第23話 二次選考に向けて
文字数 1,676文字
「上市さんとお会いしまして、とても真面目で愚直な方だと感じました。良いモノづくりをするための考えもしっかりしてて、ウチの生産技術に活かせそうな経験もお持ちのようで、部長の福光とも肌が合ったようです。不良を出さないことの厳しさ、コストダウンの難しさ、そして後進のスタッフを育てる大変さ。上市さんも福光もこんな話で盛り上がってました」
「良い雰囲気で面接が進んだようで良かったです。ご本人とも先ほど電話で話しましたが、面接を終えてより御社の仕事に興味が増したようです。是非次の選考に進みたいと仰っていました」
「そりゃあ良かった。次は社長が面接するけどずいぶん忙しいから、基本的には社長が空いている日時で面接日を調整して、またご足労をかけますがウチに来て頂けると有難いねえ」
「ご本人も、そのあたりは理解されているかと思います。早速ご本人の都合を聞いてみたいと思います」
「お願いします。また連絡をお待ちしてます」
瞬光工業も上市も、お互い良い印象でいるようだ。呉羽は一次選考の結果が出てから、このまま順調に選考が進んで欲しいという想いが強まっていく。
呉羽は石動に改めて状況を報告する。石動は言う。
「まずは良い流れになっているようだな。さて、ここから両者の間に入る立場の君の仕事は、採用、入社に至らない可能性を考え、それを小さくしていくことだ。最終的によい結果に結びつかないとしたら、シンプルにどういうケースがある?」
「企業側・・・瞬光工業が不採用とする場合でしょうか」
「そうだな。まあ、次が社長が面接されるそうだから、社長が合格を出せば採用確定だろう。そのためには、次回も上市様に面接の準備をしっかりして頂くことだ。特に、社長のような経営層の人と話すような面接は、会社の理念やビジョンといったものへの理解度や、その人が働きながらどうなっていきたいのか、といった将来像が問われやすい。会社というのは概ね、経営層が事業の指針を作り、それに沿って動いてくれる人物を増やしたいと考えるからだ」
「その辺は、上市様のお人柄を見る限り、次回の面接でもしっかりお話し頂けると思います」
「そして、もう一つのケースは分かるか」
「・・・上市様が選考や、内定を辞退する可能性でしょうか。しかし現状、上市様は瞬光工業の仕事にとても良い印象を持っていると思います」
「求職者は仕事内容だけで就職先を決めるわけではない。わかりやすいところだと給料のような待遇面、役職の高さ、会社の安定性を気にする人もいる。求職者の入社の『決めどころ』は様々だ。上市様の場合は何だと思う?」
「現職での異動辞令が転職のきっかけであることを考えると、ものづくりに直接関われる仕事であるかどうか、あるいは自分の経験がどれだけ活かせるかでしょうか」
「そう思うなら、もし面接で自分の将来像を聞かれたときに、率直な想いをしっかりと答えられるよう準備をお願いしてみよう。もし聞かれなかったとしても、面接の最後で上市様からの逆質問ができるタイミングがあるだろうから、そこでご自身が望む将来の働き方ができそうかを聞くことを勧めてもいい。そこでご本人の望む返答が貰えたら、瞬光工業への想いが強化されるだろう」
「かしこまりました。事前にご本人に話をしてみます」
その晩、呉羽は上市と電話で話し、一次面接が合格となったことを伝えた。上市はああ、ありがとうございます、と礼を述べたが、電話越しに聞こえる声色からは安堵した様子が伺えた。そして二次面接の日程調整については、基本的に社長の都合に合わせられるとのことだった。もともと呉羽は上市の現職の立場を考えると、簡単に休暇を取ったり仕事を抜けるのは容易くないと考えていたが、実際は選考に参加するためのフットワークはとても軽く、今回の転職活動には熱心に取り組んでいるのだと実感した。
翌日、呉羽は小杉から送られた二次面接の候補日が記されたメールを確認し、上市にメールで転送をした。その晩には、上市からその日程に参加できるとのこと返信が届いた。
二次面接日は翌週の月曜日、午後1時で確定した。
(つづく)
「良い雰囲気で面接が進んだようで良かったです。ご本人とも先ほど電話で話しましたが、面接を終えてより御社の仕事に興味が増したようです。是非次の選考に進みたいと仰っていました」
「そりゃあ良かった。次は社長が面接するけどずいぶん忙しいから、基本的には社長が空いている日時で面接日を調整して、またご足労をかけますがウチに来て頂けると有難いねえ」
「ご本人も、そのあたりは理解されているかと思います。早速ご本人の都合を聞いてみたいと思います」
「お願いします。また連絡をお待ちしてます」
瞬光工業も上市も、お互い良い印象でいるようだ。呉羽は一次選考の結果が出てから、このまま順調に選考が進んで欲しいという想いが強まっていく。
呉羽は石動に改めて状況を報告する。石動は言う。
「まずは良い流れになっているようだな。さて、ここから両者の間に入る立場の君の仕事は、採用、入社に至らない可能性を考え、それを小さくしていくことだ。最終的によい結果に結びつかないとしたら、シンプルにどういうケースがある?」
「企業側・・・瞬光工業が不採用とする場合でしょうか」
「そうだな。まあ、次が社長が面接されるそうだから、社長が合格を出せば採用確定だろう。そのためには、次回も上市様に面接の準備をしっかりして頂くことだ。特に、社長のような経営層の人と話すような面接は、会社の理念やビジョンといったものへの理解度や、その人が働きながらどうなっていきたいのか、といった将来像が問われやすい。会社というのは概ね、経営層が事業の指針を作り、それに沿って動いてくれる人物を増やしたいと考えるからだ」
「その辺は、上市様のお人柄を見る限り、次回の面接でもしっかりお話し頂けると思います」
「そして、もう一つのケースは分かるか」
「・・・上市様が選考や、内定を辞退する可能性でしょうか。しかし現状、上市様は瞬光工業の仕事にとても良い印象を持っていると思います」
「求職者は仕事内容だけで就職先を決めるわけではない。わかりやすいところだと給料のような待遇面、役職の高さ、会社の安定性を気にする人もいる。求職者の入社の『決めどころ』は様々だ。上市様の場合は何だと思う?」
「現職での異動辞令が転職のきっかけであることを考えると、ものづくりに直接関われる仕事であるかどうか、あるいは自分の経験がどれだけ活かせるかでしょうか」
「そう思うなら、もし面接で自分の将来像を聞かれたときに、率直な想いをしっかりと答えられるよう準備をお願いしてみよう。もし聞かれなかったとしても、面接の最後で上市様からの逆質問ができるタイミングがあるだろうから、そこでご自身が望む将来の働き方ができそうかを聞くことを勧めてもいい。そこでご本人の望む返答が貰えたら、瞬光工業への想いが強化されるだろう」
「かしこまりました。事前にご本人に話をしてみます」
その晩、呉羽は上市と電話で話し、一次面接が合格となったことを伝えた。上市はああ、ありがとうございます、と礼を述べたが、電話越しに聞こえる声色からは安堵した様子が伺えた。そして二次面接の日程調整については、基本的に社長の都合に合わせられるとのことだった。もともと呉羽は上市の現職の立場を考えると、簡単に休暇を取ったり仕事を抜けるのは容易くないと考えていたが、実際は選考に参加するためのフットワークはとても軽く、今回の転職活動には熱心に取り組んでいるのだと実感した。
翌日、呉羽は小杉から送られた二次面接の候補日が記されたメールを確認し、上市にメールで転送をした。その晩には、上市からその日程に参加できるとのこと返信が届いた。
二次面接日は翌週の月曜日、午後1時で確定した。
(つづく)