第11話 決断
文字数 1,913文字
「こんにちは。昨日は面接にお越し頂きありがとうございました。さて、昨日呉羽さんにメールをお送りしたのですが、ご確認頂けましたか」
「はい。本当にありがとうございます」
「メールの内容通り、私たちは是非呉羽さんが当社に入社されることを願っております。面接では、ちょっと刺激の強いお話もしてしまったかもしれませんが、率直な私たちの印象をお伝えしたうえで、呉羽さんにはそれ以上の良いところがあると考えたので採用を決めました。あとは、呉羽さんのお気持ち次第ですが、いかがでしょうか」
「・・・内定を頂いたことは素直に嬉しいです。あと、私自身のことを本音で聞かせて頂いたこともです。ただ、石動様の言葉がずっと胸に突き刺さっています。あんな感じで、はっきり言われたこともこれまでなかったので。面接が終わってから今日まで、バスケ部のことだけではなく過去に挑戦してきた出来事を思い出していたのです。『あのときは全力でやれたのか』『あの結果は頑張り次第でもっと良い結果になったのではないか』みたいな想像も共に浮かんできて。そしたら、今まで何かをやりきれたことって、何一つなかったんじゃないかと思ったんです。
そんな気持ちで、壮大なビジョンを掲げて、社員の皆さんが高みを目指して邁進している御社の環境で・・・やっていけるのかな、という気持ちもあります」
「なるほど。不安なのですね。率直な気持ちを吐露して頂いて安心しました。でしたら時間をかけてもらって構いませんので、じっくり考えて悩んで下さい。これから他の企業の選考もあるでしょうから、それらとも比較して頂いても結構です。さすがに3か月後以上後のお返事だと、当社も入社準備を進める時期になってしまうので厳しいですが、これから2か月以内でお返事を頂ければと思います」
「・・・そんなにお時間を頂いてよろしいのでしょうか」
「ええ。呉羽さんが社会人としてのスタートを切る、大事な会社です。すぐに決めるより、むしろ十分時間をかけて考え抜いて欲しいくらいです。遠慮なさらず」
「ありがとうございます。しっかり考えてお返事したいと思います」
「最後に。どんな決断をするにも『自分で決める』という意識は強く持ってくださいね。周りの方に相談して、意思決定の参考にするのは大事です。ですが、人生においても大きな選択の一つです。悩んだ末に、ご自身なりの根拠をもって自ら決断することを心掛けてください。そうすれば、その決断が最終的にどんな結果になったとしても、納得は生まれ、後悔は薄まります。」
「はい」
「そして今回の呉羽さんの選択も、ご自身の課題に向き合うことですよね」
「・・・、とおっしゃいますと」
「納得できる入社先を決める。それができるためには、徹底的に考えぬくこと。つまり『やりきること』です。できそうですか?」
「・・・できます。やってみせます」
「ええ、考え抜いて下さい。あと、もし呉羽さんが入社されましたら、あなたが将来の願いを叶えるためのチャレンジを、私が支えましょう。これは約束できます。あとは、呉羽さん次第です。またお返事をお待ちしております。失礼いたします。」
その後、呉羽は他のいくつかの会社の選考にも参加していった。同時に、キャリアソウル含め応募した会社同士で、自分にとって一番働きたい会社はどこだろうかと日々考えた。業界の違い、会社規模の違い、やれそうな仕事の違い、そういった色々な観点で比較した。ところがどんな比較の仕方でも、最初にキャリアソウルのことを考えてしまう。石動が語っていた会社の理念やビジョン、自分に対する見方や期待を念頭に、他の会社はどうだったかと。
他の会社の面接を受けるたび、会社説明会や面接で聞いた石動の力強い言葉が脳裏に浮かぶ。そして、キャリアソウルに、石動という人物に惹かれていることを自覚した。
キャリアソウルの二次面接から1か月が過ぎた頃、呉羽はキャリアソウルへの入社を決断した。自分が思い浮かべられる会社間の比較の観点はすべて見たつもりだが、どうしても一番意識してしまうのは、結局ふりだしに戻るようだが「仕事のやり抜き甲斐の強さ」だった。石動が語る壮大なビジョンに向けて取り組んでいる会社に身を置いて、自分の役割を成し遂げたときにはビジネスマンとしての強い自信や誇りを得られるだろうと考えた。
呉羽は石動に電話を架ける。
「石動様、御社にお世話になります。中途半端な自分から脱却し、何事もやり切れる強い自分を目指して頑張ります。よろしくお願いします」
「ありがとうございます。一緒に働けるのを心待ちにしております」
そして翌年4月、呉羽はキャリアソウルの入社式を迎える。
(次回、新入社員編へ)
「はい。本当にありがとうございます」
「メールの内容通り、私たちは是非呉羽さんが当社に入社されることを願っております。面接では、ちょっと刺激の強いお話もしてしまったかもしれませんが、率直な私たちの印象をお伝えしたうえで、呉羽さんにはそれ以上の良いところがあると考えたので採用を決めました。あとは、呉羽さんのお気持ち次第ですが、いかがでしょうか」
「・・・内定を頂いたことは素直に嬉しいです。あと、私自身のことを本音で聞かせて頂いたこともです。ただ、石動様の言葉がずっと胸に突き刺さっています。あんな感じで、はっきり言われたこともこれまでなかったので。面接が終わってから今日まで、バスケ部のことだけではなく過去に挑戦してきた出来事を思い出していたのです。『あのときは全力でやれたのか』『あの結果は頑張り次第でもっと良い結果になったのではないか』みたいな想像も共に浮かんできて。そしたら、今まで何かをやりきれたことって、何一つなかったんじゃないかと思ったんです。
そんな気持ちで、壮大なビジョンを掲げて、社員の皆さんが高みを目指して邁進している御社の環境で・・・やっていけるのかな、という気持ちもあります」
「なるほど。不安なのですね。率直な気持ちを吐露して頂いて安心しました。でしたら時間をかけてもらって構いませんので、じっくり考えて悩んで下さい。これから他の企業の選考もあるでしょうから、それらとも比較して頂いても結構です。さすがに3か月後以上後のお返事だと、当社も入社準備を進める時期になってしまうので厳しいですが、これから2か月以内でお返事を頂ければと思います」
「・・・そんなにお時間を頂いてよろしいのでしょうか」
「ええ。呉羽さんが社会人としてのスタートを切る、大事な会社です。すぐに決めるより、むしろ十分時間をかけて考え抜いて欲しいくらいです。遠慮なさらず」
「ありがとうございます。しっかり考えてお返事したいと思います」
「最後に。どんな決断をするにも『自分で決める』という意識は強く持ってくださいね。周りの方に相談して、意思決定の参考にするのは大事です。ですが、人生においても大きな選択の一つです。悩んだ末に、ご自身なりの根拠をもって自ら決断することを心掛けてください。そうすれば、その決断が最終的にどんな結果になったとしても、納得は生まれ、後悔は薄まります。」
「はい」
「そして今回の呉羽さんの選択も、ご自身の課題に向き合うことですよね」
「・・・、とおっしゃいますと」
「納得できる入社先を決める。それができるためには、徹底的に考えぬくこと。つまり『やりきること』です。できそうですか?」
「・・・できます。やってみせます」
「ええ、考え抜いて下さい。あと、もし呉羽さんが入社されましたら、あなたが将来の願いを叶えるためのチャレンジを、私が支えましょう。これは約束できます。あとは、呉羽さん次第です。またお返事をお待ちしております。失礼いたします。」
その後、呉羽は他のいくつかの会社の選考にも参加していった。同時に、キャリアソウル含め応募した会社同士で、自分にとって一番働きたい会社はどこだろうかと日々考えた。業界の違い、会社規模の違い、やれそうな仕事の違い、そういった色々な観点で比較した。ところがどんな比較の仕方でも、最初にキャリアソウルのことを考えてしまう。石動が語っていた会社の理念やビジョン、自分に対する見方や期待を念頭に、他の会社はどうだったかと。
他の会社の面接を受けるたび、会社説明会や面接で聞いた石動の力強い言葉が脳裏に浮かぶ。そして、キャリアソウルに、石動という人物に惹かれていることを自覚した。
キャリアソウルの二次面接から1か月が過ぎた頃、呉羽はキャリアソウルへの入社を決断した。自分が思い浮かべられる会社間の比較の観点はすべて見たつもりだが、どうしても一番意識してしまうのは、結局ふりだしに戻るようだが「仕事のやり抜き甲斐の強さ」だった。石動が語る壮大なビジョンに向けて取り組んでいる会社に身を置いて、自分の役割を成し遂げたときにはビジネスマンとしての強い自信や誇りを得られるだろうと考えた。
呉羽は石動に電話を架ける。
「石動様、御社にお世話になります。中途半端な自分から脱却し、何事もやり切れる強い自分を目指して頑張ります。よろしくお願いします」
「ありがとうございます。一緒に働けるのを心待ちにしております」
そして翌年4月、呉羽はキャリアソウルの入社式を迎える。
(次回、新入社員編へ)