第6話 面接前のひと時
文字数 1,089文字
定刻となり、一次選考会が始まった。
「皆様、本日は数ある会社の中から、当社『キャリアソウル』の一次選考会にお越し頂きありがとうございます。本日のスケジュールですが、当社人事部マネージャーの石動よりご挨拶と、当社の会社説明や採用選考の流れなどについて説明差し上げます。その後いったん休憩を挟みまして、1次面接を実施いたします。」
司会役の社員が選考会に関する説明を終えると、会議室に石動が入場してきた。会社説明会で見た時と同じように、凛とした姿で壇上に登った。
「皆さんこんにちは。当社の人事部でマネージャーをしております石動です。先般の合同説明会でお会いした方もこの会場にいらっしゃるかもしれませんが、初めてお会いした方も多く参加されているようですので、改めて当社が何をやっている会社なのかをまずご案内したいと思います。こちらのプロジェクターをご覧下さい」
キャリアソウルのプレゼン資料がプロジェクターに映し出され、石動は話を始める。合同説明会で一度話していたからだろうか、今回は自社の壮大なビジョンに関する話は抑えめで、創業からの歴史や直近の事業展開、ビジネスモデルの特徴といった内容で話が進む。30分ほどで話し終わり、これから10分の休憩後に一次面接を実施すると案内がなされた。
「この後の面接では、私たち面接官も皆様に対して色々と質問を致しますが、皆様にとっても大事な就職先を決めるための大切な時間であると考えています。ですからどうか、当社について聞きたいこと、知りたいことがありましたらどんどん質問してください。私たちも話しやすい雰囲気の場を作ります。そして・・・」
石動は少し力を入れて、こう話す。
「本音で話し合いましょう。当社と皆様、お互いに理解が正しく進むように」
その時の参加者の反応は様々だった。目線を下を落とす者や、片手で胸元をさする者、唇を噛み締める者。多くの学生に緊張や不安といった感情が湧き出る中、呉羽は軽く深呼吸をする。そして会議室を後にする石動に目をやった時、ちょうど右隣に座っていた女性の様子も伺えた。彼女は微動だにせず、目を閉じていた。
休憩終了後、先ほど話をしていた司会者が面接の説明を行う。一次面接は、数名一組で行うとのことだった。
「それでは、一組目の面接に参加頂く方々をお知らせします。呼ばれた方は返事をお願いします。呉羽隆二さん」
「はい」
おお、トップバッターだ、と少し緊張を覚えつつ、呉羽は返事をして立ち上がる。
「速星玲奈さん」
「はい」
続けて立ち上がったのは右隣の女性だった。彼女はいかにも自然体だ。強い目力で、視線は会議室の奥に向けていた。
(つづく)
「皆様、本日は数ある会社の中から、当社『キャリアソウル』の一次選考会にお越し頂きありがとうございます。本日のスケジュールですが、当社人事部マネージャーの石動よりご挨拶と、当社の会社説明や採用選考の流れなどについて説明差し上げます。その後いったん休憩を挟みまして、1次面接を実施いたします。」
司会役の社員が選考会に関する説明を終えると、会議室に石動が入場してきた。会社説明会で見た時と同じように、凛とした姿で壇上に登った。
「皆さんこんにちは。当社の人事部でマネージャーをしております石動です。先般の合同説明会でお会いした方もこの会場にいらっしゃるかもしれませんが、初めてお会いした方も多く参加されているようですので、改めて当社が何をやっている会社なのかをまずご案内したいと思います。こちらのプロジェクターをご覧下さい」
キャリアソウルのプレゼン資料がプロジェクターに映し出され、石動は話を始める。合同説明会で一度話していたからだろうか、今回は自社の壮大なビジョンに関する話は抑えめで、創業からの歴史や直近の事業展開、ビジネスモデルの特徴といった内容で話が進む。30分ほどで話し終わり、これから10分の休憩後に一次面接を実施すると案内がなされた。
「この後の面接では、私たち面接官も皆様に対して色々と質問を致しますが、皆様にとっても大事な就職先を決めるための大切な時間であると考えています。ですからどうか、当社について聞きたいこと、知りたいことがありましたらどんどん質問してください。私たちも話しやすい雰囲気の場を作ります。そして・・・」
石動は少し力を入れて、こう話す。
「本音で話し合いましょう。当社と皆様、お互いに理解が正しく進むように」
その時の参加者の反応は様々だった。目線を下を落とす者や、片手で胸元をさする者、唇を噛み締める者。多くの学生に緊張や不安といった感情が湧き出る中、呉羽は軽く深呼吸をする。そして会議室を後にする石動に目をやった時、ちょうど右隣に座っていた女性の様子も伺えた。彼女は微動だにせず、目を閉じていた。
休憩終了後、先ほど話をしていた司会者が面接の説明を行う。一次面接は、数名一組で行うとのことだった。
「それでは、一組目の面接に参加頂く方々をお知らせします。呼ばれた方は返事をお願いします。呉羽隆二さん」
「はい」
おお、トップバッターだ、と少し緊張を覚えつつ、呉羽は返事をして立ち上がる。
「速星玲奈さん」
「はい」
続けて立ち上がったのは右隣の女性だった。彼女はいかにも自然体だ。強い目力で、視線は会議室の奥に向けていた。
(つづく)