平成最後の魂の10日間(2)運命-果たして間に合うのか?
文字数 3,884文字
どうにもこの「鉄研でいず!」、あまり読まれてないようだ。薄々と思うておったが。
だが、もともとこんな趣味に走った話がバンバカ読まれる方がどうかしておるのだ。世の中には万人ウケするネタはいくらでもある。それを書けぬ著者が悪い。
でも、万人ウケする話ってなんでしょう? わたくしはいくつかそういう話を拝見しましたが、わたくしたちの話でそれをやる理由は見出せませんでしたわ。
そうかもしれぬ。思えば鉄道模型用語も特に説明なくバンバン使っておる。そういうところの読みにくさはあれど、それ以上に万人受けしようとしても仕方がないと思う。なにしろ我々のこの冒険は、ワタクシたちが非実在女子高校生である他は実録であるからの。
そこはこれでも読んでくれる読者さんたちを大切にしましょうよ。私たちを理解してくれる数少なくても特別な読者さんたちですもの。ひどいっ!
ツバメちゃん、ひどくないよー。それは素敵なことだよー。
そしてなぜワタクシたちがこんなに鉄道模型に入れ込むのか、それもまた語らねばならぬ。
それは、すなわちワタクシたちに人並みの幸せなどあり得ぬからだ。子供を産み育て家庭を持ち死ぬ間際に孫に囲まれる、そんな幸せなどあり得ぬ。どうあってもありえぬ。死して屍拾うものなししかない。
確かに結婚とか出産とか、そんなこと考えたことないなー、そういえば。ぼくら確かに非実在女子だけど。
そもそもこの時代、それをやること自身もはや富裕層の特権であろう。第3子出産から補助金が貰えるとして、その第1子の出産になんのケアがある?勤務シフトに穴を開けるな、産休取るなと言われる愚かな世の中で何が第3子から支援であるのか。
それにうちの著者さんなんか、体壊して低賃金労働に甘んじてても、それに対して地域も行政もなんの支援もありません。一人暮らしだから体具合悪くても救急車呼べませんし。
それでどうやって第1子の出産、結婚などできる?しかも結婚したら馬鹿げた社会の圧力ばかりだ。結婚したことのあるうちの著者でもこの数年の基地外めいた社会の無関心と圧力に目眩がするのだ。
そんなことしてて少子高齢化が、なんて言わないでほしいわよね。少子高齢化せっせと推し進めてるのはほかならぬこの日本人じゃない。
だが! この社会で今更逆転などあり得ぬ。富裕層は言い訳を重ねて太り続け、社会から見捨てられた我々の行く先は絶望しかない。子供も産めぬ。作った鉄道模型もいずれゴミとして処分であろう。しかし! その鉄道模型でその無関心な社会を一瞬でも、ただの一角ででもあっと言わせ、一矢報いることができたら、それは一瞬ではあるが愉快極まりないのだ!
愉快……確かにそうかもしれません。役に立たないものだけど、人の心は動かしますものね。
役に立つものが心を動かすのは当たり前である。しかし、役に立たないものが人の心を動かし、一瞬でも夢中にさせる!それこそこの役に立たなければ人間であろうと必要ないとする腐った世の中に対しての一つの叛逆であり、報復であろう!
しかもそれを絵空事のフィクションでいくらそのことを言ったところでそれは商業主義、虐げられ搾取される人々の心に訴えてもそこからまた搾取して作り手はちゃっかり結婚したり子供産んで、しかもそれで矛盾したら「食べさせていくためには仕方ないんだ」と開き直りますものね。
牙を剥き血を流すと言っても、所詮商業の世界ではそんなものは計算づくの搾取のための演技に過ぎぬ。感動も搾取、印税も搾取。飴玉をやるからそのまま搾取されていなさい、ただそれだけだ。そのことを突きつければ「自分たちも搾取されている、みんな搾取されている」が始まるのだ。そんなわけがない。ちゃっかり搾取して儲けているのだ。ただそれを隠しているだけで。「もっと搾取してる人がいる」と逃げられるように。
ほんと、どうしてこういう世の中になっちゃったんだろうねー。
責任は明白である。自分たちは搾取の例外だから、ほかの誰かが搾取されてても仕方ない、それは自己責任だ、ということでどんどん他人を見捨ててきて、そのお鉢がついに自分にも回ってきたに過ぎぬ。社会の成長とは皆が幸せになるべく努力することであるのに、その社会の成長を否定して黄昏の国などと嘯き成長の意欲を失い他人を見捨て始めたところからこうなった。機序は明白なのだ。
でもその全てが遅過ぎますよね。もう偽りの財政健全化に消費税アップ、そしてくだらない根拠もない節約ブームであり得ないほど社会がデフレになり信用収縮が起きている。経済というものはその性質上、自然に1.8%はどうやっても成長してしまうのに、日銀の2.0%成長目標はいまだに達成できてない。
国民もバカにされておるのだ。そして政治家もまたバカにしているようでバカにされておる。今の世の中、だれも真実、だれも本当のことなど言わぬのだ。いうと損をするとみな信じ切っておる。だからそのせいで物も言えず読むものもロクでもない。だからこの世界に絶望して異世界を望むのだ。しかもその異世界ブームすら去りつつある。
そんな時代に鉄道模型をやることは、一瞬の抵抗になりえるのでしょうか。一矢報いることになりうるのでしょうか。
わからぬ。だが、役に立たぬことを役に立たなければなくていい世界に投じ、それであっと言わせることはきっとその一矢になるとワタクシは信じておるし、ゆえ轟沈の危機があってもこの出展に賭ける最大の理由なのだ。それで何も得られなくとも構わない。
だが、この勝負からは逃げるのはどうあっても最悪なのだ。これはそういう種類の勝負なのだ。
さふなり。大井町のベースキャンプとした民泊からビッグサイトへ出発である。ビッグサイトでは開場前の入場待ちがすでに800人!
それだけでも痛快ですわ。鉄道模型を見たい、ただそれだけでこんなに人が集まるなんて。しかも決して安くはない入場料を払ってもご覧になりたいなんて。すばらしいですわ。
そして1日目の展示開始である。初めから人人人の人垣がわが展示の前にできたのである。カメラに模型を収めるもの、目を見張って模型に食い入るように集中するもの。それを見て、ワタクシはやってよかったと心底思うのである。
さふなり。我が展示車両は実は少ないのだ。今回高架複線に地上2複線、合計6複線の展示なのだが、その全てを走らせるに値する趣向の列車が足りない。なにしろワタクシの保有車両はカスタムカーばかり、調子が悪かったりで全て稼働させるとしても足りないのだ。他にあるのはありふれた吊るしに近い車両ばかり。これでは御覧の皆様に申し訳が立たぬ!!
特に今回の展示のフラッグシップのHiGSEがまだ到着せぬのだ。
流石のワタクシも心細かった。かといって今更珍しくともなんともないほぼ吊るしの車両を走らせたところでなんの興もないのだ。
大勢人が見に来る。しかし見せる車両が足りぬ。その焦燥の中、ワタクシは少ない手勢で苦しんでおった。
そう、そこにHiGSEが到着したのだ。何が起きたかと一斉に人並みがどよめく! そして姿を表したHiGSEに湧く感嘆の声! まさに形勢逆転である!!
ああっ、わたくしにはガールズアンドパンツァーの「学園十色」が聞こえますわ!
ついにビッグサイトで今年の第19回JAMコン・メインテーマ「北海道」をガン無視の『大ロマンスカーマツリ』開催となった!!
ロマンスカーだらけ……。総裁のロマンスカー好きもここまで来るとすごいです。
でもよかったですわねえ。第1日目、無事車両不足の危機を乗り切れましたね。
第2菖蒲トンネルも所期の効果を上げ大活躍であった。
奇車工場の展示セットも活躍を始めた。この1/150のディーゼルエンジンの精緻さよ!!
新型と古参ロマンスカー同士の離合。背景には奇車工場下の商業施設。まさに平成30年の鉄道風景である! これがやりたかったのだ!!
たくさんの方が写真撮影なさってましたけど、それはプライバシーの関係上非掲載ですわね。
しかし心強かったぞ。そしてミエくんも「奇車さん」、ワタクシも「北急さん」と多く声をかけられて、実に幸せであったのだ。やってきてよかったのだ。
さふである。泥沼の底を這いずるような日常を真っ二つに切り裂く、見事な一矢となって、この日の歓声はワタクシのココロに焼き付いたのだ。
だが、これがただの一矢にすぎぬことも理解しておる。戻ればまた普段どおりの泥の底だ。
でも、それを忘れるほど、本当に素晴らしい瞬間であった。
さらにもっと素晴らしいものとなったのだ! それについては続くのである!!
次の回は図版が多くて華麗であるぞよ!!
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