まだ見ぬディテールを求めて(後編)
文字数 3,939文字
後編、である!!
ワタクシは駅を出場し、駅周囲の観察を開始したのである。
しかしその前に北口側の待合室を撮影。これも資料写真がなかったのだ。
お座布団が待合室のベンチに敷いてある! かわいいなあ。
一般の人はこういうものに関心持たないよねー。でも模型作るわけじゃないから忘れてもいいんだろうなー。
にもかかわらず日常の記録は大事なのだ。どの時代でも絶対に同じ日常はないのだ。むしろこうしたありふれた日常の中に面白みを見出すのもテツ道の意義なり。
コンパクトだけどバリアフリートイレもあるし、バリアフリースロープもある。狭い敷地を目一杯有効活用してる。ヒドイっ。
ひどくないよー。デザインの使命「意匠を用いることで問題を解決する」を存分に果たしてるよー。
そしてかまぼこの里口方面の庭園である。Google地図の3D機能でもよくわからなかったのだ。
案外素敵な庭園ですわ。でも観光客の方は目に止めない感じなのでしょうか。
この見事な枝振りの植木、駅を降りたところ、駅にいたご老人がこの樹についてずいぶん熱く語ってくださった。きっとこの樹のお世話をなさっている方だったのかもしれぬ。
にもかかわらず、この樹に気づく観光客は少ないのでしょうね。観光地とはそういうものなんでしょうか。
観光ってそういうものなのかもなあ、みんなメインのかまぼこの里の玄関しか見てないのかも。ウェブにはこういう写真ないもんなあ。
しかし、こういう要素が豪華に数多く取り揃えられて観光地は形成されるのであろう。観光産業というもの、観光地というもので働く人々の生活や思いを読み取るのもまたテツ道的な観光地の味わい方であり、また取材であろう。
あ、かまぼこの里の建物の形状、これだとわかりますね!!
案外シンプルなスタイルであったのだ。しかし意匠によって非常に立体的に見える。こういう建築もまた学びになるのだ。
「汐風カフェ」というカフェらしい。このときはまだ準備中であったのだが、このカフェが見えるということは、カフェからもよく見られるということであろう。素敵な眺望のカフェ、いかにも観光地らしいのだ。
カフェ巡りも好きな神楽坂らせんさんが喜びそうですね!
これがGoogle地図ではよく見えなくて困ったのだ……。しかもこれを撮影しておる例も少ない。模型で作ろうと思わなければ日常ということで見過ごしてしまうようなものであるが、ここにも建築として、平成らしい意匠があるのだ。
この上に「風祭水車踏切」という踏切があるのだ。警報機も遮断器もなく、列車もホーンも鳴らさずにやってくるとても小さな踏切である。実際下のこの小川の音もあって、列車の接近に気づかず一瞬ドキッとしたのだ……。
それに「かまぼこの里」やほかの建物と駅ホームや線路の位置関係がよくわかりますわね。庭園を中心に三角形をなすようになっているのですね。
そのままの縮小ではあの狭いモジュールベースに収まりきらぬ。そこで要素を検討し、取捨選択して再構成して風景を情景にする。それこそレイアウトやジオラマ作りの楽しさである。
その脱構築、構築の営みは、まさに優れて哲学的で知的好奇心をかきたてられるものですわ。ただの箱庭づくり、療法的なものを超えたアートとしての意義を感じます。
しかしジオラマ、レイアウトづくりは実に楽しいものなのだ。女子にも強くオススメできる楽しい趣味であるぞ。
案外こういう建物の再現が難しいのだ。よく観察し写真を撮った。かといって撮りすぎてお住いの方々にメーワクをかけてはならぬ。その配慮が必要なのである。
半地下駐車場への入口である。これはモジュールレイアウトの中に入らないのだが、確認である。建物そのものの機能性の理解も大事であるのだ。
駅の北側の踏切も観察である。ここでワタクシはとあるものを見すごしていて、あとで戦慄するハメになるのだ……。
駅舎が可愛くて素敵ですわ。駅の佇まいもよくわかります。コンパクトさが良いですね。
ちょうど近所の子供達が引率の大人に連れられて電車を見に来ておった。
列車の運転士さんも手を振られるのに手で答え、そしてホーンを鳴らすなどのサービスであった。
その子どもたちのおった駅前の薬局がこういう建物なのだ。一見単純な建物に見えるが、見れば見るほど小さい割にはビミョウに作りにくい建物であるぞよ。
作り込めば作り込めそうですが、小さくて見栄えの面では苦しいかもしれませんわねえ。
この風祭駅モジュール、こういう地味な小さな建物の密集もテーマであるだけに、なかなかしんどい工作が想定されるのだ……。
うむ。なかなかモチベーション的に苦しいのだが、それでもやっぱり作ってしまうのは模型鉄としてのワタクシの「業」とも言うべきものかもしれぬ。
シンプルに見えるこの農協ですらも、自作するとなると地味にめんどい。だが、その面倒を楽しむのもまた模型である。
鯉のぼりの季節であったのだ。しかし鯉ではないところがいかにもかまぼこの里、海の街らしくてよかったのである。
かまぼこ天丼である。かまぼこの里で喫食したこの取材の日の昼餉であるのだな。
でも総裁これで満足できたんですかー。いつもおお食らいなのにー。
うむ、そこは欲しがりません勝つまではなのである。正直、観光地価格はヤバイと思うて我慢してしもうた。さらに汐風カフェでのお茶も我慢してしもうた。
ええっ、汐風カフェの取材しなかったんですか! 外からも見えそうだから作り込み楽しそうなのに! ヒドイっ!!
でもウェザリングって難しいですね。この工場の汚れは一体何なんでしょう? ものすごく派手に汚れてるけど理由がわからない。ヒドイっ。
うむ、でもそれを推理するのもまた模型を作り込む楽しみであるのだ。この世に理由のないものは存在しないのだ。ただその理由が人智を超えることは多くありうる。人など小さな存在に過ぎぬ。
多分これ、私が思うに雨垂れですね。雨どいのこの上の部分が壊れてそこからドバーッとなったんじゃないかと。
あ、そうか! 雨樋が壊れるってこと、ありえますもんね! そうかー。ヒドイッ。
さすがミエさん、観察力あるなー。この雨樋壊れてるって気づかなかったよー。
雨どいの底が抜けたのか、ここに本当は縦樋があったのだがそれが壊れてすっぽ抜けるようになったのか。それもまた観察すればよかったのだが、この時はそこまで気が回らなかったのだ。
ウェザリングとは汚す事にあらず。
構造から導き出される汚れを表現する事で立体感や構造を描写する技法であるのだ。ただ汚くするものではないのだ。
そうですわね。そこにこそ模型についての美学や美意識が出ますわねえ。
うむ。しばらく行き来するロマンスカーを撮影したりしておったのだが、引き上げることにしたのだ。
あれっ、小田原駅だ。これはもしかすると、小田原からまた料金不要の列車で帰ったんですか?
さふなり。このときはロマンスカーは諦めたのだ。一番この頃おサイフが逼迫しておったからのう。
あれだけロマンスカー大好きだったのに……。普段あんまり電車乗れないから奮発しちゃうのに。
でも普通列車からは立ち席前展望で第二菖蒲トンネルをもう一度見ることができたのだ。これも取材であるのだ。
そして第一回の取材は終わったのだ。でも多くの収穫はあったのだ。
「かまぼこの里」の大きさを考え、作図し、手でカットしていくのだ。
そして斯様になったのだ。一番目立つ大きな建物、「かまぼこの里」の建物が形になった。
まさにペーパー作成の威力発揮ですわ。この大きさのストラクチャーをこの時間で形にするにはペーパーでなくては無理ですわ。
迫力ある遠景の「かまぼこの里」と手前の密集の感じが出てきましたね。でも手前の建物は仮のモックアップですか? ヒドイっ。
モックアップは第2世代まで仮のもので、3回目に本番用の建物としたのだ。
用意周到ですね。限られた時間でイメージ通りに作るにはそうするのが良策ですね。
さふなり。だが、それゆえ更に工作が続くのだ。実に100日以上の工程が続く。
事実何度か息切れしたのだ。そのたびにモチベーション補給を工夫するはめになったのだ。
JAM本番に向けての長い戦いが続くのですわね……。
途中でワタクシは作業中に「マクロスΔ」の「AXIA~ダイスキでダイキライ」を聞くようになった。それだけ悲壮な戦いでもあったのだ。
それでも戦わぬわけには行かぬのだ。
戦いは次のエピソードに続くぞ!
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