憧憬のローズバーミリオン

文字数 2,536文字

総裁が奮闘しているとき、私、見つけちゃったんです……某オークションでジャンク出品されていた、赤いロマンスカーHiSE車を。
うむ、おそらくそのもとのオーナーさんは「RED EXPRESS」のようなJR九州スタイルにしたかったらしいのだ。だが、そのころは新ロマンスカーGSE車が最終試運転をおこない、テレビでも登場がCMで流れておった。久々の展望ロマンスカーの新車、まさに小田急はお祝いカラー一色であった。
それで、思っちゃったんです……HiSE車もいくつか手直しして、ローズバーミリオンに塗れば、GSEっぽくなるんじゃないかな、って。
でも理にかなってるのが鉄道模型界の新星・ぐそくむしさんがあっという間にGSEをもうNゲージで作っちゃってるんですよね。今から追いかけても追いつかないし、製品化の可能性も高い。となると基軸をかえてGSEっぽい車両を表現するのはネタかぶりしない上にGSEのエッセンスの車両を持てる妙手です。
私もそう思って、タネ車としてHiSEを手に入れて、さっそく加工に入りました。
まずセンターピラーを削って、もとのヘッドライトは埋めたのであったな。
すごくきれいに磨きましたね!!
あの薄いプラの展望室窓ガラスのモールドだけを取り除くのはなかなか繊細な工作力がいりますわ。すばらしい。
でも、片方をやるときにやっぱり無理させちゃって、破損しそうになったんです。
わ! スペアパーツだ!!
同じく自由形模型を作ってらっしゃる方がパーツを送ってくれたんです!!
この方にはわが「鉄研でいず!」ラッピングトレインのデカールも作ってもらったのだ。実に素敵な方なるぞ。
そしてAピラーの飾帯を作りました。あの実車のメタルに輝くところがカッコいいのが印象的でした。これを2組4本作ります。
またパンタグラフをシングルアーム化しました。
思えばHiSEはシングルアームパンタに換装されたことがなかった。長野電鉄に売却されても下枠交差パンタのままである。折りたたみ時の面積がぜんぜん違うのでシングルアームパンタの設置は小田急もやっていない加工になるのだ。
カーブで位置変化の少ない台車直上に摺板が来るという原則からこの向きにしました。でも一部当たるパーツが出るので、そこは切除したり移設したり。
そして床下もGSE実車に習ってカバーを取り付けました。実車はもっとスマートなインテーク付きのカバーなんですが、それはつくれないのでルーバーを取り付けてディテーリングしてあります。
メカニカルな感じが楽しいです! 独特の説得力があります!
そこでワタクシも遠隔地での作業を続けておった。
製図作業である。実車GSEのレタリング表現に習い、我々もレタリングを作ることとしたのだ。
窓上のマークや小田急のコーポレートマークも自作である。
号車番号をどう入れるかでも悩みましたよね。
GSEやVSE・MSEははじめから大きなレタリングで号車番号を入れることがデザイン段階で考慮されておったからのう……。
しかもこの大きなHiGSEロゴを入れる場所を考えていて、工作が思わぬ方向に行ったんです。
なんですかその思わぬ方向って……。
でも架空の車両を思いつく方はいらっしゃっても、それをこのように実際に走行する模型にするのはじつに見ていて楽しいですわ。
それが自由形鉄道模型のココロであるのだ。
レタリングをプリンタで出力してサイズを確認なのである。
あ、これだと側面のステップにレタリングが当たりそう。ヒドイっ!
そこは制作を行うミエくんに頼むしかないのである……。
あれ、これ、模型はKATOのHiSEですね。ずっと昔に出て以来絶版の。
ワタクシ所有のものなのだ。ずっと昔にジャンクで購入したのだが、カップリングが後でポロポロ折れて走行不能になったりしたのだ。そこはミエくんから3Dプリントによるパーツが届いて修繕可能となったのだが……。
このように版下を作り、専門の業者さんに作成を依頼するのである。
そして2色インレタになるのだ。
そしてこれが新ロマンスカーGSEの一番列車である。これを撮るためにワタクシは本厚木駅に行ったのだ。必要な模型パーツ購入も兼ねておったのであるが。
最近総裁撮り鉄するようになったねー。YouTubeにアップするためかなー。
うむ、それもあるのだが、日々の記録は大事なのだ。鉄道にも日々の生活にも同じ一瞬というのは一つもないのだからの。
それもテツ道なんだねー。
いかにも、である!!
他にも屋根上はかなり改造しました。運転室後ろをクーラー断面と連続させるように盛り上げ加工したり。クーラーもただつけるのではなく風防をつけてGSEに少しでも近づくように工夫しました。
そしてこれに派生してミエくんはさらに別のものを作るのだ。それもミエくんが豊岡から上京するときにお世話になっている「アレ」を作るのである。
なんかふたりともめちゃめちゃいろんな物作ったんですね。ヒドイっ。
ひどくないよー。創作意欲が溢れててすごくいいのに。
というわけで、ワタクシは著者を連れてついに旅立つのである。3月のことである!!
あ、あの旅ですね。
御波は気づいてちょっと複雑な顔になった。
さふなり。悲しい旅になるはずだった。それでも最後まで生きようとしてしまう。作ろうとしてしまう。これはもう「業」以外の何ものでもなかろう。
そして旅立ったのだ。
そこで、思いつめてたときにこれを渡されちゃったんですね、うちの著者さんは。
文業20周年のお祝いに個人誌を秘密のうちに作ってもらってたなんて。素敵ですわ。
完全に不意打ちであった……。
しかもその旅で早速就役間もないGSEに乗車したんですね。幸せそのものじゃないですか。
しかもいきなり展望席とか。幸せすぎますよ。ヒドイっ。
うむ、我が著者はいろいろと恵まれておるのだ。それが自覚できないところがなんとも残念であるのだ。
その後NovelJAMでもう一冠受賞したり。十分幸せですよ。
あ、それにチャンネル登録者数あと10人で再収益化の資格に届くじゃないですかー。
イキオイが出てきましたね。
ここで一気に畳み掛けるべきなのだが、なかなかそうはいってもいろいろすったもんだがあるのが我々なのだ。
えー。もうなれっこだけどー。
つづきます!!
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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。


*総裁のびっくりヒミツ能力(順次公開)

・隠れオッドアイ。安いラノベのキャラだと思われたくないので視力は悪くないのにカラーコンタクトをはめて眼の色を合わせている。しかしこのオッドアイのその眼を見てしまうと自白させてしまう作用がある。あまりにも危険なのでそれを抑制するためにもカラーコンタクト。


 ほかにもまだまだあります。

葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。

武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。

芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。


中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。

田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

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