廃屋の集会に参加したこと~⑥
文字数 1,191文字
今回のテーマに沿って、各自がそれぞれに考えて持ち寄ったらしい。サンプルの言葉から想像するに、なんだか怖いもの見たさのレベルではある。
「では、我が会期待のホープ、吉田君から」と西川代表が指名する。
吉田君は、大きく文字が書かれたスケッチブックを見せながら、ボソボソと読み上げて行く。
「遺恨 」「怨恨 」「悔恨 」「私恨 」「痛恨 」「事実無根 」「多情多恨 」
まるで呪いの呪文のような、お笑いのネタというそもそもの目的が全く見えない、単なる言葉の羅列である。当然、オチなんかもない。先ほどのサンプルだと、最後に西川代表が何かオチをつける流れだろうか。僕ならどんな風に――と思って注目していると
「いいね。最初にしてはとても良い出来。その調子です」と西川代表は満足げである。
「真堂さん、どう思われます?」と西川代表がいきなりこちらに話を振ってきた。僕は思わず「いや、西川さん、吉田君に
すかさず、奈緒さんが短く拍手。ややしばらくして木島副代表も「へぇ、うまいな」と拍手。カジ谷君まで「あ、ぞっこん、か」と頷く。
え、しまった。まずいなぁ。そんなつもりは全くなかった。しかも「うまい」とは。いきなり指名されて、つい口走ってしまったのである。やはり毒されているのか。
――というか、今のは予期せずハイトーンの通る声だったような気がする。
「では、私は『さい』で」と、木島副代表が口を開く。「実力者」と紹介された木島副代表の番である。
「学園祭 」「うるさい」「青二才 」「泥臭 い」「はんかくさい」――
さすがにちょっとは高度な感じに言葉を絡めてはいるが
「鉄拳制裁 」「一夫多妻 」「一切合切 」「玉石同砕 」「有智高才 」「詠雪之才 」
なんだか四字熟語の世界である。
「面白くないね。ごめんな
僕は思わず「拍手喝采 !」と叫んだ。
言葉の切れが良く、妙に響く。一瞬間があって、静かに「おぉ~」と感嘆の声が上がる。その反応、僕は冷や汗が止まらない。
そこで西川代表が「木島はさすがに博学多才 だなぁ、僕なんか浅学菲才 で――」と言った。こちらは練りに練った返しなのだが、すでにタイミングを逸している。しまった。またやってしまった――じんわりと後悔が湧いてくる。
すると、気をよくしたのか木島副代表が「では、もう一つ」と言って、立ち上がった。
「では、我が会期待のホープ、吉田君から」と西川代表が指名する。
吉田君は、大きく文字が書かれたスケッチブックを見せながら、ボソボソと読み上げて行く。
「
まるで呪いの呪文のような、お笑いのネタというそもそもの目的が全く見えない、単なる言葉の羅列である。当然、オチなんかもない。先ほどのサンプルだと、最後に西川代表が何かオチをつける流れだろうか。僕ならどんな風に――と思って注目していると
「いいね。最初にしてはとても良い出来。その調子です」と西川代表は満足げである。
「真堂さん、どう思われます?」と西川代表がいきなりこちらに話を振ってきた。僕は思わず「いや、西川さん、吉田君に
ぞっこん
ですね?」と答えていた。すかさず、奈緒さんが短く拍手。ややしばらくして木島副代表も「へぇ、うまいな」と拍手。カジ谷君まで「あ、ぞっこん、か」と頷く。
え、しまった。まずいなぁ。そんなつもりは全くなかった。しかも「うまい」とは。いきなり指名されて、つい口走ってしまったのである。やはり毒されているのか。
――というか、今のは予期せずハイトーンの通る声だったような気がする。
「では、私は『さい』で」と、木島副代表が口を開く。「実力者」と紹介された木島副代表の番である。
「
さすがにちょっとは高度な感じに言葉を絡めてはいるが
「
なんだか四字熟語の世界である。
「面白くないね。ごめんな
さい
」と言って、木島副代表は額を抑えるポーズを取る。僕は思わず「
言葉の切れが良く、妙に響く。一瞬間があって、静かに「おぉ~」と感嘆の声が上がる。その反応、僕は冷や汗が止まらない。
そこで西川代表が「木島はさすがに
すると、気をよくしたのか木島副代表が「では、もう一つ」と言って、立ち上がった。