第19話 友情は小学生にとって酸素よりも必要なもの
文字数 908文字
涙でぬれた顔を振り向かせるとそこにはタカシが立っていた。ケンジは泣き顔を見せたくなかったからか、それともバツが悪かったからか目を背ける。
「何やってんだよ、タカシ。今はホームルームだろ。こんなとこに何しに来たんだよ。来るなよ。どっか行けよ!」
「ケンジ……」
「何だよ! どうせお前もヒロとおんなじだろ! 俺とは違うとかそんなことを言いに来たんだろ。もう分かってるよ。分かったからそれ以上言わないでくれよ……。頼むよ……。もう嫌なんだよ。分かったから、……分かったからもう俺に……関わるなよ…………」
裏切られるくらいならもう関わりたくない。最初から関わりがなかったかのようにして欲しい。これ以上悲惨な現実を知らしめないで欲しい。そんな思いがケンジの内には込められていた。
だがタカシはそんな委細は構わずに言った。
「そんなこと言うなよ。俺とお前は……いつでも一緒じゃねぇか」
それはケンジにとって予期せぬ言葉だった。反省してもしきれない、取り返しのつかないことをしてしまった自分によもやそんな言葉をかけてくれるなんて思いもよらなかったから。
「え……」ケンジは涙で潤んだ瞳をタカシへと向ける。
「鈴村は死んだ。だがそれはお前だけのせいじゃない。止められなかった俺にだって責任がある。だから――」
タカシは階段を下り、ケンジの肩に手を置いた。
「俺もお前も同罪だ。今までもこれからも俺はお前と一緒だ」
「……タカシ」
「だからこれで最後にしよう。嘘をついて人を困らせるのはな」
「あ、ああ。でも俺は取り返しのつかないことを……」
「大丈夫だ。誠心誠意、事情を話せば分かってくれるって。田崎先生にそのことを話そう。心配するな。ちゃんと反省してるってことが分かればそんなに責められることはない」
「……でもお前まで巻き込むわけには……」
「いいんだよ。俺たちはまだやり直せるくらいには若いんだ。それに俺たちは友達なんだからな」
満面の笑みでそう言うとタカシはケンジの腕を取って、階段を上った。
そのタカシの背中を見てケンジは思った。
(友達ってこんなにもいいものなのか……。俺たちの友情は嘘なんかじゃなかったんだ)
という何とも当たり前なことを。
「何やってんだよ、タカシ。今はホームルームだろ。こんなとこに何しに来たんだよ。来るなよ。どっか行けよ!」
「ケンジ……」
「何だよ! どうせお前もヒロとおんなじだろ! 俺とは違うとかそんなことを言いに来たんだろ。もう分かってるよ。分かったからそれ以上言わないでくれよ……。頼むよ……。もう嫌なんだよ。分かったから、……分かったからもう俺に……関わるなよ…………」
裏切られるくらいならもう関わりたくない。最初から関わりがなかったかのようにして欲しい。これ以上悲惨な現実を知らしめないで欲しい。そんな思いがケンジの内には込められていた。
だがタカシはそんな委細は構わずに言った。
「そんなこと言うなよ。俺とお前は……いつでも一緒じゃねぇか」
それはケンジにとって予期せぬ言葉だった。反省してもしきれない、取り返しのつかないことをしてしまった自分によもやそんな言葉をかけてくれるなんて思いもよらなかったから。
「え……」ケンジは涙で潤んだ瞳をタカシへと向ける。
「鈴村は死んだ。だがそれはお前だけのせいじゃない。止められなかった俺にだって責任がある。だから――」
タカシは階段を下り、ケンジの肩に手を置いた。
「俺もお前も同罪だ。今までもこれからも俺はお前と一緒だ」
「……タカシ」
「だからこれで最後にしよう。嘘をついて人を困らせるのはな」
「あ、ああ。でも俺は取り返しのつかないことを……」
「大丈夫だ。誠心誠意、事情を話せば分かってくれるって。田崎先生にそのことを話そう。心配するな。ちゃんと反省してるってことが分かればそんなに責められることはない」
「……でもお前まで巻き込むわけには……」
「いいんだよ。俺たちはまだやり直せるくらいには若いんだ。それに俺たちは友達なんだからな」
満面の笑みでそう言うとタカシはケンジの腕を取って、階段を上った。
そのタカシの背中を見てケンジは思った。
(友達ってこんなにもいいものなのか……。俺たちの友情は嘘なんかじゃなかったんだ)
という何とも当たり前なことを。