第23話 校長と二人きりだと静かになっちゃう
文字数 750文字
「ああ、聞いたよ。だからそこは分かる。ただ俺が訊いているのは、
なぜ屋上から飛び降りたあなたが未だに生きているのかってことだ。言いたいことは分かるよな?」
田崎は射抜くような視線を鈴村の背中に向ける。それを感じ取ったからか鈴村はゆっくりとこちらに振り向いた。
「そんなの疑問にするほどのことじゃないですよ。なぜならそんなのは膝のクッションを使ったから、って理由で事足りるんだからさ」
「は? なに言ってるんだ。そんな冗談を聞くために――」
だがそんな笑いにもならない発言をした鈴村の顔は今までにない本気の顔だった。
それを見て田崎は戦慄した。
「……おい、まさかほんとに――」
「なぜ?」鈴村は冷淡な声で言った。「なぜあなたは自分が見てきたことがこの世の真理だなんてそう思えるの? なぜあなたは自分が知っていることが常識だなんて思えるの? すべては嘘かもしれないのに。みんな嘘をついてるかもしれないのに。あなたが知りえた知識や得てきた経験など結局はあなたの世界でのこと。
この世界にはあるんだよ。まだ人間が関知していない前人未到の地が、まだ観測できていない世界の果てが、まだ見たこともない暗黒の空間が、触れてはいけない闇がこの世界にはあるんだよ。
人は自分が培った常識でしか物事をはかれない。そのものさしから外れたものは認知できない。それが人間の性。人間を人間たらしめている要因。
だからこそ私たちは撥ねられる。世間からひた隠しにされる。人類生態学やダーウィンの進化論を全否定してしまう私たちのような存在は、一国の軍事力をも超える『暴』を持つ私たちはこの世にはいてはいけない存在。
闇に生きるしかないんだよ」
最後に鈴村は悲壮な顔を浮かべて校長室を出ていった。重く深遠な静寂が、残された校長と田崎にのしかかっていた。
なぜ屋上から飛び降りたあなたが未だに生きているのかってことだ。言いたいことは分かるよな?」
田崎は射抜くような視線を鈴村の背中に向ける。それを感じ取ったからか鈴村はゆっくりとこちらに振り向いた。
「そんなの疑問にするほどのことじゃないですよ。なぜならそんなのは膝のクッションを使ったから、って理由で事足りるんだからさ」
「は? なに言ってるんだ。そんな冗談を聞くために――」
だがそんな笑いにもならない発言をした鈴村の顔は今までにない本気の顔だった。
それを見て田崎は戦慄した。
「……おい、まさかほんとに――」
「なぜ?」鈴村は冷淡な声で言った。「なぜあなたは自分が見てきたことがこの世の真理だなんてそう思えるの? なぜあなたは自分が知っていることが常識だなんて思えるの? すべては嘘かもしれないのに。みんな嘘をついてるかもしれないのに。あなたが知りえた知識や得てきた経験など結局はあなたの世界でのこと。
この世界にはあるんだよ。まだ人間が関知していない前人未到の地が、まだ観測できていない世界の果てが、まだ見たこともない暗黒の空間が、触れてはいけない闇がこの世界にはあるんだよ。
人は自分が培った常識でしか物事をはかれない。そのものさしから外れたものは認知できない。それが人間の性。人間を人間たらしめている要因。
だからこそ私たちは撥ねられる。世間からひた隠しにされる。人類生態学やダーウィンの進化論を全否定してしまう私たちのような存在は、一国の軍事力をも超える『暴』を持つ私たちはこの世にはいてはいけない存在。
闇に生きるしかないんだよ」
最後に鈴村は悲壮な顔を浮かべて校長室を出ていった。重く深遠な静寂が、残された校長と田崎にのしかかっていた。