第16話 塔を目指した話

文字数 737文字

 エルフのお姉さんの案内で私たちは塔を目指すこととなった。

「吸血鬼に吸血されすぎて干からびそう……」

 晴天がどこまでも続く。
 大地は涸れはて砂埃が舞う。
 町から離れたとたんに砂漠の砂と石がどこまでも続いていた。

「大丈夫?」
「散々吸血して置いて大丈夫なわけないでしょう!!

 私の心配をよそにエルフのお姉さんは大変元気でした。
良かった良かった。

「良いわけないでしょ!?

 大変血色が良くなってわめいているエルフのお姉さん。
そのお姉さんの声を聴きながら空になった酒樽を被ったままの男に視点を移した。

「ちょっと、俺はいつまで酒樽を被ったまま歩かないとダメなの?」
「日焼け防止にちょうど良いかもしれませんよ?」
「そもそも吸血鬼のお姫様が灼熱の炎天下の中を涼しく歩き回っているのが異常だと自覚は無いのか!?
「無いですね」

 男と私の会話はたわい無い会話。
それでも得るものがある。
この世界の吸血鬼は私が知っている吸血鬼と同じで日光には弱いらしい。

「エルフのお姉さん。その雲の上のさらに先まで伸びている構造物はかなり遠いのですか?」
「徒歩で行くならかなりの距離よ。はっきりいってこのまま歩いていたら私達遭難するわ」

 周りを見渡し確認をする。
 まだかろうじて見える出発した町以外に人家がありそうなところは何も見えない。

「それでどうするの?」
エルフのお姉さんの質問に私は考えた。

「なんとかなるでしょう」

 この答えに酒樽を被ったままの男が叫んだ。

「何とかなるわけないだろう!!

 酒樽を被ったままの男が叫んだ直後。
 酒樽を被ったままの男の真下の地面が隆起して男を空高く吹き飛ばして何かが飛び出した。

「よくも仲間を三枚下ろしにしたな!!

 私は、移動手段を入手できるのかもしれない予感に微笑んだ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み