第6話 ヒロが落ちそう
文字数 673文字
屋上の扉を開け放つと冷たい風が頬を撫でた。だが風はそこまで強くは吹いていない。それは山に囲まれているこの学校の立地のおかげだ。だからこそケンジとヒロはこの場所を選んだ。
「ヒロ君はどこ?」
「あそこです!」
ケンジが指差した方向にはマントを羽織った人影が立っていた。そこは落下防止のために備え付けられた柵の向こう側、あと一歩足を前に出したら落ちてしまうそんな危なげな場所だった。
「ヒロ君!」その背中に鈴村は叫んだがそれは何の反応も示さない。「なんでそんなとこにいるの!?」
代わりなのかケンジが答える。
「あいつ、マントつけたら空を飛べるとか言いやがって……」
「なんでそんなことを……」鈴村は柵まで歩みを進める。「ヒロ君、危ないからこっちにきなさい!」
だが反応はない。それにしびれを切らしたのか鈴村はとうとうその柵を乗り越えた。しかし、それだけではまだその人影に触ることすらできない。仕方なく、鈴村はその柵からも手を離して、命綱なしで屋上のふちへと歩いていく。
「ヒロ君、ダメだって飛べるわけないんだから。ねぇ、ヒロ君ってば!」
焦燥に駆られる鈴村の顔を見てケンジは必死に笑いをこらえていた。その隣でタカシも何とか笑おうとした。だが片方の口角が上がるだけのひきつった笑いしか作れなかった。
そうこうしている間に鈴村はそのマントを掴んでいた。
「タカシ」ケンジがまた耳元に顔を寄せてくる。「見れるぞ。驚きに顔をゆがめたあいつの顔をよ」
鈴村はマントをはぎ取りその人影の顔をあらわにした。しかしあらわにされたのはいつも前髪で隠れているヒロの顔ではなかった。
「ヒロ君はどこ?」
「あそこです!」
ケンジが指差した方向にはマントを羽織った人影が立っていた。そこは落下防止のために備え付けられた柵の向こう側、あと一歩足を前に出したら落ちてしまうそんな危なげな場所だった。
「ヒロ君!」その背中に鈴村は叫んだがそれは何の反応も示さない。「なんでそんなとこにいるの!?」
代わりなのかケンジが答える。
「あいつ、マントつけたら空を飛べるとか言いやがって……」
「なんでそんなことを……」鈴村は柵まで歩みを進める。「ヒロ君、危ないからこっちにきなさい!」
だが反応はない。それにしびれを切らしたのか鈴村はとうとうその柵を乗り越えた。しかし、それだけではまだその人影に触ることすらできない。仕方なく、鈴村はその柵からも手を離して、命綱なしで屋上のふちへと歩いていく。
「ヒロ君、ダメだって飛べるわけないんだから。ねぇ、ヒロ君ってば!」
焦燥に駆られる鈴村の顔を見てケンジは必死に笑いをこらえていた。その隣でタカシも何とか笑おうとした。だが片方の口角が上がるだけのひきつった笑いしか作れなかった。
そうこうしている間に鈴村はそのマントを掴んでいた。
「タカシ」ケンジがまた耳元に顔を寄せてくる。「見れるぞ。驚きに顔をゆがめたあいつの顔をよ」
鈴村はマントをはぎ取りその人影の顔をあらわにした。しかしあらわにされたのはいつも前髪で隠れているヒロの顔ではなかった。