第29話 ひしゃげて汚くなったお金
文字数 465文字
「お前は自分が退くことで、ケンジに自分は悪いことをしたんだという事を自覚してほしかったんだ。そうすればケンジはもうこんな事件を起こさないと思ったから。お前は友情を犠牲にしてケンジを護りたかったんだろう? お前はケンジのために悪役になってやろうと、そう思ったんだろう? お前はケンジのことを誰よりも深く思っていたんだろ!」
「違う!」ヒロは激昂した。「違う違う違う違う。僕は金のためにあいつとの縁を切ったんだ。そこにあいつとの友情なんて一ミリもねぇ! 僕は……僕は……」
ヒロはその場に膝から崩れ落ちた。そして押し殺された低く小さな嗚咽を、肩を震わせながらひり出していた。
「ったく」鈴村はその丸まった物体を慰めるでもなく、背を向け車へと向かう。「なんでガキは嘘をつくくせに、そんなに嘘が下手なんだよ。……ほんとのことを言えばいいのにさ」
助手席に鈴村が乗ったその車は発進し、学校を後にした。
絶望に打ちひしがれ、あの友情はもう戻らないと知っている少年を一人残して。
少年の右手で握りつぶされているその金は、脆くひしゃげて汚くなっていた。
「違う!」ヒロは激昂した。「違う違う違う違う。僕は金のためにあいつとの縁を切ったんだ。そこにあいつとの友情なんて一ミリもねぇ! 僕は……僕は……」
ヒロはその場に膝から崩れ落ちた。そして押し殺された低く小さな嗚咽を、肩を震わせながらひり出していた。
「ったく」鈴村はその丸まった物体を慰めるでもなく、背を向け車へと向かう。「なんでガキは嘘をつくくせに、そんなに嘘が下手なんだよ。……ほんとのことを言えばいいのにさ」
助手席に鈴村が乗ったその車は発進し、学校を後にした。
絶望に打ちひしがれ、あの友情はもう戻らないと知っている少年を一人残して。
少年の右手で握りつぶされているその金は、脆くひしゃげて汚くなっていた。