ペーパーの限界へ

文字数 3,642文字

ワタクシはミエくんのような在来工法、プラ材による工作ではなく、ペーパー製ストラクチャーの可能性を突き詰めることとしたのだ。
そういえば総裁、昔ペーパー製Nゲージも作ってましたよね。印刷だけで塗装しないでカットして仕上げる鉄道模型。
うむ。塗装工程が省略できる上に造形もカッティングプロッタの利用で高速で行える。10両編成の車両がなんと2日で制作できてしまう。この製造能力はすごいぞ。
総合車両製作所(実在)みたいな量産能力! ヒドイっ!
北急総合車両製作所H-TRECを名乗っておるからのう。
水戸岡鋭治先生デザインのような細かなレタリングを多用した車両も塗装仕上げではなく印刷仕上げでできる。問題は湿気による経年劣化が多いことなのだが。
それでも今回の風祭駅モジュールにはペーパーを多用するわけですわね。
うむ。短納期で軽量に作り上げるにはそれしかないと判断したのである。
でもペーパーってなんかイメージ悪いなー。どうしてもふにゃふにゃな感じがするー。
それはペーパーの劣化後の姿しか見ておらぬからであろうの。
サクッとこんなものを作ったのである。風祭駅近くの農協裏の倉庫あるいは工場であるな。
あれー、なんかかちーっとしてるー!
やや大棟が潰れてしまったのだが、これもペーパー製である。ペーパーは経年劣化さえ回避できれば可能性は大きいのだぞ。
周りの建物が多い……これ全部プラで作ったらいつまでも時間がかかりますね。
というわけでペーパーによる作成しか方法がなかったのだ。
鉄橋も自作である。風祭水車踏切側、駅の端が鉄橋になっておるのだ。
鉄橋部分が鉄橋用の長い枕木になってる! こまかいなー!
ざっくりないものはゼロから作ってしまったほうが楽なのだ。
そこが私と総裁の工作の方針がぜんぜん違うところですよね。
しかし検討の過程でこんな事もあったのだ。
形が案外複雑過ぎて面倒そう……ヒドイっ!
しかも途中で文学フリマ(文フリ)に参加する著者を引率して東京モノレールに乗ったりしたのである。
総裁の顔が著者のポップに使われるなんて……。ヒドイっ。
文学フリマでの売上と広報効果を期するためにはこれぐらいやらないといけないのですわ。
そういえば詩音ちゃんは文学フリマ経験があることになってたよね。
その割には帰りのモノレールを間違えたりとなかなかヒドかったのである!!
総裁と詩音ちゃんいるのになんで天王洲乗り換えに失敗しちゃうの……。もう、著者さん、しっかりしてよ!
その後、5月は東京駅に赴いたのである!
あ、新幹線E4系、E5系、E6系が一枚に収まってる! E4系の撮り納めですか? E4系もうすぐ引退しちゃうから。
いや、著者の祖母の入院のお見舞いなのだ。
あ、秋田新幹線!!
わが著者の故郷は秋田であるからのう。いわゆるアキタ・チルドレンなのだ。
なんですかそれ……イミわかんないです!!
そこで著者はその祖母と会い、応援を受けたのである。
おばあちゃん長生きだったんですね。
地方文化ですね、秋田の地方新聞がある。
しかし秋田もまたこの平成の時代の地方の例に漏れず、なかなか苦しい状態であったのだ。
あっ、これは秋田JR土崎工場ですね!!
テツな見学も外さないのである。
583系……もう引退したけどまだ工場内にあるんですね。乗ってみたかったなあ。もう博物館で見るだけだもん。
さらに著者の親戚が秋田土崎にいることをいいことに、ここも見学したのである。
えええっ!!24系寝台客車じゃないですか!!もう引退して全部なくなったと思ったのに!!
どこかへ輸出するつもりだったらしい。寝台特急「あけぼの」に使われていた車両とのこと。しかし、輸出のあてが外れて現在港で野ざらしになっておるのだ。
もっと近くで見ることはできなかったんですか?
秋田土崎港のSOLAS条約という船舶と港湾の安全を守る国際条約による立ち入り制限区域の中にこの客車たちはおったのだ。フェンスの向こうから見ることしかできぬ。
そうかー。それは仕方ないなー。でもこのままだと海風でどんどん傷んじゃいますよ。
なんとか行き先が決まってくれればよいのだが……なかなかそうもいかぬようだ。
でもこれでテツ分の補充は万全ですね。これで風祭駅モジュールの制作進められますね!ヒドイっ。
うむ、このとき秋田の鉄道模型店も訪問したのだ。
現在地方で鉄道模型店が生き残るのはものすごく大変ですわ。そのなかで頑張っているその姿に敬意を表しますわ。
地域の鉄道模型・鉄道趣味文化の拠点であるからのう。我が著者の周りでもいくつもの模型店が消えていった……。小売構造が変わっていく時代とはいえ、それでも文化は残していきたいのう。
微力ながらわたしたち鉄研も応援したいものですわ。
うむ。そこでワタクシはやる気を取り戻し、制作に再び励むのである。
スタイロで作ったベースの上に紙粘土を盛って地形作成である。黒い紙粘土を使うともっと速く作れるのだが、今回はそうも行かなかった。買い物になかなか出られなかったからのう。
いきなりごちゃごちゃした街ナカ感が出てきましたね。風祭駅、街ナカと野趣あふれる水がひとつの役にあって面白いですね、ほんと。それに構内踏切の遮断機がまたイイ!
この遮断機、私が作って送ったんですよ!
流石の仕上がりだなー。
しかし工作中に一瞬見失って冷や汗をかいたのだ。すぐに見つかったのだが。
ひええええ。そんな、なくしたらすまないじゃすまないですよっ、ヒドイっ!
さふであるのだ。
そして地面を着色開始である。川底を灰色に思い切って塗ってしまえばよかったのだが、ここで及び腰になってしもうた。大きな反省点である!!
水面工作は難しいですもんねえ。
駅のホームも延長である。これで20m級車両が3両停まれるようになった。
でも停車させるためじゃないですよね。
さふなり。自動運転システムを組まない駅は基本、通過駅として使うことを前提でないとめんどくさくて遊びにくくなってしまう。ゆえ、よほど別にやりたいという意識がなければ、頭端式ホームなどは不用意に作るとあとが大変なのである。
でも風祭駅はスルーしてく列車もあるけど、行き違い駅ですもんね。どっちかは停まる感じですよね。
うむ。そこは致し方ないのである。そもそも単線の行き違い駅を複線に組み込んでおるから、無理は承知なのだ。
そうですよね。ヒドイっ。
一気に紙粘土を盛ってからここまで所要1日である。
早いっ、早すぎてヒドイっ!!
さらにホーム柵を作ったのだ。これはカッティングプロッタで紙をカットし、それに瞬間接着剤を染み込ませて固めたものを使うのだ。このモジュール、柵やフェンスが多いのでこれを作るのは回避不能であった。
窓サッシもカッティングプロッタで作ったのだ。なかなか制度の限界に近かったのだが、無事プロッタが切り抜いてくれた。
全部印刷だけよりこういう部分立体化してあると見ていて楽しいですよね。
そしてひたすら作図である!!
そしてひたすら切り抜きと組み立てである!!
ペーパー製なのにウェザリングしてあるんですね。
ウェザリングマスターの粉を少しつけて雨だれなども表現できる。しかし失敗したら一撃で終わりである。実は墨入れブラックを少し使って染み込んで真っ黒になり大失敗しかかったのだ……。これはそれを誤魔化してある。
ひいい。たしかに染み込んじゃったら拭き取りできませんもんね。ヒドイっ。
しかも窓あけをするわけには行かぬ建物もある…。窓開けすると強度が著しく落ちるので、フィルムを使って窓類似の表現で涙をのむことにもなったのだ。
ペーパー製にはペーパーなりの弱点がありますよね。
しかし圧倒的コスパと短納期で作れる利点は大きいのだ。
一気に町並みっぽくなってきましたね!!
どんどんモックアップを本番用ペーパーストラクチャーに置き換えていくのだ。
シブいアパートになりそうですね、これも。
そしてこの駅南側の民家も作って、すべての建物の置き換えが完了したのである。
早いっ!!
これがペーパーストラクチャーの力……ヒドイっ!!
ひどくないよー、すごいよー。
風祭駅駅舎も当然置き換えである。
駅舎2つあるけど、どっちも置き換えたんですね。
しかしここまで総裁、工作早すぎて本当にヒドイっ!!
正直このスピードには焦りました……。だってこっちの大洗駅はなかなか進んでる感じがしなくて。それなのに総裁はどんどん建物作って出来上がっていくんですから。
ここでさらに一気に畳み掛けるようにまさかの試運転である!! 高架線路を繋げばそのまま運転できるのだ!!
そしてワタクシの生誕祭6月6日を迎えたのである。
カルピスとケーキというのが健康的で素敵ですわ。
健康的って……詩音ちゃん、私たち、非実在だけど一応未成年なんだよ……。ほかに飲めるものないじゃない。詩音ちゃん、ほんとアブナイなあ。
でも、これで工作は終わりじゃないですよね。
いかにも。ここから工作はさらに進むのである! ミエくんの苦闘も続くのである!!
つづく!!
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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。


*総裁のびっくりヒミツ能力(順次公開)

・隠れオッドアイ。安いラノベのキャラだと思われたくないので視力は悪くないのにカラーコンタクトをはめて眼の色を合わせている。しかしこのオッドアイのその眼を見てしまうと自白させてしまう作用がある。あまりにも危険なのでそれを抑制するためにもカラーコンタクト。


 ほかにもまだまだあります。

葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。

武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。

芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。


中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。

田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

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