袋小路の先には木洩れ日が続いていること~⑥

文字数 851文字

 それから間もなく、紗枝さんが予言した「 たぶんまだ終わっていない」の意味が判明した。なんと、無笑会の本部が杉浦荘に移転して来たのである。
 最後の住人「四天王」が住む――一部から「立て籠っている」とも言われている――杉浦荘は、僕の住む101号室の周囲、隣102号室と、二階の201号室、202号室が丸ごと空いていたのだが、その102号室と202号室の、縦一列二部屋が新拠点となったのだ。
 もう新規の入居者の募集は行っていないはずの杉浦荘前に、ある朝、2tトラックが横付けされるや、見覚えのある連中がやってきて――挨拶、と称して今度は「わかさいも」を置いて行こうとした西川代表を捕まえて、何事か! と事情を聞いたところ、どうやら魔境探検部が帰ってきたらしいのである。
 魔境探検部が命がけで持ち帰ったという「秘宝」の保管場所が見つからず、やむなく無笑会に立ち退きの要請が来た、というのが事の発端であった。どれだけ巨大な物体なのか? 急な要請で、OBの「黒幕」の伝手も最大限に活用し、とりあえずの仮住まいとして白羽の矢が立ったのが、この杉浦荘。西川代表が、意図せず一度「下見」で好印象? を得ていたことも大きい、とのことであった。それは、大いなるとばっちりだ。
 僕は寝耳に水である。朝から隣室でギュイギュイ、トンテンカンと盛大に何かが始まったと思ったら、ドスドスと2tトラック一台分の荷物が運び込まれ――夕方には、作業が完了したらしい。恐る恐る覗いてみると、102号室には「笑門」の木札と、大きな真新しい「無笑者の会」の看板が掲げられている。こんなに大々的に、秘密結社じゃなかったのか?
 そこに、桑原も興味津々にやってきた「いったい、何が起きたんだ?」「さあ。異星人の襲来じゃないか」と、僕はとぼける。すると、気配を感じたか、102号室の扉が開いて、奈緒さんが顔を出したのだ。桑原の眉毛が上下に動いたのを、僕は見逃さない!
「ようこそ、新たな無笑会へ! 新代表のカジ谷です。よろしくお願いします」
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