終局の風祭駅!

文字数 3,934文字

実はワタクシ、この7月後半から8月はじめまで、風祭駅モジュールの製作について、失意でモチベーションを失っていた。
ええっ! ……やっぱりコンペ不参加のことが尾を引いているんですか?
考えぬようにしておったのだが、やはりもっとお客さんの近くで見てほしかった。しかし現状の配置ではテーブルの奥に置かざるを得ぬ。作り込みのやる気がかなり削がれてしもうた……。そして発送の荷物のJITBOXへの搭載についてもアイディアがわかなかった。行き詰まったまま時間だけが過ぎていく。
それは辛いですわねえ……。作り込んでも殆ど見えないなんて。
そこでミエくんの大洗駅の仕上がりが、ふたたびワタクシの模型心に火をつけてくれたのである。
え、そうだったんですか?
さふなり。作るのは自分の楽しみ、自分の満足のためにつくるのだ、という原則を思い出させてくれた。

他人が喜んでくれるのはもちろん嬉しい。しかし、そうでなくても模型作りというものは楽しいのだ、と。

とくに最終リハーサルでいろいろな光り物が予想以上にウケたのもそれを加速した。ディテールが見えにくくても光り物で取り返せるのではという目論見も生まれたのだ。それゆえ、この踏切を点灯式にしたくなった。踏切そのものは津川洋行の既成品を仮に置いていたのだが、それはミエくんの大洗駅用に回送し、自作踏切で行くことにしたのだ。
この時点でこんな状態であった。しかし、ここから作り込むのである!
いつものようにAdobeIllustratorで設計図を書く。
ちょっと大きめじゃないですか?
うぬ、チップLEDの1608を使用しておるゆえ、それに伴って他のものも大きくせねばバランスが取れぬのだ。
例によってペーパーモックアップを作っての検討である。
そして点滅回路を組む。PICにプログラムを焼き込んで試験点灯。使うPICはいつもの12F683である。
8個もLEDがパラパラと点くと迫力ありますね!
消費電力がPICの容量を超えそうで心配なのだが、今回はこれで行くのである。
クラフトロボで切り抜いた背板とチップLEDをあわせて発光信号とするのである。
手慣れたもんですね。
しかし一個だけ、試験では点くのに組み付けると点かなくなるのがあってのう。おそらくはんだ付け不良であったようだ。


断線と言っても今どきのコードはそのままでは断線せぬ。無理に力を加えた、無理に曲げた、傷つけた、そしてあとはその応力でハンダづけ部に力がかかった、などでなければ断線は生じないことも気づいた。

理由のない断線はない、ってことですね。
さふなり。むやみにこういう電子工作を怖がる段階からは進めたようであるのだ。しかし慢心はできないぞよ。
電気、危ないですもんねえ。
恐れず、侮らず、であるのだ。
そしてこのようになった。
1本で4個もLEDついて豪華でヒドイっ!
ひどくないよー。でも右側のノーマルの津川のものに比べてずいぶん立派な感じがしますね。
ここでもハッタリ性能重視なのである!
両側分作ったのである。
派手でヒドイっ。
ならばと光り物を集めてちょい楽しんだのである。
ピカピカでヒドイっ!
めちゃくちゃ派手ですね!
そして洋白線をはんだ付けして本番用の踏切警報機のフレームを組む。
はんだ付けに苦労の跡が感じられますわ。
もともとはんだ付けは溶接と違い接合強度を持たせることはできないという話も見ておったのだが、あえてチャレンジしたのである。結果は見た目ともに改善の余地ありであるが、これが限界であった。
限界までやれば十分ですわ。それ以上はできないものです。限られた時間と労力と資金の中でいいものを作るにはその3つをバランスさせるしかない。その3要素が無限にあればいいものができるでしょうけど、それは人間のものではないのですわ。
そうかもしれん。しかしワタクシはそこで常に葛藤してしまうのだ。
その葛藤もまたテツ道の大事な要素かもしれませんわね。
さふであるな。
このようにLEDを取り付けてみた。
LEDの配線が切れそうで怖い……。
このポリウレタン導線は案外切れないのだがやはり心もとない。この解決も難題であった。
設置してこのようになった。この踏切はマグネットで取り外し式である。
ネコの毛が積もってますね……。
二人もネコの人が居るからのう。もっとマメに掃除せねばならぬな。
でも雰囲気が出てますわ。
他にもやり残した工事を進めていく。かまぼこの里口の待合室に窓を入れた。中にはベンチも再現しておる。
ミニチュア萌えしますね。ヒドイっ。
農協裏工場の窓の入れ残しも入れた。
これはなんですか?
造花用の針金を巻いて樹を自作しようとしておるのだ。
針金を束ねて巻いて形を作り、それに造花用テープを巻いて幹にする。造花用テープには糊がしみているので巻き付いて木の幹独特の質感になる。しかしそのままでは糊にホコリが付いて汚くなるので、透明な特殊塗料でコーティングするのだ。
普段使っているフォーリッジクラスター、模型用の緑のスポンジをこう付けるだけで樹の感じが出るのだ。
なかなか思うようになってこのときは嬉しかったのだ。
えっ、このときは、なんですか?
その樹を設置したところである。
立体的な雑木林になったー。
樹木は呼吸するので雑木林は隙間が空いてないとおかしいのですが、これは感じが出ているような気がしますわ。
駅前の樹も造花用材料で作ってみた。マスキングテープで作ったよりはマシだと思う。だが、まだ満足はできぬ。
そして駅前に人を置き始めた。ベビーカーを駅前に持ってきて電車を見せている親子などを表現した。
感じが出てきましたね!
想定時刻はあの風祭駅に取材に行った10時前、9時40分頃と想定した。通勤通学客も少ない閑散とした午前中の静かな様子を表現したいのだ。あの静かさがとてもココロに残ったからの。
そんな中、とうとうこれを買ってしもうた。やや高いのだが表現力の高さでは有名な「ミニ・ネイチャー」である。さかつうギャラリー楽天市場店から通販で購入。
すごいっ。一気に樹らしくなった!!
できればこういうものに頼りたくないという気持ちもあったのだが、しかしこれほどの高い効果では回避はできぬ。
効果高すぎてヒドイっ!
レイアウトの出来も金次第である、と思ってちょい悔しいのだが、しかしこれは総力戦、斯様なことで迷うわけには行かぬのだ。
見違えちゃいますね……。やはり使うべきものは使うしかないですね。
圧倒的な表現力の差がありますものね……。
少し悔しいがそういうことである!
あまりにも効果的なので自作樹木の雑木林にも一部目立つところに使ったのである。
あ、汐風カフェの中に人がいる!
もともと大きさ確認用に作業員人形を入れていたのだが、店員さんを入れることにした。しかし! 適切な人形がなかったので「神社の人々」の巫女さんを置いて「巫女さんカフェ」にしてしまったのである!!
できれば1/150の人形を自作したいところですが、仕方ないですわねえ。
「かまぼこの里」玄関にも人を配置してみた。着物姿の女性は女将さん、こちらに歩いてくるのはコンサルタントの女性、向こうを向いてかがんでいるのは説明板を読んでいる早く着きすぎた観光客を想定しておる。
そういうストーリーを考えて人形を配置するのはとても楽しいですわねえ。
ホームにも人を配置し始めたのである。
女子学生と男子学生が線路を挟んだホームで向かい合う。学園ラブコメの定番シーンである!
「あなたのことがー!」「えー、聞こえないー!」「だからー!」って感じでしょうか。何かの漫画で見たような。思い出せないけれど。
まあありがちな展開であるからのう。
そこにこの列車が通りかかって全てが台無しになるまでが様式美である!!
ひいい!! なんでそれがディーゼル機関車DE10に牽引された客車なんですか! それもディーゼル発電機付きのスハフ14! こんな列車風祭駅には来ません! ぶちこわしヒドイっ!
はいー、模型製作中に模型でごっこ遊びしないー。時間限られてるんだからー。
でもやりたくなるのはわかりますわ。こういうの、楽しいですものねえ。
ホームの端には我が北急の作業員おじさんがたそがれておる!
駅前にも更に細かく作り込んでいく!
そしてかまぼこの里の屋根上をつくり忘れておることを思い出し、こんなものを作り始めた。
うわ、すごい階段!
ようやく透かし階段の作り方が確立できてきたのだ。
そして空調装置と一緒に設置である。
このディテール感が欲しかったのだ。
そしてほぼ完成である。完成の宴をオランジーナを開けて祝うのである!
できましたねー!!
あれっ、かまぼこの里玄関に掲示物が! それにあのパネルは……総裁の等身大パネルじゃないですか!!
風祭はこれでわが「鉄研でいず!」のもう一つの聖地となったのである!
まぁた勝手に聖地化ヒドイっ!!
しかし個々で気づいてしもうた。空調機の背が高すぎて、なおかつ工作精度が低い。
というわけで少し作り直した!!
あとから気になるところって出てくることありますものねえ。
そうしているうちに近所では花火大会。
またミエくんからの要望で奇車工場に掲示するポスターも作図した!
こんな具合に設置しましたー!!
去年よりだいぶ賑やかになりましたね!
ともあれ、これで風祭駅モジュール製作プロジェクトも終わったのだ。


終わったのだ……。

終わりましたね……。
お疲れ様でした。本当に。これがコンペに参加できたらなあ……。
しかしそれは言うても詮無いことであるのだ。
そうですわねえ。でも、これであとはいよいよJITBOXの発送、そしてJAMコン本番ですわね。
いや、そのまえにまだ最後の戦いがあるのだ。
ええっ、なんですかそれ! ヒドイっ!
それは続きにて!!
続きます!!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。


*総裁のびっくりヒミツ能力(順次公開)

・隠れオッドアイ。安いラノベのキャラだと思われたくないので視力は悪くないのにカラーコンタクトをはめて眼の色を合わせている。しかしこのオッドアイのその眼を見てしまうと自白させてしまう作用がある。あまりにも危険なのでそれを抑制するためにもカラーコンタクト。


 ほかにもまだまだあります。

葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。

武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。

芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。


中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。

田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色