存在してはいけない封印のページのこと~⑧

文字数 750文字

 明るくなった部屋を見渡すと、前回は人が居て判り辛かったが、所狭しと雑多な品であふれているような印象である。これでもきちんと整理整頓されているとのことであるが。
 そして、その中で特に目についたのが、本棚の前に積んであった三冊の本であった。
 講談社版ハードカバーの江戸川乱歩全集1と2、それに、加納一朗の「タイムマシン殺人事件」こちらは文庫本である。
「これは昔、兄の部屋にあった本ですね」
「じゃあ、あからさまに、これが――そうなのかい?」
 一番上の江戸川乱歩全集1にはパンフレットが挟んである。
「これは、兄のバイト先の子供向け英会話教室のパンフレットだと思います」
 見ると、付箋が貼ってあるページがあった。
 「盗難」という短編の本文内と、こちらも短編「白昼夢」のイラスト。214ページ目と224ページ目だ。江戸川乱歩全集2の方は141ページの「覆面の舞踏者」の本文内と、154ページ「闇に蠢く」の冒頭部分である。
 今度は、変質者ではなく、こういうおどろおどろしい路線なのか?
「うーん。指示書、ですからもっと具体的な、日にちとか場所とか」
 では、こっちは何の意味だろう? 「タイムマシン殺人事件」の20ページ。特に象徴的なシーンではない。
 すると、パンフレットが挟んであったページを見ていた奈緒さんが「あっ」と声を上げた。
「『算盤が恋を語る話』、そういうことですか。それしかない」
「え、何かわかったの?」
「真堂さん、ちょっと、付箋の貼ってあるページ番号を読み上げてくれませんか」
 奈緒さんは、メモを取り、何やら、表らしき線と数字やらアルファベットをマス目に書き込んでいたが
「わかりましたよ。やっぱり兄は兄ですね」
「?」
 僕には何のことやら、全くわからないのである。
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