第89話 吉報を待つ話

文字数 530文字

 男を仕事と割り切って肩に担ぐと、エルフのお姉さんが話していた辺りまで一気に移動してから男に確認を取って、温泉地の保養所を真珠で交換できないかの調査を指示します。
もちろん私は報酬の先払いにと一番小さな真珠を渡しました。

「だからって、いきなり噛みついてくるのは何を考えているのよ?」

 エルフのお姉さんが首筋に手を当てて怒っています。

「温泉地の近くまで男を担いで一気に移動して、帰りは荷物なかったけど一気に帰ってきてお腹空いて喉が渇いていたからです」

 私の分かりやすい説明にエルフのお姉さんは納得していません。

「私以外の人魚とか元友達に噛みつきなさいよ!」
「だって一番慣れ親しんだ味なのですもの!」

 もちろん他の美人も大好きです。

「吸血鬼なのに吸血鬼らしさの怖さも威厳も無いから不思議な感覚だわ」

 エルフのお姉さんは困ったような表情で独り言を言っています。
威厳も尊厳も無いと言われても困りますが。

「しかし金を稼げる吸血鬼で噛みつかれるけど、その程度で贅沢させてくれそうだから……」

 エルフのお姉さんがさらに独り言を続けています。

「ここは妥協して割り切った方が得なのか……。それとも賞金の方が得なのか……」

 エルフのお姉さんの精神的強さは賞賛すべきレベルのようです。
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