第12話 自分の存在を隠したい

文字数 409文字

 息荒く鼓動を速くして部屋へと戻ったケンジは、ドアを閉めて鍵までかけた。
自分以外の人間をこの場に入れたくない。自分以外にこの秘密がばれてはいけない。そんな思惟が彼をそうさせた。
(嘘だろ? 俺は――人を殺したのか?)
 信じたくはなかった。その疑いこそあれ、それを自分で認めたくはなかった。
 自分だけは自分の味方だと思っていたから。だがその自分も裏切った。その自分も自分は人を殺したと認識してしまった。
 もう逃げられない。
(え、え、どうなんの? 俺どうなんの? まだ子供だから許されるよね。死刑とかはなんないよね。でも少年院とか、そういうとこ入れられんのか? そうなったら俺の人生はこの先どうやって……いやだ、いやだ、俺は……俺は――)
 目から生暖かい液体が流れ出てくる。しかしその水がすべてを流してはくれない。悲しみも、罪の意識も、犯してしまった事実すらも。
 悲惨な現実に押しつぶされながらケンジはそのまま夜を明かした。
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登場人物紹介

鈴村里香 裏教育委員会員。教育実習生として潜入。

ケンジ 小学六年生。嘘をつくことが癖。

タカシ 真面目な小学六年生。ケンジの友達。

ヒロ 小学六年生。

深江ゆかり 鈴村教育実習生の同期

レイピア

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