進まぬ、工作

文字数 3,497文字

そのころミエくんの苦闘も続いておった……やはりミエくんはジオラマづくりにまだ慣れておらぬのだ。
ええっ、去年あんなすごい車両工場併設ミュージアム「奇車工場」モジュールを作ったのに?
総裁が散々支援したのに。ヒドイっ!
うむ、ミエくんにはいろいろとトラウマがあるのだ……。とくに鉄道模型ジオラマ、レイアウトづくりで超えなくてはならないいくつもの壁がミエくんに立ちはだかるのだ。
3月30日の時点です。駅舎は薄いし低いし、ホームの屋根は高いしその上1番ホームは片流れ屋根なのにV字屋根。気軽にGMビルキットとTOMIXミニホームで作れると思ったらこんななので、すっかり頭を抱えてしまいました…。
ベースこそ我が北急築堤シリーズの「よね高架」ベースを使うことにしたものの、あれは両脇6センチが法面になる設計。奥行き6センチでは駅舎の作りようがないのだ……。
屋根柱を8ミリ詰めて下げて、駅舎を5ミリさらに嵩上げしてみました。
慎重にイメージ作っていってるなあ。ザクザクペーパーで作っちゃう誰かさんと対照的よね。ヒドイっ。
うっ、それはワタクシのことではないか……。

ともあれミエくんは一度昔にモジュールを作って大失敗したトラウマとも戦わなければならなかったのだ。ゆえこんなに慎重なのだ。

1番線ホーム屋根は結局TOMIX対向式ホームから切り詰めて作りました。あとベースは総裁と相談して北急規格とすこしかえて線路位置をオフセットすることを考えました。
大幅にオフセット+奥行き追加とすることにした。規格を守ってつまらぬものになっては本末転倒であるからの。これで軌道を限界まで端にオフセットして手前に12センチの地盤を作ったのだ。これで余裕ができた。
しかしここで問題が……。
どうしたんですか?
ホームの屋根、鹿島臨海鉄道の列車に合わせて作っていたんですが、総裁から「鹿島臨海の車両って屋根低いよね」っていわれて。あ! と思ったら。

列車の屋根が当たるんです……せっかく詰めたホームの屋根が寝台電車サンライズとかの屋根肩に。

ひいい、それじゃ在来線のダブルデッカーとかはほとんどあたっちゃうじゃない! ヒドイっ!!
当然若干屋根がさらに高い我がオリジナル周遊列車「あまつかぜ」はあたってしまうことは必至!!
「あまつかぜ」ちゃんと屋根合わせればよかったのに……。
オリジナルシャーシを作っているうちに背が高くなってしまったのだ……。
それどころじゃなーい!
結果、屋根には柱をちょい足しして高さを確保しました。
ううっ、柱を詰めたり足したり……。すでにそんな苦労を。
しかしそれだけじゃすまなかったんです。駅舎の裏の渡り廊下をどうするのかとか、ほかにも駅の周りの施設をどう作るのか、難題山積で。Twitterで資料協力してくれる方も現れたんですが、どうにもGoogle地図の航空写真と現場写真ではイメージが掴めなくて。
とくにこの左側の自転車置き場テントが難問でした……。造形しようにも造形しにくくて……。
しかもテント裏側には謎のごちゃごちゃまであるのだ。こういうごちゃごちゃはよくわからないと作るのがしんどいのだ。しかし作らないと感じが出ない。まさに鬼門である。
このテント、どうやって作ってるんですか? プラシートのヒートプレス? もしくはまさかポリパテ?
瞬着とティッシュで盛っては削り盛っては削りで造形してます。すぐ固まるのでやりやすいんですよ。
うっ、それはミエさんにしかできない特殊工法……しかもそれだとテントの張りを表現するのは完全に立体造形……センスをすごく問われてヒドイっ!!
実際テントの張り感を出すのにすごく苦労しました。
そりゃそうだよねー。
でも少しずつ完成図が見えてきたような気がしますわ。着実に寄せていっているのがわかります。
でも、まだまだ未施工部分が多くてなんとも言い難いね。
このKATOのビル窓を流用したんですか! ほんとパーツ流用いろいろ思いつくなあ、
でも隙間が空くのでそこをどう埋めるか、目算がついていても不安でした。
あれっ!! なんですかこの埋め跡!
ホームと駅舎を位置決めしたら、ホームから降りる階段の位置があってなかったんです。そこで階段を埋めて位置をずらしたんです。こんな調整が他にもあちこちに。
ここまでですでにものすごい苦労……ヒドイっ。
待合室の風防はTOMIXの柵を切って作りました。TOMIXの線路柵、こういうのに使うには安くて使いやすいんですよ。
使いやすいってのは多分ミエさん限定だと思う……ヒドイっ。
連絡階段付近のケーブルダクトまで表現なさったんですね。細かい工作と作り込みが仕上がりを期待させてくれますわ。
でもこのケーブルダクト、使いたくても手に入らなくて。
結局ワタクシが手配して支援物資として回送したのである。
その側溝、ここにも使ったんです。
駅舎のひさしにも使えるなんて。流用のアイディアきまりすぎでヒドイっ!
このパーツ流用の着想の豊かさがミエくんの凄さなのである!
でも実際は工作がなかなか進まなくて。
いろいろともうどうしていいかわからなくて、こんなもの作ってました。
DML61Z、DD51のエンジンじゃないですか! もしかするとこれ、1/150、Nゲージサイズですか!?
さふなり。非常に非常識に細かい工作である!!
ミエさんよっぽどおい詰まってたんですね……。
それでも工作をやめるわけには行かないのである!!
力強く無理なこと言わないでください! ヒドイっ!!
しかもしばらく後に、ワタクシも5月病を罹患することになるのだ……。
ひいい!!全然だめじゃないですか!!
そこで思ったんです。せっかくだからエビコー鉄研の副顧問・舘先生の鹿島臨海の車両も並べたいので、奥に高架複線1本分の拡張をしたいなと。
このときできていた線路配置予定図をワタクシは見て、うーむ、と考え込んだ。
これがその時点での配置予定図である!
うわー、テクニカルコースだなあ。大丈夫これ?
しかし、大洗駅の裏に複線高架一本は置けることはわかった。ゆえ、ゴーサインを出したのである!!
JW-CAD大活躍ですね。
それで高架橋と橋脚をポチったんです。
いっきにワイドな風景になりましたね。 
しかもミエくん苦手のバラスト散布工作も迫られたのだ。
バラストホント苦手なんです……。生乾きのところでいじっちゃってぐちゃぐちゃになったり。
ああー、私もよくやりました。バラスト散布難しいですよね。
バラスト散布用の治具や、ストーンスプレーを使ったりする方法もあるが、バラスト散布の技術はいろいろ応用が効く技術であるからのう……。
ボンド水まきすぎてじゃぶじゃぶになったり。
そういうときは慌てずに扇風機の風を当て続ければ乾くぞよ。
著者さんが著者さんの元嫁さんに教わった方法ですよね。
うむ。新たな技術は失敗からしか学べぬのだ。
結果こうなりました―!
おおー、シブい高架上のバラスト線路になりましたね! 高架のウェザリングがすごくかっこいい!!
KATOの高架橋の造形のポテンシャルの高さはウェザリングによって明らかになるのだ。
すごーい。すごく実感的だなー。
ミエさんの観察力が遺憾なく発揮されてますね。
あと私の「奇車工場モジュール」との高さ合わせも心配でしたけど……ふつうに高架橋脚の上に載せたら合いました。
まさに僥倖である!!
ミエさんいつも追い詰められてもギリギリで運がツイてるよね。
ほんとそうよね、ヒドイっ。
おおー、一気に雰囲気出てきた!!
さらにワタクシから送った支援物資である!!
あ、3Dプリント製の機器箱(キュービクル)! 総裁が設計したやつだ!!
一度DMMから設計不具合で改修を迫られたが、無事出力できるように訂正したのだ。
これはKATOジオタウン用の電話ボックスですわね。
大洗にあるのとそっくりだったのでドンピシャでした!
これは洗車機……でもGMの洗車機とはずいぶん違う……。
ジオコレのバス車庫用の洗車機を切り継ぎで鉄道用に拡大したんです。実物もそんな感じですし。
ディテールを追加してこんな感じです。
スキのない工作だなあ!
結構進んできてますね!! 地面とかはまだだけど。
しかし、ここでワタクシはこの工作を見て、目が点になっておったのだ。
えっ、なんでですか?
これは5月30日時点。
我が風祭駅モジュールはそのときにはこうなっていたのだからの。
ひいい!! なんで突然工程がワープしてるんですか!! ヒドイっ、ヒドすぎる!!
これがペーパーストラクチャーの、工期圧縮効果……すごい!
だがここに至るまでワタクシも多くの苦しみを経ておったのだ。


それについては次回へ続く!!

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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。


*総裁のびっくりヒミツ能力(順次公開)

・隠れオッドアイ。安いラノベのキャラだと思われたくないので視力は悪くないのにカラーコンタクトをはめて眼の色を合わせている。しかしこのオッドアイのその眼を見てしまうと自白させてしまう作用がある。あまりにも危険なのでそれを抑制するためにもカラーコンタクト。


 ほかにもまだまだあります。

葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。

武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。

芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。


中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。

田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

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