第5話 先生、大変なんです!

文字数 377文字

「先生! 大変なんです!」
 案の定、教室のなかには鈴村里香実習生がひとりで佇んでいた。
 吸い込まれそうなほどに大きな双眸で鈴村は二人を見やった。もし二人が健全な成人男性だったならその輝きに一瞬呆けてしまうところだったが、あいにく二人はまだ毛の生え揃わないあまちゃんなのでそんなことに心奪われたりしない。
「どうしたの? そんなに慌てて」
 二人に触発されたのか鈴村も半ば戸惑うようにそう訊いた。
「……はぁ、はぁ、ヒロが!」演技だとばれてしまうのではないかと懸念するほどの大根ぶりでケンジは言った。「ヒロが屋上から飛び降りようとしてるんです!」
「え! なんで、ヒロ君が」鈴村は驚きのあまり口を手で覆った。
「とりあえず屋上に来てください! 早く!」
 ケンジは鈴村の手を取り、屋上へと引っ張っていった。その時、タカシには鈴村が少しだけ笑っているように、そう見えた。


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登場人物紹介

鈴村里香 裏教育委員会員。教育実習生として潜入。

ケンジ 小学六年生。嘘をつくことが癖。

タカシ 真面目な小学六年生。ケンジの友達。

ヒロ 小学六年生。

深江ゆかり 鈴村教育実習生の同期

レイピア

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