良さん?」

「あなたは…?」
「誰だ!? キミまで、ボクの夢を邪魔するんだね!?」
「はぁ…アンタの意味不明な妄想になんか、興味ないよ。それよりも…アンタは自分が最強だとか、そんな事を言ってるんだっけ?」

「ああ、そうだよ! ボクは今まで、誰にも負けた事が無い! だから誰も、ボクの苦しみを理解してくれない! ボクは、弱い奴らなんか…大っ嫌いだ!」

「そういう寝言はさ、せめてアタシに勝ってから言ってみたら? そんなに自慢したいなら、アタシが教えてあげるよ…本当の強さってのをね!」

 その女学生…松山なつき少尉の水色と、鵜久森ミナト中尉の黄色、二振りのレーザー剣が鍔迫(つばぜり)り合い、火花を散らした…!

中立国共同体「南海コモンウェルス」結成

「…本日、私達は土佐の奪還を果たし、四国の統一を成し遂げました。莫大な犠牲の上に築かれた勝利を、決して無駄にしてはならないと考えます」

 遂に四国統一の夢を成就させた、伊予軍政府の石本ユミカ大佐は、全世界に生中継する記者会見を開き、建国宣言を読み上げた。

鳥羽(とば) 魅兎(みうさ)

「…今日は、歴史に残る記念日ッスね~」

「2666年、今日この時を以て、私達は…四国4県の同盟に基づく中立国共同体、南海コモンウェルスの結成を宣言致します! そして、その義勇軍の命名は…」

土佐 旧高知県庁跡地

 仲間達と共に鵜久森ミナトを撃破し、全ての戦闘を終えて疲労困憊の十三宮カナタが、最後の務めを果たしに来た。


かつて土佐高知の行政府があり、今は瓦礫と化した県庁舎の廃墟。


津波の泥土に折れて埋まっていた国旗ポールを立て直し、そこに新しい旗を掲揚する。

「さ…サイドワインダー土佐高知基地の建設を、い…今この場所に、宣言します…! わ…私達は、四国の義勇軍『サイドワインダー』です…!」

「…これは、歴史的な瞬間だ…カナタさん、撮影するよ!」

 瀬戸内海の平和を象徴するオリーブ、四国の天空を駆ける戦闘機に(なぞら)えたペガスス、純潔などの花言葉を持つ百合


南海コモンウェルスの義勇軍として、四国・瀬戸内海を守護する「サイドワインダー」の軍旗であり、その結成と、土佐高知基地の建設が宣言された瞬間である。


軍旗を掲げる十三宮カナタの姿は、全世界中に「リョーマの国、自由を取り戻す」というタイトルで報道され、絶大なる「いいね!」を集めた。


切望した両親との再会は、遂に叶わなかったが…それでも、今の自分にできる最善を尽くし、その名を歴史に刻んだ十三宮カナタ。

「これで…やっと、全ての任務が終わった…カナタさん、お疲れ様…」

「はぁ…ん、ありがとう…今日は、本当に…長くて、(つら)い…そんな、一日だったね…」

 か…カナタ、ちゃん…?

(…!)
「ん? 今、誰かの声が…?」
 それは十三宮カナタにとって、決して忘れられない声だった。
「…! 分隊長さん、一生のお願い! この瓦礫を退かすの、手伝って!」
「分かった! 中に誰か、閉じ込められているかも知れないからね!」

 そうして瓦礫の下を探すと、そこには…かつて旧時代に、アメリカとの戦争に備えた防空壕(シェルター)が掘られていた。


古くて壊れかけてはいるが、数人が避難できるスペースだけは残っていた。


そして…中に居た生存者二人の顔を視認した十三宮カナタは、滝のような涙を流しながら、満面の笑みで叫んだ…!

「…お母さん! お父さん! ただいま! 私を、産んでくれて! 育ててくれて! 待っててくれて! 生きててくれて! ありがとう…!」

 かくして十三宮カナタは、実の両親である鷺原夫妻との再会を遂に果たした。


今回の大活躍で、一人前の戦士として認められたカナタは、若き中等学生でありながら元服(成人式)を迎える事を許され、両親から「鷺原イズミ」という新しい実名を与えられた。


十三宮カナタ改め鷺原イズミは、父母と共に四国で暮らし、仲間達を護るため、サイドワインダー基地の将兵を養成する士官学園に転校した。

浦戸(うらど)湾 高知港

「聖お姉ちゃん・勇お姉ちゃん・ウルスラ先輩・めぐちゃん先輩、それに天満ちゃん・念々佳ちゃん、そして分隊長さん…お世話になりました!」

「何か御座いましたら、いつでも連絡して下さいね。カナタちゃん…いえ、イズミちゃん。あなたは、これからもずっと…私の可愛い妹なのですから^^」

「お手紙、たくさん書いて送るよ! お休みの日に、またいっぱい遊ぼうね! イズミちゃん、大好き! むぎゅ~っ^^」

「めぐ先輩、そこは私のポジションですよ! イズミちゃん、いつでも電話してくれて構わないし、暇なら戦闘機で直行するからね(笑)

「いつか自分も、そのサイドワインダーってのに入隊しようかな…?」

 傷病者の救護を終え、鷺原イズミの旅立ちを見届けた十三宮軍らは、四国からの撤退を開始した。


かくして四国の命運は、鷺原イズミらサイドワインダーを始めとする、現地住民の手に託される事となった…。

 そして、それから3年後…2669(光復二十一)年。


タウ型が死の直前に予言したように、東山備中の変種が次々と発生し、虚人東山軍との戦争は終わるどころか、むしろ激化している。

「…ボク達の任務は、伊予・安芸を結ぶ西瀬戸連絡橋の多々羅大橋を、虚人東山軍から防衛する事だよ! では、ハンター中隊の編成を確認するよ!」

 南海コモンウェルス及びサイドワインダーの中枢である、伊予松山基地。


立派な中隊長に成長した鵜久森ミナト大尉(高等教育学校2年生)と、鷺原イズミ訓練生(1年生)らの姿が、そこにあった。

「空戦隊の編成だけど…今回の任務から、イズミちゃんにはハンター(フォー)として、実戦に参加してもらうよ。ハンター(ファイブ)の新任士官ちゃん共々、頑張ってね!」
鷺原(さぎはら) イズミ

「はい、最善を尽くし頑張らせて頂きます!」

「イズミちゃん、改めて宜しく!」

「思えば3年前は、キミ達と敵対した事もあったのか…懐かしいね。あの頃のボクは未熟で、物凄く迷惑を掛けたと思う…情けないよ、ごめんね…」

「あー、そんな事もありましたねー(棒)

「あの時…キミ達がボクを止めてくれたから、ボクは変わる事ができたんだよ。イズミちゃんにも、なつき達にも、もちろんキミにも…感謝しているよ!」

「いえいえ、これからも宜しくお願い致します」

「さて…新生ハンター中隊、できれば6機編成にしたいんだけど、誰かハンター(シックス)を務めてくれる人、居る?(人員不足だから)居ないよねー?」

「いや、それが…」
「何人も居ます、あたし達の後ろに…」
「え…あれ、キミ達いつの間に…?」

「イズミちゃん、正式入隊おめでとう! 無二の親友として、私もハンターⅥに加入します!」

「百合の間に挟まるのは罪ですが、胸の谷間に挟むのは正義です! その事を証明するために、あたしがハンターⅥを務めます! おねがぁ~い♪」

「ん…え、私ですか? いや、さすがに不味いですよ(苦笑)私、表向きは虚人東山軍に属する、悪い女幹部なので…まあ、裏方程度でしたら…」

「誰でも良くね? あ、なつきが軟派した未玖ねーちゃん、早期警戒機の訓練、もう終わったのか? 必要なら、俺もアドバンスホークアイ(E-2D)乗ってやるぞ!」

「…あたし達のために、再び伊予まで来てくれるなんて…皆、本当にありがとう!」

 教会堂から西南西の空に、約6機の機影が見えた。
「…あら、綺麗な飛行機雲…イズミちゃん達、元気にしているでしょうか?」

「あの子達は皆、強く優しい騎士へと成長されました…きっと、大丈夫ですよ! 今年から短大生なので、実習などで四国に行きたいですね…」

「イズミちゃん達の、天空への航路に…どうか幸せがありますように^^」

「…ハンターⅤからハンターⅠに、間も無く今治(いまばり)大三島(おおみしま)に到達。また、併せて虚人東山軍の接近を確認! 中隊長、交戦許可を!」

「…3年前の記憶を胸に、改めて問う! ボク達は誰だ!? キミの名前は?」

「あたしは…サイドワインダー伊予松山基地ハンター中隊4番機、鷺原イズミ! ハンターⅣ、いざ交戦します!」

 飛行機雲を臨む南の大地には、未来都市として復活した高知城下町が広がっている。


再建された天守閣の展望台からは、何歳になっても元気そうな夫婦が、雲のカナタを駆け抜ける機影に向けて、大きく手を振っていた。

「…そして、あたしは…この世界で一番、幸せな4番機です!」
  完


  制作 スライダーの会

「…おい、団長! 基地を偵察していたら、この『鵜久森団語録ノート』を拾ったのだが、強そうだから読んでも良いか!?」

「あー! そ…それは絶対に読んじゃ駄目! ボクの黒歴史だから…!」
「あの頃のミナトは…んー、若気の至りだとしても許されなかったね(苦笑)

「えっと、何々…団長、この『死への(いざな)い漂う罪なる香水』って、なんすか?」

「だ…だから読むなって言ってるだろうがぁっ!」
 人は、時と共に変わる生き物である。

松山(まつやま) いつき

「あ…あれ、私の出番は…?」

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登場人物紹介

【愛在幻媛】まつやま

松山 なつき

南海道 阿波県 徳島市


蟹座♋7月7日カーネリアン・ルビー)

・一人称「アタシ」

・二人称「アンタ

・地位 中級生(身長158cm)

・専攻 数学

・属性 

・武技 レーザー剣・アサルトライフル

・愛機 バイパーゼロ攻撃機(対艦ミサイル)


 四国(南海コモンウェルス)の義勇軍「サイドワインダー」伊予基地に所属する中尉(後に中佐)天狗中隊の副隊長「ハンターⅡ」。阿波徳島への増援軍も担当。双妹に松山いつきが居る。


「石鎚天狗の御名において、アタシが…アンタを護る!」

【勇敢天泣】うぐもり

鵜久森 ミナト

南海道 讃岐県 高松市


双子座♊6月18日真珠

・一人称「ボク」

・二人称「キミ

・地位 中級生(163cm)

・専攻 体育

・属性 

・武技 レーザー剣

・愛機 ストライクイーグル攻撃機(弾頭爆弾)


 サイドワインダー伊予松山基地の大尉(後に大佐)、光剣による接近戦が得意。伊予石鎚天狗空戦中隊の隊長「ハンターⅠ」。讃岐高松への増援軍も担当。


「キミの未来は、ボクらと共にあるんだよっ!」

【暗笑海神】まつやま

松山 いつき

関西州 播磨県 淡路郡


蟹座♋7月7日カーネリアン・ルビー)

・一人称「私」

・二人称「あなた

・地位 中級生(156cm)

・専攻 国語

・属性 

・武技 妖刀「蒼雷神」・アサルトライフル

・愛機 スーパーホーネット艦載戦闘攻撃機(高機能ミサイル)


 松山なつきの双妹(二卵性双生児)。志は同じだが、なつき中尉よりサディスティックな性格で、接近戦での居合を愉しむ少尉(後に少佐)。空戦では三番機「ハンターⅢ」。淡路島への増援軍も担当。


「もう苦しまなくて大丈夫! 私があなたを、楽にしてあげる♪」

【炎天無尽】さぎはら

鷺原 イズミ

南海道 土佐県 高知市


魚座♓3月5日(ブラッドストーン・珊瑚

・一人称「あたし」

・二人称「あなた

・地位 後輩(身長148cm)

・専攻 地理学

・属性 

・武技 ハンドガン

・愛機 スーパートムキャット艦載戦闘機(長距離高機能ミサイル)


 幼名「十三宮カナタ」。伊予松山基地に所属するハンター中隊の四番機「ハンターⅣ」及び土佐高知基地(龍馬エルダー隊)への増援軍を担当する訓練生(後に大尉)。公私の合間に乙女の百合などを妄想する、典型的なカップリング屋。


「あの二人は攻守リバース可能か…あなたは、どう思います?」

【大慈大悲】いしもと

石本 ユミカ

南海道 伊予県 松山市


・蠍座♏10月24日オパール・トルマリン

・一人称「私」

・二人称「あなた

・地位 司令官(身長168cm)

・専攻 家政学

・属性 

・武技 ハンドガン・剣

・愛機 ステルス艦載戦闘攻撃機ライトニング(対艦ミサイル)


 無政府状態に陥った四国を懸命に生き延び、讃岐高松で訓練を受け、義勇軍「ハンター中隊」を編成。故郷の伊予を制圧して「サイドワインダー松山基地」を築き、四国4県を中心とする「中立国共同体 南海コモンウェルス」を結成した。兵士の頃は「ハンター零(ゼロ)」と呼ばれ、現在はサイドワインダー伊予司令官・准将(後に大将)を務める。石本のぞみの母。


「天より授かった生命…この子も、私も、あなたも…」

【獰猛傲慢】つちだ

土田 エリカ

南海道 伊予県 新居浜市


魚座♓3月16日珊瑚・ブラッドストーン)

・一人称「オレ」

・二人称「オメー

・地位 飛行教官(笑)

 (164cm・B85 W56 H84)

・専攻 航空学

・属性 

・武器 ムエタイ(手甲及び足甲装着)

・愛機 ストライクイーグル攻撃機(弾頭爆弾)

 エリカスペシャル(マルチロール化改造)


 サイドワインダー伊予松山基地所属の訓練教官兼飛行教官(笑)。通称「ヤーマン土田」。腕は良いのだが、傲慢な性格・気性難のため、訓練生からは反感を買ったり、士官や幹部からはドン引きを喰らったりしており、石本ユミカ司令の頭痛の種になっている。そのため、サドワTVでは「すっとこどっこい教官」や「噴飯者」「空飛ぶ猿(フライングモンキー)」とも揶揄される始末で、出演する動画の企画でも毎度ネタにされている。


「ふざけんじゃねぇぞ! オレは指導と戦闘以外は絶対やらねぇからな!!」

【不撓不屈】なかもと  みく

中本 未玖

山陽道 安芸県 呉市


蠍座♏11月6日トパーズ

・地位 孤児院職員(身長160cm)

・専攻 機械工学

・属性 

・武技 ショットガン・ハンドガン

・愛機 アドバンスホークアイ早期警戒機


 呉港から伊予松山へと、逃げるようにやって来た女性。入水自殺しようとした所を、松山なつき中尉(後に中佐)に保護される。その後は、サイドワインダー伊予松山基地の早期警戒機隊に配属され、ハンター隊の任務の遂行をアシストしている。


「一度は捨てかけ拾った命、人々の未来に使い尽くします」

【百折不撓】じょうこう

上甲 ミサキ

南海道 伊予県 松山市 道後湯之町


獅子座♌8月16日(スピネル)

・一人称「私」

・二人称「士官(あなた)さん

・地位 下級生(身長158cm・B86 W55 H83)

・専攻 家庭科

・属性 

・武技 レーザー剣

・愛機 パイパーゼロ攻撃機 (対艦ミサイル)


 二人組の東山備中「ビッチツインズ」に襲われた、道後温泉に住んでいた中等学生。サイドワインダーに保護され、出産後はそのままサイドワインダーに所属し訓練を積み、ハンター隊六番機(ハンターⅥ)を務めるまでに成長した。因みに、後見人は中本未玖である。


「この子の為にも、情けない姿は見せられない!」

【桜花爛漫】いしもと

石本 のぞみ

南海道 伊予県 松山市


牡羊座♈4月15日ダイヤモンド

・一人称「のぞみ」

・二人称「お姉ちゃん

・地位 幼児訓練生(身長112cm スリーサイズは保護者権限で測定不可)

・専攻 現時点では無し

・属性 

・武技 薙刀


 サイドワインダー伊予松山基地司令を務める石本ユミカ准将(後に大将)の愛娘。ユミカが東山備中を押し倒して腹上死させた後に産まれた。容姿や性格はユミカそっくりだが、万全を期す為、母の刻印(マザーズ サイン)が施されている。現在、幼稚園年中。


「ママはのぞみの事が大好きだしのぞみもママの事大好きだもん!」

【心救天使】おおしろ Sophia さくら

大城 ソフィア 櫻

南海道 讃岐県 高松市


牡牛座♈4月11日(ダイヤモンド

・一人称「あたし」

・二人称「士官(あなた)さん

・地位 中級生(身長156cm・B84 W56 H83)

・専攻 社会科

・属性 

・武技 アサルトライフル・ナイフ

・愛機 スーパーホーネット艦載戦闘攻撃機(高機能ミサイル)


 旧名「武方一(たけかた はじめ)」。車道への飛び込み自殺をしようとしていた所を大城椿姫に引き止められそのまま保護された女学生。その後は椿姫の養子となり、サイドワインダー讃岐高松基地で訓練を積み、ミネルバ中隊隊長(ダイバーⅠ)を務めるまでになった。


「あたしの命を拾ってくれた…本当に大切で、守りたい人達の為に戦うんだ!」

【松風水月】しまもと

嶋本 ゆづき

南海道 讃岐県 高松市


双子座♊5月28日(エメラルド

・一人称「私」

・二人称「士官(あなた)さん

・中級生(158cm・B83 W54 H85)

・専攻 家庭科

・属性 

・武技 レーザー剣・ショットガン

・愛機 サンダーボルト攻撃機(高機能対地ミサイル)


 山鳩児童院出身の女学生。大城櫻の高松基地での初めての友達であり、共にサイドワインダー讃岐高松基地で訓練を積み、ミネルバ中隊二番機パイロット(ダイバーⅡ)を務める。まれに櫻に対して重めの感情を見せる事も…。


「訓練も任務も…私と一緒だもん…♪」

【献身天女】おおしろ Elizabeth つばき

大城 エリザベス 椿姫

南海道 讃岐県 高松市


射手座♐11月23日トパーズ

・一人称「私」

・二人称「あなた

・地位 司令官(身長166cm)

・専攻 看護学

・属性 

・武技 刀・ハンドガン

・愛機 パイパーゼロ攻撃機(対艦ミサイル)


 石本ユミカと共に無政府状態下の四国を懸命に生き延び、讃岐高松で訓練を受け、義勇軍「ミネルバ中隊」を編成。故郷の讃岐を虚人東山軍から守り抜き「サイドワインダー讃岐高松基地」を築き、ユミカと共に四国4県を中心とする「中立国共同体 南海コモンウェルス」を結成した。兵士の頃は「ダイバー零(ゼロ)」と呼ばれ、虚人東山軍からは「血塗れ(ブラッディー)リズ」と呼ばれている。現在はサイドワインダー讃岐司令官・准将(後に大将)を務める。基督教プロテスタント教徒ではあるが「シスター リズ」とも呼ばれる。


「天命に従い、弱き人々を護り救う…それが私の贖罪なのです…」

【蒼天夏影】ささぎ シエラ

笹木 詩絵楽

関東州 相模県 南武郡 横浜市


魚座♓2月23日紫水晶

・一人称「あたし」

・二人称「あんた」「キープ(笑)

・地位 中級生

・専攻 生物学

・属性 

・武技 べアックマ機関銃(縫いぐるみ熊)

・愛機 戦車


 天国で暇な生活を送っていたが、色々と調子に乗って神の怒りを買い、下界に追放されてしまった堕天使。相手を誘惑して恋愛感情を抱かせ、自分に貢がせる「色恋営業」を得意とする。そのツンデレ小悪魔な言動で骨抜きにされた元カレ(ATM)達は、優に百人以上を超えるらしい。でも本人は「清楚な乙女」(自称)らしい。愛称「ささにゃん」


「か…勘違いしないでよ! あたしは優しいから、あんたを念のためキープしてあげてるだけなんだからね!?」


「こんなに沢山あたしの写真を撮るなんて、そんなにあたしの事が好きなの~? ふふっ♪」

【滅殺邪神】かんだ Ernst ゆうか

神田 エルンスト 遊火

西海道 肥前郡 伊万里県


蟹座♋6月30日真珠

・一人称「僕」

・二人称「先輩

・地位 下級生

・専攻 生物化学

・属性 

・武技 剣術


 日本帝国九州(西海道)出身だが両親を亡くし、各地を漂流しながら守るべきものを探求している。


「…僕はこの記憶を、先輩との想い出を、ずっと大切に抱いて生きたい…」

【花天月地】かげつちいん ようぜい

花月地院 陽成

西海道 薩摩県 川内市


・一人称「私」

・二人称「先輩さん

・地位 後輩

・専攻 化学

・属性 

・武技 呪符


 護符御札を用いた呪術を習得しており、札の文字に応じて「界」「攻」「治」の効果を領域に展開できる。彼女の「実家」であった花月地院は、関西周辺に存在したと言われる密教の寺院で、表向きは「神仏・陰陽の力で孤児を救う」などと騙って賽銭を集めていたが、実際には黒魔術を研究する邪教で、そのために子供達を誘拐・酷使していた。幼き日の陽成は、この花月地院に幽閉され「御本尊」に祭り上げられていたが、戦災で寺院が焼失したのを機に、九州へと逃れて今に至る。豊かに実りましたね。


「先輩さんは、この忌むべき過去を知っても私を抱き締めてくれますか…?」

【武猫妖巫】あべの つちみかど あやね

安倍 土御門 綺音

関東州 常陸県 水戸市


魚座♓3月6日ブラッドストーン

・一人称「私」「アタシ」

・二人称「アニャタ」「オミャエ」

・地位 後輩

・専攻 兵学

・属性 

・武技 回転連発銃(2丁)・ナイフ


 自然現象を占う陰陽師(儒家神道)の末裔で、現在は北関東工業地域常陸(茨城)に住むが、何故か猫の遺伝子が混入している。伝統的な陰陽道と兵法、そして最新の軍事智識を組み合わせ、顧客に兵器と作戦術を提供する武器商人軍需産業であり、現代の軍師。


「私を拾ってくれたからには、必ずアニャタを勝利へと導くにゃん!」

【夢音般若】ゆめみや みさ

夢宮 魅咲

西海道 火国県 肥後郡


双子座♊6月1日真珠

・一人称「私」

・二人称「士官様(しぃさま)

・地位 下級生

・専攻 芸術

・属性 

・武技 杖立


 夢宮乖離・十三宮顯の妹として、九州 肥後(熊本)に暮らしてる。「人を不幸にさせる能力」がある…と言われるほど人間不信だったが、本当は心優しい美少女。の呪力による、治癒魔法を訓練している。


「うぅ…自己紹介って、何言えば良いか分かんないめぅ…」

【天心乱漫】ゆめみや かいり

夢宮 乖離

西海道 火国県 肥後郡 阿蘇市


獅子座♌8月13日サードニクス

・一人称「私」

・二人称「あなた

・地位 上級生

・専攻 古文

・属性 

・武技 ライフル銃


 夢宮魅咲の姉で、妹よりも(色んな意味で)積極的な性格。魅咲とは別の学校に通っているようだが、その正体は「光と闇を操れる」「思い描いたものを創り出す」などと言われる、不可思議な存在でもある…。


「妹を、魅咲を幸せにすると約束して?…じゃあ、誓いの口付けを…」

よねむら おうか

米村 桜華


 夢宮家で暮らす少女。小柄な体格で、稲米の妖精と言われる。

【無心教愛】はざくら

葉桜 ヒナミ

関東州 東京府


・一人称「私」

・二人称「あなた(様)

・地位 下級生

・武技 感情辞典


 国民が望む「理想の配偶者」を政府が人造するという、究極の少子化対策である「愛人ホムンクルス」計画で生まれた少女の一人。申請者の好みで容姿・声・特技などを指定できるが、葉桜は人間の感情を理解する能力が欠けており、政府側からは「新品と取り替えて処分すべき不良品」などと言われている。


「その感情の名前は何ですか?」

よしの ゆき

吉野 雪

関東州 東京府


・一人称「僕(私)

・二人称「あなた

・地位 中級生

・武技 不明


 出会い系サイトで知り合った、ロリータ服の美少…女?


「あなたの優しい所が大好きです!」

Lodi

ロディ

関東州 相模県


・一人称「俺」

・二人称「プレイヤーさん

・地位 中級生

・武技 狙撃ライフル


 オンラインRPG『ドリームワールド』の(廃人)ヘビーユーザー。ゲーム内で自分のカフェを営み、スナイパー男子のアバターで行動する。


「昨日もイベラン、今日もイベラン、明日もイベランです」

【鬼神焔華】うすい たんばのかみ えんじゅ

碓井 丹波守 槐

関西州 山城府 丹後郡 大江町


・一人称「えんじゅ」

・二人称「しーたん

・地位 神童(身長140cm)

・専攻 体育

・属性 

・武技 戦斧


 京都大江山に祀られている神霊。百年~千年も生きているらしいが、外見や言動は子供のままで、士官を「しーたん」と呼ぶ。性格や戦闘能力は非常に良く、一緒に戦うと心強いが、気分屋であり寝ている事も多い。(翼が生えてないのに)神なので飛べる、そう神だからね。


「だってエンジュ、神様だもん!」

【妄神信仰】みねさき Ursula

嶺咲 ウルスラ

東海道 駿河県 静岡市 清水区


・一人称「先生」

・二人称「御主人様」「あなた様」

・地位 短大実習生

・専攻 看護学

・属性 

・武技 人形


 短期大学で看護学を探究し、学校看護教諭(保健室)の教育実習に励む女学生。十三宮教会に所属するが、四国の士官学園などに派遣される事もある。医療や心理学に詳しく、傷病者の救護やカウンセリングなど、皆の心身をサポートするが、相手を自分に依存させて支配するのも得意。自らを信奉するファンクラブ「嶺咲会」を率いて戦い、感電金属を仕込んだ人形で攻撃する。本名、東山あずさ


「大丈夫ですよ~♪ 先生だけはぁ、御主人様の味方ですからね~♥」

せおい あかり

瀬笈 緋夏麗


 1300年以上も生きている天使だが、今は現世に留まって十三宮教会軍に属し、地上に正義を実現すべく戦っている。天使とは思えぬ長短の兵装での暗闘を得意とするが、天使なので人間の感情に疎い所がある。

とさみや Naviryastoller せつな

十三宮 ナビリアストラ 瀨紲


 十三宮教会の家事を手伝っている、人型の戦闘ドロイド。周囲の物質を武器に変形させて戦うほか、薬学にも詳しい。

たちばな Mistral まこと

橘樹 ミストラル 聖寿刀


 後天的な異能に目覚め、十三宮聖の助手を務める鬼神。あらゆる武器を調達して戦う事ができるが、性格は優しく礼儀正しい。愛称「リリー」とも。

ことうら しずく

琴浦 雫


 元来は普通の少女だったが、狐のような耳が生えている半獣半人の後輩。を操り、で斬撃する。

【水神聖慕】みずかみ Jeanne うみ

水上 ジャンヌ 溟

中部州 甲斐県 北杜市 大泉村


・一人称「私」

・二人称「子羊

・地位 神姫

・専攻 水文学

・属性 

・武技 海王石


 外見は18歳以上だが、実は古墳時代の頃から生きている水の女神。昔は海岸平野で人と共に暮らしていたが、人間の環境破壊で高地へと逃れ、南アルプス赤石山脈に隠居した。人々の記憶から忘却され、誰にも信仰されない水神となりつつあったので、自分を見付けてくれた嶺咲ウルスラに感謝し、娘のように可愛がっている。七宝院学園の合宿や観光などで、甲斐の山岳に来る人々を見守ったり、美味しい地下水を恵んだりしている。


「迷い込み来たる子羊に、私の恩寵を…」

しば まい

司波 莓

中部州 美濃県 岐阜市


 古代の神話に登場する、大和朝廷に抵抗した辺境の種族「土蜘蛛」の末裔。先祖は碓井槐らと戦った事もあり、その伝説は能楽などの演劇に語り継がれている。現在は七宝院学園に属する肉食妖怪の少女で、中等学生の姿をしている。

あずみね あんご

與峰 菴吾

関東州 東京府


牡羊座♈4月1日

・一人称「私(わたくし)」「僕」

・二人称「  

・地位 書店長(身長182cm)

・専攻 国文学

・属性 

・武技 


 表では書店を営みながら、裏では諜報(インテリジェンス)活動に従事する店長。


「今に始まった事ではありません、きっと次は乗り越えられますよ…」

【厨弐想神】やまだ Lancelot たまこ

山田 ランスロ 玉子

教室の中心


・一人称「某(それがし)

・二人称「汝爾」「君」

・地位 先輩

・専攻 宗教哲学

・属性 

・武技 


 全国の学校に出没する、とにかく痛い上級生。そこに「教室」が存在する限り、どこにでも降臨する。


「…だから、某は卵ではない!」

【神槍黄泉】とさみや れいか さつき

十三宮 澪花 咲都季

関東州 東京府 東京市 蒲田区


魚座♓3月1日(ブラッドストーン

・一人称「文屋(ふみゃん)

・二人称「士官たん

・地位 下級生

・専攻 ロボット工学

・属性 

・武技 石剣


 旧称は「文屋(ふみや)咲都季」で、何百年も異界で暮らしていた妖魔の少女。天変地異による次元の揺らぎが、情報技術の急速な発達と重なった結果、異界と地球を出入りできるようになり、人間の世界へと遊びに来るようになった。日本人に擬態するため、十三宮顯の義妹(養女?)になって「十三宮澪花」という名前を与えられた。元来は狂気的な攻撃力を有するが、最近は人間に危害を加えず、普通に仲良くしている事が多い。今日も世界一、可愛いね。


「スリスリむぎゅ~っ! だーいしゅき♥」

【深淵虚人】ひがしやま びっちゅう

東山 備中

山陽道 吉備県 備中郡 高松町


 未来の科学技術で創造されたバーチャル宇宙「メタバース」から、現実世界の地球に侵入して来た、両性具有の人型生命体。自分以外の者が苦しむ姿を眺めるのが大好きで、欲望のままに子孫を殖やすという独善的な使命を掲げ、適当な人間(特に若い女性)を無差別に襲っている。他者の不幸を糧として、病原体のように繁殖・変異を繰り返しており、多くの「変種」や「量産型」が存在する。それらを率いて虚人東山軍という犯罪組織を形成し、日本の瀬戸内海などで暴虐を尽くしている。一見すると爆乳お姉さんだが、真の性別は…。


・(レッドベリル

・一人称「私」

・二人称「あなた

・地位 提督(無免許)

・専攻 性教育実技(笑)

・属性 

・武技 迫撃砲

・愛機 昴級空中戦艦


「あなたにも、私の神聖な遺伝子を孕ませてあ・げ・る♥」

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