起工、2つの駅モジュール
文字数 3,802文字
もともとミエくんは風景づくりにトラウマがあったのだ。
え、そうなんですか？
はい。車両工作は続けていたんですが、風景はずっと昔に大失敗して以来、敬遠してたんです。
でも、あのすごい奇車工場モジュールとか作ったじゃないですか。
でもこれは総裁に手伝ってもらったところが多かったから……。
でもとても素敵でしたわ。細かい作り込みがさすがでした。
そしてこの成功からミエくんは車両以外の工作にものめり込んでいくのだ。それがこの大崎バスターミナルである。
ミエくんがよく利用するようになったバスターミナルである。豊岡方面から東京直行の高速バスがここに止まるのだ。
うわー、すごい作り込み！！
でも表記類ができなくて、未完成なんです。
十分な出来だと思うけどなー。ヒドイっ。
けもフレバスとかいろんなバス置いて楽しめそうですね！
そんななか、ミエくんはワタクシの築堤骨組みを使いたいと言い出す。そしてつくりはじめたのが「某洗駅」、つなわち鹿島臨海鉄道大洗駅ショーティーなのである。
ええっ、一瞬実際の写真かと思いましたよ？ これ！
ガルパン、ガールズアンドパンツァーの聖地の一つですよね。
うむ。さすがの出来だが、これは7月末時点なのだ。
なかなかの長期戦になったのですわね。
そしてワタクシも駅のモジュールを作っておった。
風祭駅？ 箱根登山鉄道の？
建物の密集もみっちりだけど、信号とか踏切とかギミックも山盛りですね。でもなぜ風祭駅？ ヒドイっ。
うむ、それはミエくんが箱根湯本駅のプチラマを手に入れてのう。それにロマンスカーを並べたいというのだ。
でも箱根湯本、ロマンスカーが入れる線は1本だけだから、ロマンスカー2本は並べられないよー。
そこでロマンスカーが確実に行き違う駅を考えたのだ。登山線の駅なら駅が小さくても行き違いがあり得る。
でも今のダイヤだと、ロマンスカー同士が行き違うのは箱根板橋か入生田ですね。
そうなのだ。計算を間違えたのだ……。でも風祭駅、なにかぐっとひかれるところのある駅での。名前がまず良いし、駅の佇まいも楽しい。
確かに北側は街ナカですし、南側は野趣溢れる感じですものね。変化があって楽しいですわ。
ホームも短くてちょうどいいー。昔だったら非常コックでドアカットしてた面白い駅だしー。
昔は上下線の真ん中に駅舎がありましたね。そしてホームの長さが足りなくて、車掌さんが非常コックでドア開けてそこでだけお客さんの乗り降りさせてました。今は普通になったけれども。
そこではじめはミエくんの作りつつあるHiGSEとLSEの並ぶ駅を作ろうと小規模なプチラマとして作り始めたのだ。
ちっさ！ 結構小さいですね。これなら取扱も楽ですね。
それがまさかの大工事にっ！！
ひいい、なんでこうなっちゃうんですか！ ヒドイっ！！
コンパクトとは程遠いじゃないですか！！ なんでこんなことに！ ヒドイっ！！
それにはいろいろな事情があったのだ……。うぬぬ。
いろいろありましたよね……。
まあそれについてはあえて詳しくは言えぬのだが、結局こうやってミエくんとワタクシはそれぞれに駅モジュールを作ることとなってしもうたのだ。
しかしなかなかの苦戦続きでした……なかなかプランがまとまらなくて。
この仮止めの多さが苦悩を物語っているようですわ。
ふたりともなかなかの苦戦であった……。今回の戦い、やはり勝負を分けたのはロケハンであった。現地調査がものすごく仕上がりに自信をくれて、工作の進捗を早めてくれた。
私も弾丸取材で大洗行きました。現地で調べてくれる方もいたんですが、それでもやはり行きました。というか取材のためだけに豊岡から大洗に行ったんです。
ワタクシの場合は結局風祭駅を3回取材しておる。
それって、電車でお出かけしたかっただけじゃ……。
そうかもしれぬ。
え、否定しないんだ。
新車GSEのこともあるし、引退するLSEにもお別れせねばならなかったからのう。
そうかもしれませんわねえ。
ワタクシの場合、グーグル地図の航空写真で見たものの、なかなか詳細がわからなかった。それでもグーグル地図の3Dモードで理解しやすいところもあったので作り込むことができた。
これがワタクシの風祭駅モジュールのプラン図である。
結構みっちりになりましたね。
Google地図の3D機能を使って検討したのだが、この「かまぼこの里」の半地下駐車場がいまいちわからぬでのう。それどころか「かまぼこの里」の立体形状すらつかめなかったのだ。
え、ウェブに資料写真とかなかったんですか？
それが、ウェブにアップされている写真はどれも観光写真ばかりなのだ。いわゆるインスタ映えしそうな玄関の写真と中での飲食の写真ばかりでちっとも参考にならぬのだ。公式ページにも建物の写真は駅の反対側、国道側の写真しかなかった！
まあ、模型を作る人のための資料写真を商業施設が公式ホームページに用意はしないでしょうねえ。ひどいっ。
模型のために世の中があるわけではありませんですわねえ。
こういうとき我々が非実在女子高校生ではなく、実在高校生であればと思うのである。実在学生ならこういう場合、学校の社会科の先生に泣きついて「地域研究」とかの大義名分を得て、堂々と資料請求したり取材することがあり得るのだ！
一般人の資格だと、そういうことすると不審者扱いされて門前払いされるのが落ちですもんね。
それが「学生」の「地域研究」という錦の御旗があればどうどうと行えるし、さらには新聞やメディアの地域コーナーで取り上げ褒められられたりすることだってあるのだ。学生らしい真面目な学習活動として！
そうですわねえ。
こういうときほど我々が非実在女子高校生であることが恨めしいことはないのである！！
で、でも私達、非実在だから電車運賃とか特急料金とかいらないじゃないですか。みんなで鉄道旅行に行っても全部取材の著者さん一人分で足りるわけですし。
そうですわ。宿泊費も飲食費も一人分ですし、なによりも活動記録書かなくてもここまでの「鉄研でいず！」のバックナンバーを見ればいいわけですわ。そういうところは便利ですわ。
こういう非実在女子高校生の身分もなかなか便利、って、なんてメタネタなんですか。ヒドいッ！
うぬぬ、しかし若干理不尽なところもあるのだ。われわれも真面目に学習活動しておるのに。
やだなー、そういうのはいまさらだよー。
うむ。ゆえ、これをご覧の実在学生諸君には我々には望んでもできぬ、そういう研究活動を望むのである。夏休みの自由研究でもよいのだ。鉄道研究をただの鉄道マニアのダベリに終わらせず、そこから掘り下げてぜひ学習としてほしい。きっと物事の深い理解に役に立つぞよ。
それこそ「乙女のたしなみ・テツ道」の本義ですね。
さふなり。しかしこれは仕方がないことであることも理解しておるのだ。まずはわれわれ非実在女子高校生なりのテツ道の探求に邁進するしかないのだな。
そうですね。
ともあれ風祭駅モジュールの起工は4月15日、ミエくんの大洗駅の起工は3月30日ごろである。そこから7月末までこの2つのモジュールの建設は風祭駅104日、大洗駅は120日を経過した今もなお作り込み段階なのである！！（18年7月28日現在）
長期戦になりましたね……。
それだけ力作ってことですわ。
途中に悲喜こもごもいろいろなことがあった。しかし、JAMの展示本番まであと20日しかない。いよいよ押し詰まってきておる。
ちょ、ちょっとまって！ 著者さん、まだ風祭駅出来上がってないんじゃない？ それなのにこのトークメーカーに書いたりして、大丈夫なの？ ヒドいッ！
うむ、作り込みのアイディアに行き詰まるとこうして原稿を書いたり絵を描いたりしておるのだ。
それって、いわゆる浮気……ッ！
真面目に集中してやればもっと早く余裕を持って作れるんじゃないかなあ。ヒドいッ。
モデラーというものはそういうものだと存じますわ。工程一つ進めるためにはいくつもの困難があり、その困難を超えるためのアイディアが降りてくるのを待つ、いわゆる「天使待ち」を積み重ねていくものなのではないかと。
単純に「人月」では見積もれない作業ですからね。仕方のないところかもしれません。
というわけであと20日。おそらくこのトークメーカーの連載が現実に追いつく前にJAM本番を迎えることもあり得る。そのことは読者諸賢には御理解の上ご協力いただきたく。
そうですわねえ。リアルタイム更新というのは流石に無理かもしれませんわねえ。
そうですね。読者の皆さん、予め、ごめんなさいと謝っておきます。
これも良い展示のためですので！
そうだねー。
まあ、うちの読者さんたちはみんな聡明だからそこらへんは理解してくれてると思う。
というか、あたしたちがここまで散々めちゃくちゃしちゃって慣れっこになっちゃったのよ。ヒドいッ。
うむ。わが「鉄研でいず！」の読者は練度が高い精鋭揃いなのだ！
何めちゃくちゃ言ってるんですか。ヒドすぎる！！
でも、ミエさん、風祭駅より15日近く始めてたのに大洗駅、なかなか進まなかったんですね。
そうなんです。めちゃめちゃな大苦戦で……。
おっと、その話より先に風祭駅モジュール制作秘話を先にやるぞよ。
もうっ！ メタ記述はもういいかげんにしてくんしゃり！！
なんでいまさら「西郷どん」ネタなのよ！
もー。いちいちテレビネタが微妙に古いよー。
ともあれつづく！ なのである！！
